645年に起こった事件はもう「大化の改新」とは呼ばない!? 教科書の「●●の変」、あなたはわかりますか?
公開日:2019/10/31
教科書の内容は4年に一度改訂される。そのため、昭和・平成世代にとっては常識だと思っていたことでも、新しい教科書では異なる内容に変わっていることがあるのだ。『いつの間に?!ココまで変わった学校の教科書』(コンデックス情報研究所:編著/成美堂出版)は、昭和から平成、令和にかけて変化した教科書の内容をまとめた本だ。
教科書の変化でよく取り上げられるのは表記の変化だろう。本書においても、それは紹介されている。例えば、645年に起こった「大化の改新」。日本で初めてのクーデターとして有名な事件だが、現在は「乙巳の変(いっしのへん、いつしのへん、おっしのへん)」と呼ばれていることを知っているだろうか。ただし、これは単純に事件の呼び方が変わったわけではない。現在の教科書では、645年に起こった事件を「乙巳の変」と呼び、その後に行われた政治改革のことを「大化の改新」と呼ぶようになっているのだ。「大化の改新」が指す内容が変わっていることを知っておかないと、話が噛み合わなくなるかもしれない。
このように教科書の記述が変わる理由はいくつかある。そのひとつが研究により新事実がわかった場合だ。本書によれば、10年ほど前までは「恐竜は絶滅した」とされていた理科の教科書の記述が、現在では「恐竜の一部は鳥類に進化して生き残った」という内容に変わっているという。1996年、中国で発見されたシノサウロプテリクスという恐竜の化石に羽毛のあとが見つかったことをきっかけに、恐竜と鳥類の関係性が見直されたのだそうだ。今後さらなる新発見があれば、そのたびに常識も変化していくだろう。
また、近年起こった社会の出来事を踏まえて教科書に新しい記述が加わることもある。2011年に発生した東日本大震災のあと、小学校の社会の教科書には防災に関する記述が大幅に増えた。実際に保存食を食べる特別授業が行われることもあるという。さらに、2020年度から使用される教科書では、火災や地震から身を守るための準備や対策についてより大きく取り上げられるようになる。災害が多く発生する今日、大人だけでなく子供たちも防災意識を持つことが大切。本書を通じて、社会的な出来事がどのくらい教科書に反映されているのかも知ることができる。
さらに、時代の変化に合わせて教育内容も変わる。本書では、2020年度から小学校で必修となるプログラミング教育についても紹介。算数や理科、音楽などのさまざまな科目の中で物事を論理的に考える「プログラミング的思考」を養うことを目的としている。このプログラミング教育必修化の背景にあるのは、IT人材の不足だ。インターネットが発達したデジタル社会において、IT人材は今後さらに必要とされるだろう。プログラミング教育を受けた子供たちの中から、新しい技術やシステムを生み出す人材が誕生することを期待したい。
このような教科書の変化ばかりを知っていくと少し寂しく感じてしまうかもしれない。しかし、本書では半世紀以上も国語の教科書に掲載されている定番作品や、100年以上も歌い継がれてきた唱歌なども紹介している。親子共通の話題として楽しめるのではないだろうか。
教科書は学生時代しか読まないものなので、その変化を知る機会はなかなかない。本書は、新しい時代の常識を知るのにぴったりの1冊だ。親子で楽しむのはもちろん、社内での世代間ギャップを埋めるのにも役立つだろう。小・中・高校生の子供を持つ親世代には特に読んでほしい。
文=かなづち