サーヴァント「鈴鹿御前」キャラ制作秘話も収録! 大人気「Fate」シリーズのコミカライズ著者・たけのこ星人に「Fate/EXTRA CCC FoxTail」の魅力を聞いた!

マンガ

公開日:2019/10/26

 アプリゲーム「Fate/Grand Order」で誰もが知る人気コンテンツとなった「Fate」シリーズ。コンシューマ用RPGである「Fate/EXTRA CCC」のスピンオフ漫画の最新8巻が発売された。第5のアルターエゴ・カズラドロップが登場し、いよいよ物語が新展開へと突入した「Fate/EXTRA CCC FoxTail」。今回は、その著者であるたけのこ星人を直撃。「FoxTail」とはどういう作品なのか、本作にかける熱い思いを改めて語ってもらった。

(本インタビューは「月刊コンプエース」2018年4月号のインタビューで本誌に載せ切れなかった部分を掲載、加筆したものです)

たけのこ星人
漫画家。 2013年より本作「Fate/EXTRA CCC FoxTail 」を手掛ける。「FGO」では本作のオリジナルサーヴァントである鈴鹿御前のキャラクター絵と設定を担当。また間桐桜好きでも有名。

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ヒロインはキャス狐!?

――〝キャス狐〟ことキャスターが主役の「Fate/EXTRA CCC FoxTail」は、どんな物語をめざして描いているのでしょうか。

たけのこ:大雑把に言うと、「FoxTail」はPSPで出たRPG「Fate/EXTRA」の続編「Fate/EXTRA CCC」のスピンオフ漫画です。「Fate/stay night」では、「Fate」ルートや「Unlimited Blade Works」ルート、「Heaven’s Feel」ルートと、内容がまったく異なる3つのルートがありますよね。それと同様に、「CCC」をひとつのルートと見立てて、それとはまったく違う別ルートとして描こうとしたのが「FoxTail」です。とあるキャラクターがとある選択肢を選んだことで、「CCC」ルートではなく「FoxTail」ルートへ移行した、というイメージですね。「FoxTail」は主人公である岸波くんとパートナーのキャス狐が主役の物語ですが、赤セイバー(ネロ)や無銘(エミヤ)、ギルガメッシュではない、この二人だからこその物語になればいいなぁと思いながら描いています。

 そこに加えて、この漫画ならではの見所といえば、「FGO」でも2017年実装された鈴鹿御前や、「CCC」が作られた際に設定だけ存在していた残り3体のアルターエゴ「キンププロテア」「ヴァイオレット」「カズラドロップ」が本作で初登場する所でしょうか。あと「EXTRA」や「CCC」を触っていない人でも楽しめる作品にする、単体の読み物としても成立するように……ということはいつも念頭に置いているつもりです。ただ自分でいうのもなんですが、新規の方にとって特に序盤は相当ややこしくて面倒な内容なので、申し訳ないなとずっと思っています! 申し訳ない! また元の作品を知っていると、その違いで味わい深く楽しめるように描いているつもりなので、原作ゲームを触ってもらってから読んでいただくのも大変ありがたいですし、一からプレイするには時間が足りない……という方には、是非コミカライズ版の「Fate/EXTRA」や「CCC」を読んで頂けると、ろび~なさん(※1)も僕もお互い嬉しいです。他にも今はシナリオ集(※2)も出てたりします。(※2)「Fate/EXTRA」を正規ルートとするなら、「CCC」は裏ルート、そして「FoxTail」は「CCC」のアナザールートと、それぞれ質の違った面白さを味わって頂けたら嬉しいです。

鈴鹿御前誕生秘話

――「FoxTail」には「CCC」に登場しないキャラクターが多数登場するのも大きな魅力ですよね。本作のオリジナルキャラクターである鈴鹿御前が誕生した経緯を教えてください。

