空腹でお腹が3回鳴るまで我慢するとがん予防になる? 有名医学博士が提案する食事でがんを予防する方法
公開日:2019/10/17
厚労省が発表した「平成29年人口動態統計」によると、日本人の死亡原因の第1位は「悪性新生物」。つまり「がん」だ。今や2人に1人が、がんにかかる時代。食生活をはじめとする生活習慣の変化や超高齢化などが原因で、多くの人がこの病気になり苦しんでいる。テレビなどに出演する医学博士・ドクター南雲こと、南雲吉則先生は執筆した書籍『新版 大切な人をがんから守るため今できること 命の食事』(南雲吉則/主婦の友社)にて、このように断言している。
がんは食事で予防する時代です!
本書は、普段の食事や生活習慣をよいものに変えることで、がんを予防しようと提案する1冊。そのアドバイスや料理レシピをご紹介するので、普段から健康を気にしている人はぜひ参考にしてほしい。
■がんの予防が期待できる「まるごと食」と「オメガ3オイル」
よくマスメディアで見かける「がん治療」の様子では、目の覚めるような最新医療を活用して劇的に患者を治していく。一方、がんの予防に劇的な方法はない。なぜなら私たちの体を作っているのは、食事や睡眠などの生活習慣であり、とても長い時間の積み重ねが、健康な人生を送れるかどうかを決定するからだ。
南雲先生が本書で提案するのは「命の食事」。がんを予防するための、実践的な食事の考え方だ。その1つが、魚を“頭から尻尾まで”丸ごと1匹食べたり、野菜や果物を皮ごと食べたりする「完全栄養食」。完全栄養とは、私たちの体を構成しているすべての栄養素を同じバランスで取ること。ところがこれはちょっと難しい。そこで南雲先生は、生物を丸ごと食べる「まるごと食」で完全栄養に近い効果が得られ、「抗酸化作用」や「創傷治癒作用」が期待できると考えている。
また植物油などに含まれる「オメガ3オイル」も積極的に摂取したい。「オメガ3オイル」とは「α―リノレン酸」のことであり、私たちの体内で「EPA」や「DHA」に変化することで、「抗炎症作用」や「脳細胞の活性化」が期待できる。がん予防はもちろん、子どもが食べれば学力アップ、シニアが食べれば「認知症予防」が期待できるわけだ。
「オメガ3オイル」は、魚の脂のほかに、えごま、チアシード、くるみなどの、種やナッツを食べることで摂取できる。また、えごま油、亜麻仁油、カメリナオイル、サチャインチオイルなどの植物油を料理にプラスするのもアリだ。
■空腹でお腹が3回鳴るまで我慢するとがん予防になる?
読者は空腹を我慢できるタイプだろうか? 南雲先生は「食事は腹六分目」をおすすめしており、空腹こそがんを予防する方法の1つと考えている。ポイントは、お腹が3回「グーッ」と鳴るのを待つこと。
1回目の「グーッ」のときには、若返りホルモンである「成長ホルモン」が分泌され、肌や粘膜を再生してくれる。2回目のときには、若返り遺伝子である「サーチュイン遺伝子」が活性化して、全身の傷ついた遺伝子を修復してくれる。3回目のときには、長寿ホルモンである「アディポネクチン」が脂肪細胞から分泌され、血管を若返らせて動脈硬化や脳卒中の予防が期待できる。がんを予防したいならば、これからはちょっとだけ空腹を我慢してみよう。
■がん予防レシピと有酸素運動
さらに本書では、南雲先生が提案する「命の食事」を実践できるレシピを公開している。その1つをご紹介しよう。
【完全栄養サラダ】
作り方は簡単だ。ほうれん草と豆苗を食べやすい大きさにちぎってボウルに入れる。さらに一口大に切ったアボカドもボウルに入れて、えごま油とバルサミコ酢または黒酢を加えて、よく混ぜたあと盛りつけ。そこにフライパンで炒ったさくらえびとしらす干し、そしてぷるぷるにふやかしたチアシードをかければ完成。
ポイントは、栄養豊富で丸ごと食べられるさくらえびとしらす干しを手軽に摂取できることだ。まさしく「完全栄養サラダ」。健康が気になるなら積極的に食べたい。
また南雲先生によると、がんは酸素が苦手だそうだ。活性酸素を無毒化する酵素がないため、酸素をたっぷり取りこまれると成長が遅くなるという。そこで頑張りたいのが軽い有酸素運動だ。本書では家で実践できる南雲先生考案のトレーニングを紹介している。
【グッドモーニング】
これは南雲先生が「中年期以降、ぜひやってほしい運動」とおすすめする背中と腰の筋肉を鍛える運動だ。背筋を伸ばしてまっすぐに立ち、背中を曲げず、ひざを軽く曲げながら5秒ほどかけて上体を前に倒す。これだけで背中と腰が鍛えられ、元気に歩ける体を維持できるという。
日本人の死亡原因第1位であり、2人に1人がかかるといわれるがん。一度かかってしまうと命が脅かされるだけでなく、手術や通院などの負担ものしかかってくる。早期発見によって治療できる可能性がどれだけ高まろうと、まずはがんを予防する方法を実践し、健康であることをずっと維持したい。自分や大切な人の未来を守るために、ぜひ食事や生活習慣をもう一度見直す機会にしてほしい。
文=いのうえゆきひろ