「読破できない難解な本」が分かるようになる! したり顔で語りたい人、勉強し直したい人も必読
公開日:2019/9/21
教科書で書名だけは見覚えがあったり、自己啓発書などで引用されて、多く目にする機会のある「古典名著」。
たとえば、プラトンの『ソクラテスの弁明』やジェイムズの『プラグマティズム』、ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』など、「読んでみたらおもしろいかも」、もしくは「読んだことあるって人に言えたらカッコイイかも」…なんて気持ちで原典にあたってみたものの、見事に挫折したという経験がある方はいないだろうか。やはり、古典名著は難しいのだ。
『読破できない難解な本がわかる本』(富増章成/ダイヤモンド社)は、古典名著の概要を分かりやすく解説してくれるので理解しやすく、原典を読む「きっかけ」となる心強い1冊。古今東西、哲学から心理学、経済学まで、著者が選りすぐった60冊の名著を、それぞれ4ページにまとめてイラストとともに分かりやすく紹介する。
もちろん、そのボリュームなので原典の情報量を全て網羅しているわけではない。だが、そのエッセンスを感じ取ることができるような内容なので、本書をきっかけにして、気になる古典名著を見つけたら、まずは新書などの関連する解説書を読むのもいいだろう。そこからさらにステップアップして専門的な概説書へ、そして最終的に原典にチャレンジする――本書はその「はじめの一歩」となる1冊なのだ。
■哲学の名言をきちんと説明できるようになる!
本書の内容を、具体的にご紹介しよう。例えばデカルトの『方法序説』についてのページ。
「我思う、ゆえに我あり」という有名なフレーズがあるが、この意味をなんとなく知っていても、しっかり人に説明できる人は少ないはず。
本書によると、デカルトは「方法的懐疑」という思考法をもって、絶対確実な真理を発見したという。
「方法的懐疑」とは、「あらゆることを極限まで疑って、それでも疑うことのできないものが残ったならば、それを真理として受け入れる」という方法論のこと。
もしかしたら錯覚かもしれない自分の感覚を疑い、目の前の物体の存在をも疑い、2+3=5といった数学的真理も疑っていく。そうして疑わしいものをすべて虚偽として退けていっても、ただひとつ、疑えないことがあるという。
それが「疑う自分自身の存在」である。
“天も地も色も形も、自分の体も、悪霊が罠をかけた幻影にほかならないとしても、このように疑っている私は存在します。だから「私は考える、ゆえに私は存在する」ということを、もっとも確実な第一の原理として受け取ることができるとデカルトは結論したのです”
いかがだろう。これが分かれば、「『私は考える、ゆえに私は存在する』ってどういう意味?」と誰かに聞かれても、まるで『方法序説』を読んだかのように、したり顔で説明できやしないだろうか?(笑)
本書では他にもたとえば、教科書でよく目にするトマス・ホッブズの『リヴァイアサン』も紹介されている。「万人の万人に対する闘争」の指す意味や、書名の意味などを理解できる内容なので、試験勉強にも役立つかもしれない。
さらに本書には、それぞれの名著を読むことを通じて「人生で役に立つこと」が数行でまとめられている。例えばフロイトの『精神分析入門』なら、
“意識と無意識の科学を理解し、心の葛藤の実像をつかむことが必要だ。その上で、自分が自分の心の主人であることを自覚し、主体的に無意識をコントロールすることでプラス思考を身につけていこう”
とある。この名著のエッセンスや効能のまとめ方は、忙しい社会人にとって非常にありがたい。
著者は、「本は人類が積み上げてきた叡智のアーカイブ」だと語る。
その中でも、長年読み続けられてきた名著と呼ばれる書物は、長い歴史の中で多くの人を魅了し「求められてきた」もの。そんな名著のエッセンスを60冊分も詰め込んだ本書もまた、名著の1冊ではないだろうか。
文=雨野裾