保険貧乏…掛け金が生活を圧迫している!? 保険会社が知られたくない「保険の裏側」とは?
更新日:2019/11/20
将来かかるかもしれない病気や入院の不安などに備えて加入する保険。社会人となれば、誰でも一度くらいは「加入しようか…」と迷ったり、すでに契約している人もライフステージの変化につれて「見直すべきか否か」といったことに、頭を悩ませた経験があるはずだ。
ただ、素人目でどの商品を選ぶべきか見極めるのは、なかなか難しいというのが正直なところ。「実は、保険をよく知るひとほど保険に入らない」という状況があると指摘するのが、保険業界に精通するプロがまとめた本、『いらない保険 生命保険会社が知られたくない「本当の話」』(後田亨、永田宏/講談社)である。
■終身と書かれていても将来的には“陳腐化”する可能性も
保険商品でよく目にするのが「終身医療保険」というキーワード。おおむね定年までの期間に一定の保険料を支払い続ければ、一生涯にわたり保障が受けられるとうたわれているものだが、本書はこれらの商品について「本当に頼りになるのだろうか?」と疑問を投げかける。
その理由にあるのは、「保険は陳腐化する」という事実だという。たいていの場合、保険商品は契約した時点で保障内容が決まってしまい、約款に書かれていないことには対応できないというリスクもある。仮にこの先、60歳ないし65歳で保険料を支払い終えたとき、医療の内容自体が変わっている可能性があり、契約書の内容が時代に対応できないというケースも考えられるのだ。
また、将来にかけて、保険という仕組みが適さない時代がくる可能性を本書は指摘する。そもそも保険とは、「本来はめったに起きないが、一度起きてしまうと個人では負いきれない経済リスクを、多数の人間に分散して支え合うもの」だ。だが、平均寿命が毎年のように更新され、年齢に応じて病気や介護などのリスクが高まると、保険会社としては、高齢者向けの保険料を上げるか、保障内容を減らすといった対策に迫られざるを得なくなる。いまのうちに、「保険を根本的に見直し、要らない保険を捨てて身軽になる時機に来ている」と、本書は促している。
■目安としてとどめておきたい社会保障制度にある健康保険
でも本当に保険は信頼できないのだろうか。本書の著者が、複数の保険会社商品設計関連の仕事を続けてきた詳しい知人に話を聞いたところ、返ってきたのは、国による社会保障制度である「健康保険だけでいい」という答えだったという。
例えば、大病を患った場合。本書では、厚生労働省が発表している疾病別の入院日数などをまとめた統計「患者調査」(2014年)及び、年齢別・疾病別の医療費を示した統計「医療給付実態調査」(2016年)にもとづいた試算が示されている。
それによると、疾病別にみて長い入院期間を要するのは脳梗塞で、40代では1カ月程度。年齢が上がるにつれて長くなる傾向にあり、75歳以上では4カ月ほどの期間になるという。一方、医療費については同様の期間で75歳以上であれば本来305万円超かかるが、現行の制度だと所得によっては「1割負担」であるため、実質30万円程度で済むというのだ。
だが、負担額については病気や入院の理由によって異なるため、あくまでも目安としてとらえておくのがよさそうだ。
■満期で掛け金がプラスされても必ずしも“得”ではない
保険商品に積極的な人たちの中にも、保険料によって家計が圧迫されている「保険貧乏」がいると指摘する本書。彼らに共通しているのは、解約時や満期時にまとまった額のお金が払い戻しされるような、貯蓄性のある商品に手を出している点だという。
では、何をもって加入すべきか見極めればいいのだろう。本書では、この種類の保険商品にありがちな“キャッチコピー”に注目している。
例えば、「長期的に預金よりお金が増える」とうたう商品があるとする。だが、いつ引き出してもマイナスにはならない預金と、契約直後から元本割れ期間がある保険では、リスクがまったく異なるという。また、仮に100万円の掛け金が20年後に110万円になったとしても、将来的に想定される税金や社会保険料負担の増額を加味すると、必ずしも好条件とはいえないそうだ。
保険商品の“裏側”を伝えようとする本書は、保険に対して手厳しい。だが、「将来大病にかかるかもしれない」という不安を抱えるのはあなた自身だ。自分や家族のために適した保険を見極めるにはおおいに参考になりそうな1冊だ。
文=カネコシュウヘイ