「伸びる新人は、業務について勝手に自分でOKを出さない」『伸びる新人は「これ」をやらない!』④

ビジネス

公開日:2019/9/20

 近年のマネジメント論の主流を、真っ向否定するスーパードライなマネジメント手法「識学」に則った新入社員のための仕事術本です。

『伸びる新人は「これ」をやらない!』(冨樫篤史:著、安藤広大:監修/すばる舎)

\よくある誤解/
「私って、自分で納得できないと先に進めないタイプじゃないですか? 時間はかかるけど、そのほうがいいものができると思うんですよね」
「昔から『君のいうとおりにやると間違いがない』とよくいわれたんですよ。だから、自分なりによかれと思うスタイルで、どんどん仕事を片づけていこうと思います」

■物事は他者評価で進行する

 たとえば4人の同僚が集まって、今日、飲み会に行く店を決めようというとき、店側の自己評価を基に、どの店に行くかを選ぶでしょうか? そんなことはあり得ず、たとえば4人の同僚がこれまでに行った店のなかから、それぞれの店を評価した上で、どの店が一番いいかを選択するはずです。

 店側から見ると、これは4人の同僚の「他者評価」によって選ばれたということです。

 評価には、自己評価と他者評価の2つが存在します。ところが、この2つの評価は一致するとは限りません。むしろ、一致しないケースのほうが多いです。そして、一致しない場合は、他者評価が基準になって、物事(この場合はお店の選択)が進行していきます。

 ラーメン店の店主が「うちのスープは最高においしい!」という自己評価をしていても、お客さまが「おいしくない」という他者評価を下したら、本当に「おいしい」かどうかは、お客さまの「おいしくない」という他者評価が基準となります。

 また、ミュージシャンが「われわれの音楽に時代がついてきていない」と自己評価しても、その事実がどの程度正しいかは聴衆という他者の評価に委ねられることになります。

 つまり、「自己評価では対価を獲得できない」のです。

 評価とは、「評して価値をつける」ということ。その評価する機能は自己でもつことはできません。これが、「評価」についての事実の仕組みです。

 この仕組みを理解すれば、自己評価が他者評価と常に一致すると考えること、さらに、自己評価のほうを優先するということは、非常に危険な考え方であると理解できるでしょう。

■自己評価と自己分析の違い

 ちなみに、「自己評価」と「自己分析」は異なります。

 自己分析とは、他者からの評価をみずから分析し、課題を設定し、次の行動につなげるためのものです。一方、自己評価とは、自分自身の評価を自分で確定させることです。

 自己を分析する、すなわち自己はどのように他者から評価されているのかを分析することは、非常に重要です。ビジネスで対価を得るためには、他者評価と自己分析の間にあるギャップを埋めていかなければなりません。しかし、そのときにも、評価はあくまでも他者から下されるもの、という理解が必要です。

 皆さんの会社の評価制度に「自己評価」の欄がある場合にも、その欄についての認識を誤ってはいけません。その欄は、「上司との評価のギャップを認識するためだけにある」と理解して、記入するようにしましょう。

 上司の評価と自己分析とにズレが生じているとき、正しい認識のしかたは「自分の認識が甘かった」と思うことです。逆に「上司の評価が間違っている」と考えることは、してはいけないことなのだと理解してください。

■自己評価を推奨する風潮は世の中のワナ?

「自分らしく」「多様性」「オンリーワン」などと、自己評価が成立し、自己評価で対価を得られるかのような論調が世の中には多くあります。これらが「他者の評価を気にせずに生きていこう」という価値観を生んでいる感すらあります。

 しかし、他者の評価を気にせずに生きていける、ましてや自己評価で対価を得られるといったことはあり得ません。人は、常に他者から評価を受けて生きているからです。特に社会人になれば、なおさらです。皆さんは上司や会社、お客さまなど、他者からの評価のなかで生きています。

 自己評価を優位にしたがる意識の裏側には、他者評価にさらされる「恐怖」があります。他者から評価されることが怖いために、自己評価の世界に自身の意識を集中させ、自己防衛しようとしているわけです。

 しかし、先ほども述べたように、物事は他者評価によって進行するのが厳然とした「事実の仕組み」です。皆さんが伸びる新人になるには、「他者評価を受け入れ、自己成長につなげる」という意識が必要不可欠なのです。

■求められている成果に向かわなければ、リターンは得られない

 他者評価を気にせずに生きていると、結局のところ成長の機会も失うことになります。

 人の成長は、他者評価と他者から求められる水準の差分(ギャップ・ズレ・乖離)を認識して、はじめて実現します。他者の評価を受け、そのギャップを正しく認識できなければ、正しい成長ができないのです。

 また、ここには”落とし穴”もあります。自分なりに判断したギャップ、つまり「自分の不足」を、自分なりの方法で埋めにいってしまうことです。

 この”自分なり”という思考や行動も、自己評価の強い意識によって生まれています。

 確かにこのような対応法でも一定の成長はしますが、それが他者の、特に上司の求める成長の方向性と合致していなくては、余計な時間を、余計な能力を身につけるのに使ってしまうことになりかねません。

「他者から求められている成果」に近づいていく成長でなくては、評価と連動しなくなってしまいます。ですから、自分の不足を埋めようとする際にも、必要以上に「自分らしさ」を求めるのではなく、他者、特に上司に求められている方向に、能力を伸ばすよう意識することを忘れないでください。

この対応が正しい
 つい自分で自分を評価してしまいがちですが、「自分なりにがんばった」という自己評価は考慮されないんですね︒上司のニーズを無視した「自分らしさ」が評価されることはなく、求められている方向に向かうことが正しい成長なのだ、と理解できました!

<第5回に続く>