町内でゾンビが大量発生したら!? 絶対に生き残りたい人のための「ゾンビのトリセツ」

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公開日:2019/10/10

『超進化版ゾンビのトリセツ』(リビングデッド調査班/インプレス)

 おぞましいけど、なぜかストーリーにはロマンすら感じさせられる“ゾンビ”。映画やゲームをはじめとして、ちょくちょく訪れる“ゾンビブーム”も不思議だが、いつの世も“生ける屍”である彼らの生態や歴史については、幾度となく考察が繰り返されてきた。

 とはいえ、私たちはどれほどゾンビについて知っているのだろう。そんな疑問に丁寧に答えてくれる1冊が、古今東西のゾンビにまつわる作品や彼らへの対策を徹底的に研究した『超進化版ゾンビのトリセツ』(リビングデッド調査班/インプレス)だ。

■ゾンビ映画の始祖、ジョージ・A・ロメロによる“走らない”ゾンビ

 本書によると、ゾンビのルーツは西インド諸島のハイチ共和国に根付いている民間信仰・ブードゥー教にある。諸説あるが、名前の由来とされているのは「死者の霊」を表したコンゴ語の「ンザンビ」だ。ボコールと呼ばれる邪術師

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が、毒性をもった“ゾンビ・パウダー”で仮死状態にした者を墓から掘り起こし、奴隷として働かせていたという。

 しかし、ある映画監督の作品をきっかけに、ゾンビは“人間の肉を食らう怪物”へと転化した。ゾンビ映画の始祖ともいわれる『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』『ゾンビ』のメガホンを取った、ジョージ・A・ロメロ作品だ。

 彼の描くゾンビは、“走らない”のが特徴である。しかし、腕力や握力は超強力。鍵付きの頑丈な扉を叩き壊したり、ときには人間の腹を素手で引き裂いたりと、老若男女の誰であれ、ひとたびゾンビ化するととんでもない馬鹿力を発揮する。

 それからもちろん彼らは人間の肉に食らいつくのだが、興味深いのはベジタリアン(菜食主義者)のゾンビもいるという事実だ。本書で紹介されているのは、先述の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』にある一コマ。劇中の登場人物である軍人のバドは、生前に「ベジタリアンだったから」という理由でゾンビ化しても人間を襲わない。このバドを果たしてゾンビと呼ぶべきか否か、議論の余地がありそうだ…。

■時代と共にゾンビも進化。知性を持ち人間に恋をするゾンビも…

 かつてはノロノロ歩くだけだったはずのゾンビが、時代を経て、いつからか疾走するまでになった。正確な転換期は不明ながら、1985年に公開された映画『バタリアン』には、新鮮な脳みそを追い求めて走るゾンビの姿が確認されている。

 以降、作品によっては駆け足で階段を上り下りするなど、俊敏なゾンビたちが頻繁に登場するようになった。加えて、彼らが怖いのはそもそも死体のため「疲れを知らない」というところ。人間と違い恐怖心もないため、少々の高さならば平気で飛び降りたりもするのだ。

 そして、体力が文字通り化け物級であるだけならまだしも、知性を併せ持ったゾンビも登場した。本書で紹介されている「HOUSE OF THE DEAD 〜SCARLET DAWN〜」には武器を手にして攻撃を仕掛けてくるゾンビも登場するが、作品によっては銃を扱うゾンビがいたりと、従来とは異なり人間さながらの動きをみせる者たちもいる。

 さらに、そこから派生したのが“恋するゾンビ”の存在だ。映画『ライフ・アフター・ベス』では、ゾンビ化した恋人とヒロインの恋模様が描かれているほか、別作品の『ウォーム・ボディーズ』は、人間の女性にひと目惚れしたゾンビの青年が抱える葛藤を映している。

 もし現実世界で、自分の恋人やパートナーがゾンビ化してしまったら…。あるいはその逆も含めて、相手を愛せるかどうかは人間にとって“究極の問い”かもしれない。

■ゾンビが街中に現れたら…迷わず“2階以上”の建物に逃げるべし!

 ゾンビの活動を考察する本書では、実際にゾンビに出くわした場合に私たちが選択するべき方法も紹介されている。

 もし街中にゾンビが現れたら、真っ先にやるべきは戸締まりだ。玄関や窓などとにかく人間が通れそうな場所はすべて施錠し、可能であれば雨戸も閉めておく。自分が屋外にいるなら、身を隠せそうな建物を急いで確認する必要もある。

 連絡手段の確保も肝心だ。自分ひとりしかいなければ家族や信頼できる友人の安否確認もかねて、連絡をとってみよう。これまでのゾンビ作品を分析すると、ゾンビを前にして一番危険なのは単身で行動をとることだ。ニュースやSNSをチェックして、ゾンビがどの地点から発生したのか、自分がいる地域は果たして安全なのかなど、迅速で確実な情報収集も求められる。

 しかし、人間を餌食にするゾンビは、次々と仲間を増やしていく。そこで肝心となるのが、自分の居場所で“籠城するべきか否か”という決断だ。本書がおススメするのは「2階建て以上」の建物。万が一、ゾンビに侵入されても上の階へ逃げられるという理由からだが、階数が多すぎるとやつらの侵入に気が付きづらく、建物からの脱出にも時間を要するのは注意してほしい。

 籠城の際には飲み水や食料の確保も大前提、ゾンビは音に敏感な性質もあるので静かに息を潜めるのも大切。複数で押し寄せることも少なくないため、バリケードを張るなどの対策も必要となる。

 この先いつ人間がゾンビ化するかは誰も分からない。荒唐無稽と笑い飛ばすのは自由だが、現在数少ない対策本としても、本書を1冊備えておきたいところだ。

文=カネコシュウヘイ