「長生きしていいことなんてあるの?」と思う人にこそ伝えたい、“迷わない”シンプルな人生の送り方
更新日:2019/10/9
仕事の人間関係、老後のお金問題…人生に不安を抱える人は多い。自分はほどほどに幸せに生きたいだけなのに、なぜ人生は不安や不満だらけなのか…?
『長生きにこだわらない』(文響社)の著者は、長きにわたって医療の第一線で活躍し、東京大学名誉教授の称号をもつ矢作直樹さん。リタイア後も著者活動などで人に頼られ、休日には登山を楽しむほど健やかな毎日を送っている。
そんな“人生の達人”とでも呼びたくなる著者は、毎日どんなことを頼りに、何を目指して生きているのだろう。生と死を見つめてきた中で見出したという「こだわりすぎない」生き方に注目したい。
肩書き=自分ではない。
本当の自分は、
自分が好きなことの中にある。(本書41ページ)
人は退屈な日々が続けば劇的な変化を求め、安定した時間が続くと日常の変化をおそれる、身勝手極まりない存在。特に30代半ばから40歳前後になると、“自分の人生の役割”について考える人が増えるという。
だが、どうやってそれを見つけたらいいのだろう。著者が語るには、本当の自分は「好きなこと」の中にある。会社や肩書きではなく、趣味や交流に目を向けることが、自分らしさを知るヒントとなりそうだ。
「できないかも」は言い訳。
自分で作った制限は
自分で外せる。(本書52ページ)
自分には趣味が見つからないという人は、買い物や散歩など日常的なことでもいい。無理なく続けるうちに、気の合う話し相手ができ、新たな自分の人生が切り開かれていくことがあるという。
また、「自分にはできないかも…」と最初から諦めている人は、うまくできなかった時のことをおそれて言い訳をしているだけ。できるようになろうとする過程が、最大の学びであり、得るもの。「自分で作った制限は自分で外せる」と著者が勇気づけてくれる。
相手からの感謝を求めない。
「自分がやりたいからやる」、
それでいい。(本書49ページ)
やってみたいことはあるけど、誰の役にも立てなかったら意味がない(しかも恥ずかしいかも…)と考える人もいるかもしれない。そんな人はとても真面目だが、そう臆する必要は1%もないそう。著者が語るには、医療という専門的な世界でさえ、薬物投与や外科手術など、すべてが本当に人の役に立っているのかどうか証明できるわけではない。曖昧なこともまだ多いそうだ。
個人の役割とは、周りから与えられるものではなく、自分が求めて得るもの。だから、自分を役立たずだと卑下するくらいなら、誰かに迷惑をかけない限り、その役目に夢中になっていればいいのだ。やっていればきっと役に立つ。自分の内で役に立つとか立たないなど、逡巡することはどうでもよくなるはずだ。
「好きなこと」を見つけたら、それをこなす体を整えておくことも大切。本書には、著者が実践する食事や運動のアドバイスが写真つきで紹介されている。たとえば、朝食メニューにはナッツ類や栄養バランスの整ったジュースなどが並ぶ。
だが、ただ真似しようとするのは早いかもしれない。著者は「万人に有効な黄金ルールなどない」と強調する。大切なのは、「食べ過ぎない」「偏らない」の2点を守ることと。あくまでも食事を楽しむことが基本のスタンス。それを心得ておけば、著者のように、自分に合った食事を見つけられるはずだ。
ニュースでは話題になれど、老後のお金問題についても、考えること自体が取り越し苦労と著者は語る。10年後、20年後の物価は必ず変わるのだから、「いくら必要か」と悩んでもキリがない。著者自身が実践していることは、月ベース・年ベースで自分の収支を把握し、余計な散財の機会を減らす程度だという。
本書で語られるのは、節約術だけではない。たとえば、死後の「あの世の存在」にまつわる話も興味深いので、本書をぜひ開いてほしい。「あの世」とは死後の世界だが、決して他人事ではなく、考えようによって“今”健やかに生きられるのなら、積極的に考えるのもアリだと思えてくる。
否定せず、依存せず。良いと感じるものを模索する。この姿勢です。(本書155ページ)
老後云々より、今の目標が見つからない…そんな不安を抱える人にもおすすめしたい1冊だ。
文=吉田有希