久住昌之の新作グルメマンガが登場! 今度の主役は、親に隠れて料理を作る“子ども”

マンガ

公開日:2019/11/5

『こどものグルメ』(久住昌之:原作、安倍吉俊:作画)

 子どもの頃、親の目を盗んでは“つまみ食い”するのが好きだった。コタツに潜り込んで煎餅をかじり、お風呂にアイスを持ち込んではコッソリ舐める。「バレないように」というヒヤヒヤ感も相まって、何十倍も美味しく感じられたものだ。一度、来客用の和菓子を盗み食いし、それがバレたときはこっぴどく叱られたのだが。

 そんな幼少期の記憶を呼び覚ますようなグルメマンガが登場した。Rentaコミックスで連載がスタートした、『こどものグルメ』(久住昌之:原作、安倍吉俊:作画)だ。

 原作を担当するのは、『孤独のグルメ』(扶桑社)や『花のズボラ飯』(秋田書店)などで知られる久住昌之。これまでに手掛けてきた作品を読めば言わずもがなだが、久住さんが生み出すグルメマンガはどれも一風変わったものばかり。『こどものグルメ』もそう。本作で描かれているのは、子どもが親に隠れてなにかを食すことの「楽しさ」なのだ。

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 主人公は小学4年生の女の子・蓬野杏(よもぎの・あん)。ちょっとマイペースであっけらかんとした印象の彼女は、親の目をかいくぐっては、オリジナルレシピで料理を作ってみせる。たとえば、作りおきのポテトサラダをご飯にのせた「ポテサラ丼」や、できたてをしばらく外に放置して完成させる「デロンデロンのうどん」などなど……。いずれも子どもならではの遊び心が加わっており、まさに自由な発想の産物だ。

 そして、それを食べる杏の表情は、とても幸せそう。ひとりごとを呟きながらもパクっとかぶりつく姿を見ていると、思わずお腹が鳴ってしまう。

 本作に登場するメニューは、決して豪華なものではない。むしろ、小学生でも簡単に作れる、料理とは言えないようなものばかりだ。それなのに、なぜか無性に食べたくなってしまう。ポテサラ丼をかきこんで、伸び切ったうどんを啜ってみたくなる。

 その理由は、「親の目を盗んで食べる」という行為を、杏が追体験させてくれるからだ。思いついたレシピを試しては、親にバレないよう証拠隠滅を図る。時折、バレそうになるものの、知らんぷり。そんな彼女を見ていると、いつの間にか読者自身が幼少期にタイムスリップしたかのような錯覚を覚える。そして、ご飯を食べることのワクワク感を呼び起こしてくれるのだ。

 天真爛漫な杏は、この先どんな料理を生み出すのだろう。ぜひとも続きを追いかけたいところだが……、いつか杏が叱られてしまうのではないか。それだけが心配である。

文=五十嵐 大

・『こどものグルメ』/Rentaコミックス
・『孤独のグルメ』/扶桑社