リーダーの孤独を解決する「ヨコの関係」の築き方
公開日:2019/10/21
上からは圧力を受け、下からは突かれる。中間管理職は孤独になりがちだ。しかし、支持されるリーダーもいる。うまくいくリーダーと、そうではないリーダーの違いは何なのか。すでに悩んでいるリーダーはそのヒミツをきっと知りたいだろうし、そのうちリーダーになる人も、知っておいて損はない。
リーダーの大きな役割は、チームのマネジメントだ。マネジメントの本は数多ある。しかし、それらの本をいくら読んでも成果に繋げられない人がいる。『チームを変える習慣力』(三浦将/クロスメディア・パブリッシング:発行、インプレス:発売)によると、多くの本はマネジメントの理論やテクニックといった“形”ばかりを紹介しているため、成果に繋げにくいのは当然だと述べる。本書によると、マネジメントで起こる問題のほとんどは人間関係の問題であり、ここの理解を置き去りにしてしまっては解決するはずがない。
これを解決するためのたった一つのことは、
「相手との位置関係を見直してみる」
根本は実にこれだけです。
通常、上司と部下の間では、上司が上で部下が下という「タテの関係」が結ばれる。しかし、近年、ハラスメントに対する目が厳しくなってきた。本書によると、そもそもマネジメントの原点は、植民地支配にある。植民地では、上下関係をはっきりさせて、上に従うマインドをはびこらせる「不安と恐怖のマネジメント」が生産性を高める。この「不安と恐怖のマネジメント」が、社会の流れでもう立ち行かなくなってきた、というのだ。
とはいっても、チームで生産性を高めるのが、マネジメントを担うリーダーの役目では? という声が上がりそうだ。チームマネジメントの成果は、「生産性」と「効果性」から成り立つといわれている。生産性は、売上げや利益、生産量やその質など。効果性は、そのチームの人的資源の状態や成長度で測られる。卵を生み出す鶏を心身とも健康な状態に管理し、いかに生産能力を成長させるか、というのもマネジメントなのだ。リーダーが目先の生産性ばかりを追い求め、チームを痩せ衰えさせては、マネジメントを果たしているとはいえない。
その論拠として、本書はグーグルが導入している「心理的安全性のあるマネジメント」に言及している。グーグルは、成果を挙げるチームの共通要因を調査した結果、「他者への心遣いや同情、配慮や共感」といった因子だと結論づけた。そして、これらをひとまとめにして「心理的安全性」と名づけた。
「心理的安全性」がある環境では、「関連のある考えや感情について、人々が気兼ねなく発言できる雰囲気」がある。逆にいえば、「心理的安全性」がない環境には「無知だと思われる不安」「無能だと思われる不安」「邪魔をしていると思われる不安」「ネガティブだと思われる不安」がはびこっており、チームメンバーは気兼ねなく発言できない。
ちなみに、一集団の中でのルールに過ぎない会社での「タテの関係」を、人間関係上の本当のルールのように勘違いする上司・部下が相当数いることが「不安と恐怖」を深化させるとともに「心理的安全性」を醸成する機会を奪い、リーダーの孤独に拍車をかけている。
では、孤独なリーダーにならないためには、どうすればよいのか。本書は「タテの関係」を「ヨコの関係」に置き換えればよい、と述べる。人と人は、本来は同等の立場。ポジションパワーではなく、人と人との関係性によるマネジメントに努めるのだ。
「ヨコの関係」にするためのひとつの重要な考え方は、「人を物ではなく人として見る」こと。人を人として見ると、フェアに向き合うことができるようになる。
もうひとつの重要な考え方は、傾聴の習慣を身につけること。本書によると、傾聴は誰もが知っている言葉でありながら、誰もが簡単にできることではない。人間はすぐに評価したり、判断したりしたくなる生き物だからだ。安易に判断せず、決め付けをせずに話をしっかりと聞くという意識が大切だ。
そして、急激な変化はリーダー自身だけでなく、チームにとっての失敗を招く。「タテの関係」から「ヨコの関係」への変革を無理なく進めるには、小さな変化を連続して起こしていき、習慣化していくとよい。
「ヨコの関係」を築くことは、決してなあなあな関係になることではない。むしろ、「タテの関係」に内在していた上下の依存関係を断ち切ることで、チーム内に自主自律的かつ責任ある雰囲気が生まれるという。
本書にあるマネジメントの土台をつくることができれば、リーダーから孤独が離れ、マネジメントが楽しく、やりがいのある仕事となりそうだ。
文=ルートつつみ