“努力は才能に勝るのか?”をメントレ視点で描写!? 高校卓球マンガ『蛇道スナイパー』――元NGT48長谷川玲奈が主人公を演じる!
公開日:2019/10/19
「努力は才能に勝るのか?」。梶井祐の『蛇道スナイパー』(白泉社)は、誰もが一度は感じたことがあるであろうこの命題に、新しい視点を持ち込んだ高校卓球マンガだ。
幼いころから卓球一筋だが、強くも弱くもない“凡才”の糸魚川新太は、一般入試で卓球の強豪高校へ進学。そこで出会ったのは、全身タトゥーの同級生(ダブり)・蛇口洋平だった。ボクシングの世界ユースチャンピオンという“天才”ながら、その道をあきらめてしまった蛇口だが、新太の“努力し続ける才能”に目を付け、彼を卓球の強者へと導いていく……。
凡人が天才を打ち破っていくというストーリー展開は、ひとつの定番ジャンルであり王道だといえる。しかし本作の読み味はその中でもかなり異色だ。まずチームメイトや仲間との友情や絆といったベタな描写は一切ないし、特訓によって飛躍的に能力や技術が向上するということもない。じゃあ頭脳を駆使して強者のスキをつくのかといえば、そうでもない。高校卓球を舞台としたスポーツマンガでありながら、(少なくとも現時点では)「青春・スポ根・戦略」の3大要素を捨てているのだ。
では何を主軸にしているのかといえば、“メントレ(メンタルトレーニング)”である。「それってスポ根じゃん?」と思うかもしれないが、そうではない。友情パワーや根性、気合といった前時代的なものではなく、スポーツ心理学などを駆使した「勝つためのメンタル作り」に近く、この独自の視点が異色の読み味に繋がっている。
たとえば、試合中に弱気になった新太に対し、蛇口は「僕は弱い 今日もどうせ負ける」と言うように煽る。すると新太は「僕は弱くない!! 今日僕が勝ちます!!」と言い返し、そして実際に勝ってしまうという具合だ。ここで勘違いしてはならないのが、“メンタルしだいで強者に勝てる”ということを言いたいのではない点。幼いころから不断の努力を続けてきた新太は、すでに強者と戦う資格を持っており、あとは結果を出すだけなのだ。
つまり本作で描こうとしているのは、“努力を結果に繋げるメソッド”だ。そしてそれは勉学やビジネス、人間関係にまで幅広く応用することができるもので、その意味で本作の読み味は、自己啓発本やビジネス書にも通じる部分がある。
もちろん、だからといって堅苦しく捉える必要はまったくない。蛇口のインパクト絶大なビジュアルとアウトローな言動から匂い立つダークヒーロー的な魅力はもちろん、「継続こそが才能だ」といった強くて熱いセリフの数々、新太をバカにする輩への復讐劇、カースト最下層からの成り上がりなど、少年マンガらしいキャッチーさは盛り込んでいて、エンタメとしてしっかりと面白い。連載が始まったばかりでまだ着地点は見えないものの、ふつうのスポーツマンガには満足できない人、ちょっと変化球のスポーツものが読みたいという人に、ぜひおすすめしたい。
文=岡本大介
元NGT48で声優の長谷川玲奈さんが主人公・糸魚川新太の卓球少年を演じる、1話試し読み動画も公開中! 主人公以外にも、主人公の母親や、脇役の女性など、1人3役の演じ分けにも挑戦している。
元NGT48の長谷川玲奈さんが主人公の声を演じる、試し読み動画公開中!