「クヨクヨ」は、どこからくるのか/『気にしすぎる自分がラクになる本』②
公開日:2019/9/25
ちょっとしたことでクヨクヨしてしまう…。人から言われた一言を気にしすぎてしまう…。「小さなことを気にしすぎてしまい、生きづらさを感じる人」が、ラクに生きるにはどうすればいいのか――。「気にしすぎる自分」とうまくつきあう方法を、多方面から心の問題に取り組む精神科医が具体的に伝えます。
気にしすぎてクヨクヨは、自分の中から生まれる
「気にしすぎてクヨクヨしてしまう」のは、いうまでもなく、自分の心の動きです。
そのため、そうなってしまう原因自体も、実は自分の中にあるということがほとんどです。
こういったお話をすると、クヨクヨしてしまうのは、だれかと喧嘩したり、仕事や家事を失敗してしまったりといった、自分以外の外の世界に原因があるんだよと、おっしゃる方がいますが、それは少し違います。
気にしすぎてクヨクヨ思い悩む「きっかけ」と、「原因」は違うのです。これらを混同してしまっている人がよくいるので、ここで説明しておきましょう。
「気にしすぎ」「クヨクヨ」のきっかけは、日常の中で起こる悲しい出来事や、仕事における自分のミスなど、起きた本人にとって不利だったり、マイナスに感じるような出来事だったりします。悲しい出来事は、たしかに一時的に心につらい気持ちを呼び起こします。ただ、これは気にしすぎやクヨクヨを抱えこんでしまう大本の原因とは異なります。
たとえば、同じような失敗をしたとしても、いつまでもクヨクヨ悩んでしまう人がいるいっぽうで、さして悩むことなく、すぐに改善策を考えるなど「次のステップ」に進むことができる人がいませんか?
この違いはなぜ起こるのでしょう。
気にしすぎたり、クヨクヨ悩むことがやめられない人は、多くの場合、起きた出来事を過度にマイナスな出来事と決めつけてしまう「思考のクセ」を持っていて、物事を悪い方向に考えることが多いのです。
つまり、気にしすぎてクヨクヨと悩みがちな人は、物事の受けとめ方が「マイナス」になりやすいといえます。単純化していえば、マイナス思考に陥りやすい状態になっているということです。
そのため、起きた出来事に対して大きく振りまわされてしまい、マイナスの方向に考えを引きずられることが多くなってしまうのです。
同様のことはストレスに関してもいえます。ストレスの強弱も各人の受けとめ方によって異なりますね。同じことが起きても、それが大きなストレスになる人もいれば、ストレスなどまったく感じない人もいます。子どもの世界でも、少々からかわれた程度では、いじめなどと感じない子がいるいっぽうで、ひどくいじめられたと感じてしまう子もいる。それと同じですね。
気にしすぎたり、クヨクヨ悩みやすい人は、物事をみるとき、考えるときに思考のクセともいうべき特有な思考パターンを使っていることが多々あります。
クヨクヨグセに陥りやすい思考パターン、うつうつと悩んでしまいがちな思考のクセが自分の心に深くしみついてしまっているからこそ、ささいなことを気にする自分からなかなか抜け出すことができないのです。
もちろん、思考のクセなど関係なく、あなたを思い切りクヨクヨさせるような絶対的に悲しい出来事が突然起きてしまうこともあるでしょう。
悲しみの大小にかかわらず、クヨクヨしてしまうのはあなた自身の責任だけでは、もちろんありません。あなたを悲しませたり、落ちこませたりするような悲しい出来事が起きさえしなければ、あなたがクヨクヨしたり、気にしすぎたりしてつらい思いをすることは、そもそもなかったはずですから。
ただ、その悲しい気持ちを長引かせるか否か、もしくはそれを悲しいことと認めるか否かは、間違いなく自分の心の動きでもあるのです。
あなたをクヨクヨや気にしすぎに引っぱりこんでいる、あなた自身の思考のクセに気づくことが、気にしすぎでクヨクヨしやすい自分のことをよく知る、第一歩になるかもしれません。
十勝むつみのクリニック院長。北海道大学医学部卒業。HSC/HSP、発達障害、発達性トラウマ、愛着障害などの診断治療に専念し、脳と心と体と魂を統合的に診る医療を目指している