あなたは何に疲れている? 現代人が知っておきたい自分の心の休め方

暮らし

公開日:2019/9/26

『疲れたら動け!』(小林弘幸/クロスメディア・パブリッシング)

「疲れたら、動け」とは逆説的なタイトルではないでしょうか。なぜ疲れているときに休むのではなく、動くのか。それを解説したのは『疲れたら動け!』(小林弘幸/クロスメディア・パブリッシング)です。

「疲れているときこそ、ごろごろしていてはいけない」のは、それが日本人の疲労パターンに合っているからと著者はいいます。日本人に多い疲労パターンは、精神的な疲れのことで人間関係や仕事のプレッシャー、責任感などが原因だそうですが、あなたもそうではないでしょうか?

 これは、生真面目な気質の日本人ゆえの疲労パターンなのだそうです。

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 興味深いと感じたのは「木曜がもっとも疲れている」という話。金曜になると特に対策をしなくても自律神経の数値が回復するそうです。「明日は休みだ」と思うだけで自律神経の働きはよくなるのです。つまり、私たち日本人の多くが感じている疲れとは、肉体的な疲労ではなく、自律神経の乱れからくる疲労感であるということです。

 疲れの原因となっている自律神経の乱れは、あなた自身の気持ちの変化や、ちょっとした運動、取り巻く環境の変化によって整えることができるのですが、「どのようにして自律神経の乱れを整えるか」ということにスポットを当てたのが本書のスタンスです。

 自律神経にとって最大の敵は「ストレス」です。特に、我慢を強いられるような悪いストレスは、私たちが想像している以上に健康を損ないます。

 そのようなストレスを感じると体は緊張状態になります。心拍数や血圧、血糖値などが上昇。その結果、血液の通り道である血管が傷つき、心疾患や脳疾患の原因になってしまうことが分かってきました。

 そうはいっても、誰もがみんなそうした環境を抜け出すことができるわけではありません。そこで提唱されているのが「動け!」ということなのです。

 厚生労働省が行った調査によると、日本人の8割が慢性的な運動不足。特に運動不足は30~40代の働き盛りに多く見られます。20代の頃までは何もしなくても筋力があり、自律神経のバランスもよいので悪い疲れを強く感じることはありません。しかし、30代以降も運動不足の状態が続くと徐々に自律神経を整える働きが低下します。すると血流が悪くなり、結果として「なんだかいつも疲れている」という状態になっていくのです。

 なぜ自律神経が乱れていると疲れを感じるかというと、心は疲れているのに、運動していないと肉体的にはさほど疲れていないため、心身のアンバランスが生じてしまうからです。つまり、30代以降の年代が「疲れ」にうまく対処していくためには、体を動かして疲労度を調節することが必要不可欠であるこということです。

 本書の前半はなぜ疲れたら動くことが大切なのかにフォーカスし、後半では日常生活で気軽に取り入れられる「動き」を解説しています。その中で、多くのビジネスパーソンに役立つ方法をひとつ紹介します。

 それは「1週間限定で生活のリズムを変える」というもの。もし今、あなたが「疲れ」を感じているなら、たとえば1時間早く寝て、1時間早く起きる生活をしてみてはいかがでしょうか。時間の使い方を変えることでストレスの感じ方は変わるそうです。ずっと続けようと思うと大変ですが、まずは1週間試してみてその変化を感じてみることが大切なのです。

 本書は健康法に関する本かと思いきや、ライフハック的な要素が多分に含まれていました。どんなに寝ても疲れがとれない、マッサージをしてもすぐにダルくなる、日曜の夜は憂鬱だ。そんなあなたは一読をおすすめします。

文=いづつえり