大学なのにキャンパスがなく、講義もテストもない!? アップル・Amazonも絶賛する難関校の思考習慣
公開日:2019/9/25
初代iPhoneが発売されたのは2007年6月。それから12年経った今では、スマートフォン(スマホ)は我々にとって欠かせない存在だ。パソコン並みのスペックを手のひらサイズで実現し、電話だけでなくカメラや音楽プレーヤー、ゲーム、電子決済などの機能をもつスマホが現代人の必須アイテムになるなど、ほとんどの人が予想できなかっただろう。
これからも、私たちが想像しないような技術革新が短いスパンで起こる可能性は高い。人工知能(AI)に仕事を取られ、廃業となる職業が出るという予測も、近年よく聞く話だ。そんな“変化の時代”を生き抜くには、覚えるだけの知識ではなく「実践的な知恵」が必要となる。
この実践的な知恵を提供するために設立されたのがミネルバ大学だ。『次世代トップエリートを生み出す 最難関校ミネルバ大学式思考習慣』(山本秀樹/日本能率協会マネジメントセンター)では、ミネルバ大学がどのような指導を行い、どういった思考習慣を身につけさせているのかをミネルバ大学日本連絡事務所の山本秀樹元代表が紹介している。
2014年に設立されたミネルバ大学は一風変わったシステムが特徴。まず、特定のキャンパスを持たず、7つの国際都市にそれぞれ4カ月以上滞在しながら学生生活を送る。また、通常の大学では講義で教授の話を聞き、テストで定着度のチェックを図るが、ミネルバ大学では講義もテストも存在せず、少人数のディスカッションを行うという。
どれも今までの大学にはないユニークなシステムだが、そのシステムは結果につながっているのだろうか。設立間もない大学ではあるものの、500校以上の大学で10年以上実施されている思考力・問題解決力・表現力を評価する「CLA+」というテストで、問題解決力が全米の上位1%に入っている。わずかな期間で成果を挙げた同大は一気に注目を集め、入学希望者は2万人を超え、アップルやアマゾン、ウーバー・テクノロジーズといった世界を牽引する企業からの評価も高い。
さまざまな環境・場面で活躍するための実践的な知恵は、入学と同時に1年かけて修得。その後、それぞれ専門課程・研究課程に進む段階においても、実践的な知恵が活用されているか評価されるという徹底ぶりだ。
実践的な知恵は「情報の検証」「認識の差を埋める」「判断の優先順位」「問題分析」「問題解決」「情報発信」「統率・協調」などに分かれ、本書に詳細が述べられている。特に「情報の検証」は、玉石混淆するインターネット社会において、ますます欠かすことができない力となるので、一読することで考え方の再発見・再構築に役立つはずだ。
教育の現場では「魚を与えるのではなく釣り方を教えよ」という言葉が使われる。ミネルバ大学の教育は、さらに「釣り竿の作り方まで教え、天候や場所といった環境に応じてカスタマイズできる」レベルを求めているように感じた。この教育は未来を担う若者だけでなく、すでに社会に出ている我々にとっても必要なものであることは間違いない。「もうワンランク上の思考を身につけたい」「もっと活躍できる人間になりたい」「何か大きな成功を掴みたい」――そんな気持ちを抱えるアナタに役立つ1冊となるはずだ。
文=冴島友貴