30代・40代必読!? 終身雇用が限界の時代にインプットすべき最強のキャリア資本術
公開日:2019/10/1
数カ月前「老後2000万円」の問題が世間を騒がせました。これまでもすでに年金制度が限界を迎えていることはさまざまな場面で指摘されてきましたが、その事実を政府自身が認めたことに大きな衝撃が走ったのです。大企業も副業解禁を打ち出し、終身雇用を守っていくのは難しいとの発言も注目されました。
「もう国や会社には頼れない。自分でなんとかしなければ。でもどうやって?」そんな人はぜひ『プロティアン 70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本術』(田中研之輔/日経BP)を読んでみてください。
聞き慣れない言葉だと思いますが、プロティアンとはギリシャ神話に登場する神「プロテウス」に由来します。思いのままに姿を変えるプロテウスから転じたプロティアンには「変化し続ける」「変幻自在な」「一人数役を演じる」といった意味があります。
本書の目的は、次の2つに要約できます。1つは「いまのキャリアの状態を客観的に把握すること」、もう1つは「自分のやりがいや目的を達成したことで得る心理的な成功を得るために、キャリアの計画を立てられるようになること」です。
一般的に「キャリア=職業経験」ととらえられています。本書の定義では、キャリアとはライフイベントも含んだ時間的な経過のことで、個人の歴史性を含む広義の意味としてとらえられています。働き方改革で労働時間が短くなれば、仕事以外のことに費やす時間は増えていくでしょう。仕事とプライベートとを区別する考え方が時代遅れのものになりつつあるのです。
「それはわかる。けれども先行き不透明の世の中でキャリアを長期的、戦略的に計画するのはムダではないか」という考えもあるかもしれません。それに対して著者は「予想しない偶発的な事柄が発生したときに対応できるよう、計画は必要」と主張しています。
言われてみれば、その通りです。準備してもムダだからと何も準備しておかないのと、想定外のこともあるかもしれないができるだけのことはやっておこうと準備しておくのと、どちらに対応力があるでしょうか。
本書では、そのための方法がいくつかが挙げられていますが、ここでは印象に残った1つを紹介します。本の読み方に関する提案です。
あなたは本を読むときに何か意識していることはありますか? 最初から最後までじっくり読む人もいれば、興味のあるところだけを読む人もいると思います。
著者は、ビジネス書を読むときは、1冊を読むのに何時間までと制限を設けることが有効だといっています。さらに、本の内容と売れ行きから社会を洞察してみることもおすすめだとか。なぜその本が売れているのか、自分なりの仮説を立てて考えてみることはとてもよい頭の体操になるからです。
私たちが将来に不安を感じるのは、先行きが不透明だからだけではなく、具体的に何をどうしたらよいかわからないからです。優等生タイプほど「自分自身がどう思うのか」の問いかけができている人は少ないものです。何に対して違和感を覚えるのか、なぜ違和感を覚えるのか。不満からさぐってみることも必要だと著者はいいます。
「生きるように働く」プロティアンで重要なのは、変わりながらどのようなキャリアを形成するかという視点です。キャリアに向き合うことは、働き方や生き方を見つめることでもあるのです。人生100年時代、これからの人生を考えてみたい人におすすめの一冊です。
文=いづつえり