他人に共感しすぎる、他人がいじられても見ているのがつらい…HSP(ひといちばい敏感な人)が生きやすくなるコツ

暮らし

公開日:2019/11/2

『生きづらいHSPのための、自己肯定感を育てるレッスン』(高木のぞみ、高木英昌/1万年堂出版)

 人混みでいつも疲れる、大きな音や雑音が苦手――他のみんなが平気なことなのに、自分にはしんどい。どうして自分には我慢できないのだろうと、自分を責めてはいないだろうか? 『生きづらいHSPのための、自己肯定感を育てるレッスン』(高木のぞみ、高木英昌/1万年堂出版)は、生きることに疲れてしまうというあなたの負担を軽くしてくれる1冊。HSPについて知っている人にも、何それ? という人にも読みやすい内容だ。

 書名にもある「HSP」とは、「Highly Sensitive Person」の頭文字で、「ひといちばい敏感な人」などと訳される。ここでいう「敏感」とは、音、光、触覚、嗅覚、他人の感情、カフェイン、痛みなどへの感度の高さを指す。著者は、こうした敏感さを持っており、「みんなに耐えられることが、どうして自分は耐えられないんだろう」と自分を責め、無理を重ねてしまった結果、鬱病に。治療の中で、医師を通してHSPのことを知ったという。

■「ひといちばい敏感」だと、どうして疲れる?

 著者は自身のこれまでの成長を振り返り、以下のような経験がHSPならではの状況だとわかり、衝撃を受けたという。

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□自分が怒られていなくても怒っている人やその場に恐怖を覚える
□他人に共感しすぎる(自分の感情イコール他人の感情になってしまう)
□特定の人をいじり倒すようなお笑い番組が苦手
□死について考える

 HSPはいってみれば、他の人よりも細かい網で周囲を感知しているということかもしれない。その網の個性はそれぞれ違うが、総じていえば、日常生活での消耗度が激しく疲れやすい人が多いという。「敏感」は良い悪いの話ではなくただ性質なので、「自分は自分」と割り切って他人に合わせなければ済む話だと思うかもしれない。とはいえ、多くの人にとってそうであるように、「空気を読んでみんなと一緒にしなきゃ」という圧が大抵かかるので、毎日生きているだけで疲れる、生きづらい、と感じるようになってしまうのだ。

 では、自分の敏感さとどう向き合えばいいのだろうか? 著者は日常生活での刺激を減らす工夫を試みたそうだ。日常生活での刺激とは、視覚、聴覚、嗅覚、味覚に入ってくる刺激だ。例えば、部屋の照明を間接照明にする、生活音が気になったらイヤホンで好きな曲を聞く、好きな香りのアロマオイルを持ち歩く、カフェイン飲料は1日1杯まで、など。

 どれも無理をしないでできる範囲での改善だ。これは、自分の感覚をきちんと受け取るための練習でもある。毎日続けることで、自分を大切にするという意味がわかってくるという。

 自分の感覚をちゃんと受け取る――意味は大体わかるが、体感的には難しい人もいるかもしれない。大切なポイントは、他人との境界線を引くことだ、と著者はいう。例えば、子育て中に電車で「子どもにスマホを見せるなんて」と他人からいわれたとしよう。人の言葉をそのまま受け取ると「私、親失格かも…」と落ち込んでしまうかもしれないが、他人は自分とは別の生き物なんだと意識すると、「この人は私の人生に何の関わりもない人だ」「この人は普段はちゃんと子どもに外遊びをさせている私を知らない」などと思い直し、不用意に傷つくことを避けられる。

 他人の基準や言葉を優先するのではなく、できる範囲で自分を優先する。これが生きることを楽にする最大のコツなのだろう。もしかしたら、そんなことは当たり前だと感じる人もいるかもしれないが、HSPにとっては目から鱗に違いない。自分の感覚が、他人とどの程度同じでどの程度違うのかを知ることは、実はとても難しいことなのではないだろうか。

■HSPでない人にとっても「生きやすくなる」ヒントがたくさん

 毎日とても疲れている、自分がHSPかどうか確かめたいという方は、本書内のチェックリストを参考にしたうえで、専門家への相談をおすすめしたい。また、HSPには当てはまりそうにないけれど、自分も日常の疲れを減らしたいという方は、他人と自分との感覚の違いを観察してみるのはどうだろう。自分の特性を知ることで、日々の快適度を上げる工夫につながるかもしれないからだ。

文=奥みんす