「にやける」と「にやにやする」は別の意味!? 5秒で分かる間違いだらけの「日本誤」
公開日:2019/10/27
来年の夏にはいよいよ東京でオリンピックが開かれる。日本はますます世界から注目を浴びることになるだろう。そんな時にこそ、改めて「日本語」を見つめ直してみてはどうだろうか。『5秒で見分ける! 日本語と日本誤』(吉川スミス/辰巳出版)は、そう訴えかける語彙力アップ本だ。
語彙に関する書籍はどれもかっちりとしたイメージが多いかもしれない。だが、本書のカバーは、笑みを浮かべながら鼻水とよだれを垂らしているおじさんのイラスト。結婚会見での言葉選びが話題となった、南海キャンディーズの山里亮太さんが感想を寄せている帯も読者の興味をそそる。
著者の吉川さんは放送作家。子ども向けバラエティ番組「おはスタ」や人気クイズ番組「タイムショック21」などの人気テレビ番組に携わってきた。常に視聴者のことを考えてきたプロが放つ言葉には、ここぞという時に着るスーツのような“フォーマルな言い回し”だけでなく、シャツやニットのように“普段使い”できる言い回しが多数掲載されている。
たとえば、「うろ覚え」「うる覚え」のように1文字だけで大違いな“日本誤”(どちらが正しいかわかるだろうか)。「官製はがき」のように、うっかり使い間違えている“日本誤”(郵便事業は民間企業へ変更された)、ひらがな表記やルビふりにしたい難しすぎる日本誤など、目からウロコの知識を通して、あなたは自分自身の“日本誤”にも気づけるはず。本書内に記されている豆知識や、ダジャレを交えた正しい用法の覚え方を読みながら、自分の日本語を磨いていきたい。
■「にやける」と「にやにやする」はまったく別の意味!
「彼氏からのLINEを見ると、にやけちゃう」――日常の中で「にやける」という言葉をこんな風に使っている方は多いだろう。だが、実は「にやける」と「にやにやする」は似て非なる言葉。
「にやける」は本来、男性がなよなよしている様を表す言葉。そのため、薄笑いを浮かべるという意味で使用したり、女性に対して使ったりするのは誤用なのだ。
また、「失笑」も間違った使われ方をされやすい言葉。笑いも出ないくらい呆れた時に「失笑してしまった」と言う方は多いが、本来の意味は「こらえきれずに吹き出して笑うこと」。間違った意味で広まってしまったのは「失笑を買う」との混同が原因なのだそう。吉川さんの指摘は、日本語の奥深さや成り立ちに気づくきっかけにもなるのだ。
■区切り方を間違えても日本語は「日本誤」に
正しい言葉づかいをしようとするとその意味に注目するが、「区切り方」を間違えても日本語は日本誤になってしまう。
たとえば、随筆『枕草子』を手がけた清少納言はどこで区切るのが正解だろう? ついつい「清少/納言」と区切って発音してしまいがちだが、正しくは「清/少納言」。清少納言という名前は、父である歌人・清原元輔の清原姓と役職名の「少納言」を組み合わせたペンネームなのだそう。そのため、姓と役職名の間で区切るのが正しいのだ。
また、外来語や海外都市名の区切り方も気をつけたい。アメリカ・カリフォルニア州の都市、サンフランシスコは「サンフラン/シスコ」と発音されやすいが、正しくは「サン/フランシスコ」。英語表記だと「San Francisco」だ。
本書には他にも間違えやすい都市名が多数掲載されているので、ぜひオリンピックで大勢の外国人が日本にやって来る前にチェックしてみよう。
メールやSNSの発達によって、人の言葉づかいや語彙力は人目にさらされることが多くなった。自分の使う言葉とどう向き合っていくのか一層問われる時代になるだろう。日本語は世界的に見ても難易度が高い言葉だが、とても美しい言葉。そんな誇り高き言葉を常用しているからこそ、私たち日本人は時代による言葉の変化も楽しみながら、“日本誤”を改めていきたい。
本書を活用すれば、あなたの“日本誤”も美しい日本語になるのだ。
文=古川諭香