たけのこ:「FoxTail」の企画時に、TYPE-MOONの武内崇さんから、本作のための新しいサーヴァント登場のご提案を受けたのが、そもそものきっかけでして、その後、知り合いと相談したり、いろいろな資料を読みながら、鈴鹿御前でいこうと決めました。あれこれ設定を考えて、再度TYPE-MOONさんに持ち込みましたところ、武内さんが「この子は女子高生にしよう!」と仰ったんです。正直なところ、僕が最初に作った設定の鈴鹿にはとんがった個性が無くて、伝説や神話の人物に独自の味付けをするという「Fate」のサーヴァント像には、あまりマッチしていないように感じていたんです。どうやってキャラを立たせようかと悩んでいたところだったので、このアイデアは、まさに天啓でした。

 デザインも武内さんに手掛けて頂いて、本当にありがたかったです! 鈴鹿御前というキャラは、武内さんの女子高生というアイデアを元にして自分がベースとなる設定を作りはしましたが、自分だけでは調べ切れなかった設定を調査してくれた作家の森瀬繚(※3)さんやTYPE-MOONならではの解釈を一緒に考えてくださった奈須きのこさんの力添えがあって始めて形に出来たものです。僕一人では今の形にするのは到底無理でしたね。

――「FGO」での鈴鹿の活躍についての印象はいかがでしょうか?

たけのこ:2018年のお正月に開催された「葛飾北斎体験イベント」では主人公のパートナー的な役割を担うなど、期間限定イベントではいくつか出番を頂いていて、嬉しい限りです。それに、戦闘時のアクションも、「FoxTail」での動きを細かく再現してくれていて、とても情熱を注いで作ってもらったのが伝わってきて本当に頭が下がる思いでした。コミックスの第2巻で、鈴鹿が宙に浮いた刀を足場にして方向転換するシーンがあるんですが、おそらくあのシーンをエクストラアタックに利用してくださったんだと思うんですよね。嬉しかったのでこちらも負けてられないと、鈴鹿が「FGO」に実装された直後に描いた「FoxTail」で、エクストラアタック発生時の「シャンシャン♪」という効果音を含めて逆輸入(※4)させてもらいました!

また、2017年開催された「CCC」コラボイベント「深海電脳楽土 SE.RA.PH」(※5)のTVCMは、鈴鹿がアニメでガウェインと戦っていて、テンションがあがりましたねー。ただ、あの時点で「FoxTail」でも二人の戦闘シーンを描こうと予定していたので、先を越されたと驚きました(笑)。ならばと、鈴鹿を動かしてくれた感謝の意も込めて、TVCMのアクションシーンを自分なりの解釈を加えて再現してみました。

 その部分を読まれる際にはCMと見比べていただけると、より楽しめるんじゃないかと思います。

迫力のバトルシーンの舞台裏

――鈴鹿VSガウェイン戦に限らず、「FoxTail」は迫力のあるバトルシーンも大きな魅力ですよね。

たけのこ:ありがとうございます。僕は少年漫画好きでアクションを描きたくて仕方なかったので、「FoxTail」の連載が決まった時は沢山アクションシーンが描けるぞと喜んだんです。いざバトルシーンを描こうとすると至らない所も多くて、当初は手探り状態でした。バトルシーンにどの程度の尺を割けばいいのか、割けるのか、ネームでずっと悩んでいまして……いや、ネームは今も悩んでいますけども!2巻の鈴鹿御前、メルトリリスとパッションリップの登場する回が戦闘シーンばかりになりそうで、自分としてはもう少しアクション部分を削った方がいいのかなあ……と悩んでいたんですが、担当編集の藤原さんが「1話がほぼ丸ごと戦闘シーンになるけど、やってみてもいいんじゃないですか?」と背中を押してくださったんですよね。あの言葉のおかげで、戦闘シーンをウキウキ描きやすくなった気がします。ちなみにメルトリリスとパッションリップの2人は「CCC」でたっぷり描写されていますし、「FoxTail」では敢えてあまり活躍させないのがFateらしい…別ルートとしての醍醐味を表現できるかなと。なので2人のシーンは、最初はもっとアッサリ終わらせるつもりだったんですが、いざ登場させたら描くのが楽しくて楽しくて。そんなワケで2巻にある彼女達のシーンは、実は予定を結構上回るページ数になっちゃってるんですよね(笑)。伝わらない気もしますが、アレは自分なりに二人がお気に入りになって、サービスしてしまった結果だったりします。

――キャス狐の戦闘シーンを描く際に、特に意識していることは?

