【暴論】うつ病で働けないなら家事ぐらいやれよ!/『マンガでわかるうつ病のリアル⑩』
公開日:2019/9/23
重度のうつ病に5年以上苦しむも「メンヘラマッスル作家」として奇跡の復活を遂げた錦山まるが、あなたの知らないうつ病のリアルを教えます!
うつ病で家事なんて無理ゲー!
家事には判断力が必要だということ、わかっているのか?
うつ病の人にとって家事はとてもハードルが高いもの。そもそも一言で『家事』といっても、内容は様々です。
お料理は冷蔵庫の在庫を見てボリュームや栄養バランスを考え、調理工程や調理時間を考えながら1日数回やる。お掃除は汚れ具合を確認し、どこまでの範囲をどういう順番できれいにするかを計算し、汚れによって道具や洗剤を使い分けて体を動かしていく。“名も無き家事”として、トイレットペーパーなどの日用品の在庫を管理したり、ハンドソープやシャンプーの中身を入れ換えたりする作業もある…。
ほんの一部を上げただけでも家事にはこれだけの“やること”があります。1人暮らしであれば誰にも手伝ってもらえず、家族がいれば自分のペースでは出来なくなる。実は家事にはかなりの思考力や判断力や体力が必要なのです。
周りに迷惑をかけているんだから、せめて家事をしろ…だと?
そう聞くと「身の周りのことぐらいちゃんとしないと」「みんな当たり前にやってる」などと思うかもしれません。何なら、うつ病でご家族に支えられている人に対しては「迷惑かけているんだから家事くらいやれば? 少しでもご家族の負担を減らしてあげれば?」とさえ思うかもしれません。
確かに正論に聞こえなくもない気がします。ですが、うつ病になると症状で思考力も判断力も落ちる上に、体は“咳だけ無くしたインフルエンザ”というような状態になってしまいます(第3回や第6回を参照)。しかも2、3日休めば治るような病気でもありません。
たとえ普段は平気で家事をテキパキこなせる人であっても、そんな体調不良のオンパレードでは、家事の難易度はイージーからエクストラハードに切り替わるくらい急に大変になってしまうのです。
誰だって体調が悪い時は、頭を使えなくなるだろ?
「そうかなぁ…」と思う人は外食でメニューを選んだときのことを思い出してみてください。普段なら「前に来たときにコレを食べたし今日はコレ」とか「コレおいしそうだけど最近食べ過ぎだからこっちにしよう」などと、ゆっくり冷静にメニューを考えて選べますね。
では、仕事や勉強で疲れて頭がフワフワしているときやとりあえず座って休みたいくらい体がヘロヘロなときに、普段と同じようにメニューを考えて選べたでしょうか? とても無理だったと思います。「あー、俺も同じので」「いいや、いつものアレで」などという風に、ザックリとした選び方で早く済ませた経験は誰にでもあるでしょう。
たまの1回のメニュー選びでさえ、体調によって難易度はこんなにも変わってしまいます。
うつ病患者が引け目を感じていないとでも思っているのか?
そう考えると、“頭はフワフワ体はヘロヘロがデフォルト”といううつ病の人には、上記のように“実は思考力も判断力も体力も使う”家事が無理ゲーと化すのも、理屈としてお分かりいただけるのではないかと思います。
うつ病の人だって好きでぐちゃぐちゃの部屋を放置したり、食事がテキトーになっているわけじゃありません。家族の負担を減らせないことで苦しくないわけがありません。「ご飯くらいちゃんとしなよ」「身の周りのことぐらい自分でやらなきゃ」「家事くらい手伝ったら?」…などと言ってしまう前に、思い出していただけたらなぁと思います。
錦山まる=2009年にプロ漫画家デビュー。月刊誌で連載を持ち単行本を出すも2013年に重度のうつ病と診断され、5年近く自宅療養の日々を送る。病気が回復するにつれ、同じようにうつ病に苦しむ方を1人でも楽にしたいと著書出版やSNSによる啓蒙活動に取り組む。著書に『「うつ」は甘え?ググれカス。』『きっと元気になれるから』他
Twitter:@nishikiyamamaru
錦山まる公認bot:@marurunzmemo