子どもの将来は、「親の自己肯定感」に左右される。子育て中の親の“あるべき姿”とは
公開日:2019/10/26
子どもにつらくあたってしまう。愛したいのに愛せない。父親、母親が、子どもを育てていく上で、自分の態度を責めたり、子どもたちに罪悪感を覚えたりする場面も多いことだろう。『子どもの将来は「親」の自己肯定感で決まる』(根本裕幸/実務教育出版)は、小説形式で子育てにおける「罪悪感」を手放すヒントを投げかけてくれる。
物語は、東京近郊の街にあるスナック「おかん」を舞台にはじまる。切り盛りするのはバリバリのダミ声関西弁が特徴のママ。よくお酒を切らすにもかかわらず、お客に買いに行かせたり、皿を洗わせたりするが、人生論やアドバイスは的確で、常連客には「占いよりためになる」と愛されている人気者だ。
そんなスナックをある夫婦が訪れる。大阪で事業に失敗し、この街に移り住んでサラリーマンをはじめた賢一と、彼の妻である多江。慣れない土地での生活と仕事、背負った借金、そして子育て。さまざまな問題を抱えたふたりは、それぞれの悩みをママに打ち明けていく。
ママが一貫して語るのは、自己肯定感の重要性、親の自己肯定感が子どもに与える影響だ。子どもは親が思う以上に親を見ているし、親のことが大好き。ところが、親が自分の価値を認められず、自己肯定感が低いままだと、子どもは無意識にそれを真似るようになってしまう。子どもの自己肯定感を高く育てたいと思ったら、親自身が自己肯定感を高く持っておく必要があるのだ。
賢一と多江は、ママから出された宿題に取り組んだり、夫婦で話をしたりして、それぞれの自己肯定感、つまり「今の自分を好きと思える感覚」を取り戻していく。
多くがママと多江、もしくは賢一の会話形式になっており、ママのダミ声と関西弁を想像して読むのが楽しい。ママの言葉は時に厳しく、子育てをしたことのある人の胸を突くことだろう。しかし、そこにはちゃんと愛があると分かるため、「あなたは頑張っている」「ちゃんと子どもを愛している」と肩をなでてもらっているような感覚を覚えるのだ。
本書では、子どもへの接し方や自己肯定感の高め方に関する具体的な「やり方」はあまり書かれていない。そのため、自己肯定感が何たるか、など小難しいことを考えずとも読み進められる内容となっている。
子育て真っ最中の父親、母親はもちろん、これから家庭を持つ人やかつて親の存在に苦しんだ人にもおすすめしたい一冊。自分がこれからどういう親になりたいのか、どうやって生きていきたいのか、考えるきっかけを与えてくれることだろう。
文=水本このむ