たけのこ:「頭脳戦」というほどではないですが、最低限、作者である自分が納得出来る程度の「理屈」は用意したいなと……。キャス狐は基本的には頭脳派のキャラクターなので、今の所は勢いで勝敗が決まるようなものは避けて、戦いの中での駆け引きをしっかり描こうとがんばって描いています(笑)。

――キャス狐の頭脳戦でいうと、第4巻で描かれた鈴鹿との戦いは、見ごたえのある戦いでした。

たけのこ:スキル「才知の祝福」で賢くなった鈴鹿と、お互いに得意な間合いを取り合うバトルは、僕も描いていて楽しかったです。あれはバトルの終わる流れも好きですね。

――戦闘シーンを見ていると、相手の防御態勢「GUARD」を防御崩しの「BREAK」で突破したり、マスターがスキルでサーヴァントのサポートをするなど、原作ゲームのシステムが盛り込まれているのがわかります。演出の中でこういった要素を盛り込んだ狙いとは何でしょうか?

たけのこ:ゲーム中の戦闘で行われているシステム的な処理って、実際はどうなっているのか……という事を、僕なりの解釈を盛り込みながら視覚的に演出したかったんですよね。そうすることで、ゲームをプレイした方も「なるほど、ゲームでの戦闘ってこういうことだったのか」という再解釈になれば、ゲームにとっても「FoxTail」にとってもWin-Winな関係になれるのでは……というのは前の対談でもお話したんですが、もう一つ付け加えるなら「CCC」の別ルートとしての「FoxTail」が実際ゲームとして存在していたらと仮定して、そのゲームを出来うる限り漫画に落とし込みたいなー……と考えているので、ゲーム的表現が多くなっています。特に説明を入れてないですが、3回攻撃が連続ヒットした後、キャス狐が続けて「EXTRA TURN」のモーションで攻撃するみたいな描写とか。本来ゲームをコミカライズする場合とは真逆の工程で不都合も多いのですが、それを行う事で、よく解らない作家が描き始めた「FoxTail」というマンガが「CCC」と地続きの存在だとゲームを触ったユーザーに少しでも感じてもらえれば……というまぁ自分の中での趣味と挑戦みたいなものですね(笑)。

――「FoxTail」で描かれている戦闘シーンの中で、特にお気に入りのものは?

たけのこ:5巻「ガウェインVS.カルナ戦」ですね。あれは自分なりの理想の「サーヴァントの斬り合いアクション」を目指してみたんですがどうでしょうか……? やっぱり一度は「剣VS.槍」みたいな斬り合いの対決をやりたかったので、プロットを書いた時から早く描きたくて仕方なかったです。「CCC」でのカルナの槍の扱いはどうなっているのかなど、奈須さんにしつこく質問したりもしました。こればっかりは魔術と鏡で戦うキャス狐では描けないモノなので、新鮮で楽しかったです。楽しいので延々描き続けたかったんですが、でも主人公であるキャス狐と関係ないシーンだしこのままじゃ話進まないので、遠慮してこの程度に抑えました。遠慮してこの程度に抑えました。個人的にもガウェインとカルナが激突したらどうなるんだろうというのは気になっていましたし、「CCC」本編では描かれなかった対決なので、自分で描けてうれしかったです。

――第2巻では、メルトリリスとパッションリップを相手に共闘した2人が、今度はガチバトルですからね。非常に熱い戦いでした。では、本作のお気に入りキャラクターを挙げるとすると、誰になるでしょうか?

