他人事じゃない? 「知らないと恥ずかしい」お金の超基本を今すぐおさらいしよう!
更新日:2019/11/20
日本人は昔から奥ゆかしい民族のようで、人前でお金の話をするのは下品だといさめられてきた。そのためか、学校で「お金の使い方」のような授業を受けた覚えもないし、オトナになって初めて知る税制度や社会保障に困惑する人は多いようだ。
そこで、実際に困る前に一読したいのが、『今さら聞けないお金の超基本』(坂本綾子:著、泉美智子:監修/朝日新聞出版)だ。本書は、お金に関する超基本を「基礎知識」「稼ぐ」「納める」「貯める」「使う」「備える」「増やす」という7つのチャプターに分けて解説する。
ページをパラパラめくると、辞書のようにお金の基本について索引できる大全集のようにも感じる。持っているだけでもなんだか安心を覚える本書から、その内容を少し紹介するので、お金について不安を感じている人はぜひ参考にしてほしい。
■【お金を納める超基本】税金が戻るかもしれない「年末調整」
2019年もあっという間に残り2カ月。一年の暮れに感慨を覚えるところだが、お金の超基本を押さえるため、今は「年末調整」を意識しよう。
会社では毎月、社員ごとに給与額などから所得税を計算して天引きしている。そして12月になると、1年間の給与総額をもとに、天引きした所得税が合っているのか再び計算し直す。その際に、社員それぞれの個人的事情に応じた控除も行ってくれる。これが「年末調整」だ。きちんと確認すれば、もしかしたらあなたの税金が少しだけ返ってくるかもしれない。
特に結婚や出産、民間の保険に加入したなど、あなた自身に何かしらの変化が起きたときには税金の額も変化しやすいので、会社員の方は配布される「保険料控除申告書」を面倒がらずによく読み、記入しよう。ただし、返ってくる税金がない場合、あるいは税金の支払いが足りずに12月分や翌年1月分の給与から天引きされる場合もあるので、期待しすぎないように注意したい。
ちなみに節税につながる「所得控除」には、さまざまな種類がある。「社会保険料控除」「生命保険料控除」「地震保険料控除」「寄付金控除」など、会社員でも申告できる所得控除がたくさんあるので、本書を読んだり会社の詳しい人に聞いたりして、ぜひ手取り額アップに努めてほしい。
■【お金を貯める超基本】家計簿で出費を見直そう
今や老後について不安がない人は少数派だろう。多くの人が老後資金をできるだけ貯めようと躍起になっているが、なかなか思い通りうまくいかないこともある。そんなときは、基本に立ち返って「家計簿」をつけることが効果的だという。何にいくら使ったのか、記録して自覚することで、「今月は使いすぎたかな?」と早めに気づき、自然と支出が引き締まっていく。
家計簿をつける方法には、「ノート家計簿」「エクセルの自作家計簿」「スマホの家計簿アプリ」などの方法がある。ノートタイプは一番手っ取り早い方法だ。自作でもいいし、書店で良さそうなものを選んでもいい。ただし計算を電卓で行う必要があるので、苦手な人にはちょっと面倒かもしれない。
エクセルタイプは設定する費目の自由度が高い上に、関数を使えばあっという間に計算が終わる。しかし当然ながらエクセルの知識がないと使えない。スマホタイプは銀行口座のデータと連携させて入出金を自動的に読み込むことができたり、レシートを自動的に読み込んで反映させてくれたり、便利さはピカイチ。しかし、多種多様なサービスと個人情報を連動させているので、セキュリティ対策を万全にしないと恐ろしい一面もある。どのタイプを選ぶのかは、それぞれのメリットを吟味して読者自身が決めるところだろう。
さらに本書では費目別の家計見直しポイントも解説している。住居費と食費は手取り額の3割以内が目安、車を頻繁に使わないならカーシェアリングを検討、教育費は子どもの教育方針や資質を考えて本当に必要か再考…など、なぜ自分が思うような貯蓄ができていないのか悩んだら、これらのポイントを見つめ直してみよう。
■【お金を使う超基本】クレジットカードの選び方
軽減税率導入の一環で、キャッシュレス決済がお得になった。キャッシュレス決済の代表格の1つがクレジットカードだ。ネットショッピングが主流になり誰もが1枚は持っているという風潮だが、上手に使いこなせていない場合もあるそうなので、これを機会に見直してみよう。
まずクレジットカードの上手な利用方法は、「一括払い」もしくは「ボーナス払い」にすること。手数料を支払わなくていいからだ。一方、手数料を取られる「分割払い」や「リボルビング払い(通称リボ払い)」は、多くの会社が年15%の利率を設定している。10万円の買い物をリボ払いで支払うと、総支払額は10万6674円。こりゃ随分高くなる。
またキャッシュレス決済の優遇を期に、新しいクレジットカードを作る人は、次の3つのポイントを押さえておこう。
(1)生活圏に使える店・機関が多い
(2)年会費が負担にならない・ポイント還元率が高い
(3)付帯サービスの内容
さまざまなカード会社をリサーチして理想的なクレジットカードを手にしてほしい。
■【お金を使う超基本】お金が足りないときに頼る公的融資
非正規雇用の増加で、日常生活のお金さえ満足に用意できない人が増えている。そんなときに闇金や街金で借りてしまうと、高い金利でますます懐が厳しくなる悪循環が生まれる。
もし明日の生活さえ困る…というとき、あるいはそんな友人がいるときには、公的融資について検討してほしい。各都道府県の社会福祉協議会が「生活福祉資金貸付制度」を設けており、無利子または年1.5%で「生活支援金」「住宅入居費」「緊急小口資金」「教育支援費」などを融資してくれる。
さらに失業中で職業訓練を受けている人は、ハローワークが設ける「求職者支援資金融資」を頼ろう。年3%で月5万円または月10万円を、受講予定訓練月数分だけ融資してくれるのだ。
この情報は低所得で困っている人でも知らない場合が多いので、ぜひ誰かのために周知してほしいところだ。
このほか本書では、「給与と賞与の仕組み」「所得税・住民税の決まり方」「銀行ってどんな種類があるの?」「住宅ローンの選び方」「年金保険料を払えなくなったとき」「働けなくなったときの生活」など、大人として“知らないと恥ずかしい”超基本をすべて解説している。
今や会社員の給料が年々増えるということは期待薄になり、がむしゃらに働いて稼ごうとするだけでは人生をまっとうできない時代が訪れようとしている。そんなとき私たちの味方になるのは「情報」だ。ライフイベントでお金を使うときも、突然舞い込んだピンチのときも、超基本的な情報を押さえておけば正しく賢く乗り切れるに違いない。本書は大人になってから読むべき“お金の教科書”とも言うべき1冊だ。
文=いのうえゆきひろ