たけのこ:最近、大きな見せ場を描かせてもらったシンジは、個人的に気に入っていまして。僕は「CCC」のシンジが大好きなんです……嫌いな人はいないですよね!? あのかっこいいシンジを自分でも描きたいという気持ちが強くあったんですが、彼といえば滑稽で調子に乗る性格でもありますし、「FoxTail」でもっと駄目要素を推し出してもよかったかなぁと思ってまして。そんなとき「Last Encore」でゲスいシンジを見れて「これこれ!やっぱりシンジはこうでなくっちゃ!!」と嬉しくなりました(笑)。第1話で明るく朗らかな親友ポジションみたいな感じを匂わせてからのー……このこのー!最高ですよねー。「Fate/EXTRA Last Encore」でのシンジと、「FoxTail」のシンジ、その違いを見て頂くのも一興かなと思います。

漫画表現としてのFoxTail

「FoxTail」を描いていて楽しさを感じるのはどんな時でしょうか?

たけのこ:怒っている顔とか凄みのある表情を描くのって最高に楽しいです。以前成人向けマンガを描いている時は、そういった表情を描く機会も、その描写が成人向けマンガの良さに繋がる事もなかなか無いので縛りの少ない事が嬉しいのかなと思います。あまりやりすぎないようにと気を付けてはいるんですが、僕のテンションが上がりすぎて、書き込みすぎてしまうこともある気がします。

――普段はおちゃらけているキャス狐が、まれに恐い表情をのぞかせるのは、インパクトがありますね。

たけのこ:「FoxTail」はキャス狐がただ可愛いだけのマンガにはしたくなくて。キャス狐は良妻賢母な一面、隙あらば岸波くんを手込めにしようとする「肉食」な一面、「傾国の美女」として恐れられた一面など、さまざまな側面を持つキャラクターじゃないですか。そういう「裏の顔」も含めたキャス狐の魅力を、伝えていきたいです。

――最後にこちらを読まれたファンに一言お願いします。

たけのこ:ようやく物語は中盤戦を終えて、ここから終盤に向けて動き出していきます。当初思っていたよりもボリュームが大きく膨らみましたが、そのぶんより楽しめる内容になったんじゃないかと思います。また本作に出てくるキャラクターには、できるだけ全員に見せ場やスポットが当たるよう頑張っています。各単行本の表紙に描かれているキャラクターは、大体その巻で見せ場を用意していたりするので、表紙にお気に入りのキャラクターがいたら、一度手に取って頂けると嬉しいです!

 最新8巻も発売されクライマックスに向けて盛り上がる「FoxTail」。「坂神一人過去編」では、鈴鹿御前の対戦相手として「FGO」でもお馴染みのカリギュラや源頼光も登場し、目の離せない展開になっている。

 本作の試し読みは「COMIC WALKER」にて。

注釈
※1 ろび~な
「フェイト/エクストラ」(全6巻)「フェイト/エクストラCCC」のコミカライズを担当。「コンプティーク連載中の」「フェイト/エクストラCCC」最新第4巻が2月9日に発売された。

※2 シナリオ集
現在、TYPE-MOON BOOKSよりゲームのシナリオ集である「Fate/EXTRA MOON LOG:TYPEWRITER」(全2巻)、「Fate/EXTRA CCC VOID LOG:BLOOM ECHO」(全4巻)が刊行中。

※3 森瀬繚
ライター・作家・翻訳者。「Fate」関連の記事執筆や一部作品の歴史考証も行っている。最新著書「未知なるカダスを夢に求めて 新訳クトゥルー神話コレクション4」(星海社)が発売中。

※4 逆輸入
「FoxTail」6巻、Chapter37

※5 深海電脳楽土 SE.RA.PH
FGO内で2017年のゴールデンウィークに開催されたコラボイベント。ヤングエースUPにて西出ケンゴローによるコミカライズが連載中。現在コミックス第1巻が発売中。

フェイト/エクストラCCC FoxTail⑧
●発売中●620円+税●KADOKAWA
http://www.kadokawa.co.jp/
漫画:たけのこ星人 原作:TYPE-MOON/マーベラス

(C)TYPE-MOON / Marvelous.Inc