あなたに「本当に」必要な老後資金はいくら? 不安解消のために必要な30のノウハウ

ビジネス

更新日:2019/11/20

『お金を貯める 守る 増やす超正解30』(井澤江美/東洋経済新報社)

 10月から消費税率が10%に引き上げられ、以前よりますます家計が気になったり、老後の生活資金のことを不安に思ったりする人も増えたようだ。当たり前の話だが、お金は「収入-支出」の差額分しか貯めることができない。貯金の不安を解消するには、「収入を増やす」か「支出を抑える」の2択しかないのだが、なかなか思い通りにできなくて困る人も多いだろう。

 私たちの老後を決定づけるお金の要素は6つあるという。「貯蓄」「保険」「年金」「住宅」「相続」「税金」だ。『お金を貯める 守る 増やす超正解30』(井澤江美/東洋経済新報社)は、人気ファイナンシャルプランナーの井澤江美さんが、これらに関するお得な“超正解”ノウハウを30項目にわけてわかりやすく伝授する1冊。

 老後について不安を覚えるのは仕方ないこと。しかし、漠然と不安に思ったままでいるのと、将来を予測して今から行動するのとでは、まったく違う未来を引き寄せる。本書の内容の一部をご紹介するので、ぜひ今日から老後に向けたプランニングをしてみてはどうだろう。

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■老後資金の確保が「うまくいく家計」と「そうでない家計」の違い

 税金や社会保障費など国民としての負担が増え続けている一方、自分がもらえる公的年金は厳しい現実に直面しそうだ。そのため将来を悲観的に考えがちな人もいるかもしれない。

 だからこそ改めて確認したいのは、「自分の不安についてどこまで具体的に考えているか」というポイント。

 今年6月、金融庁が「老後資金として2000万円が必要だ」という衝撃的な報告書を出して、日本中が騒然とした。この問題の結論は出ていない状態だが、本当に誰もが2000万円を必要とするのだろうか? もしかすると、2000万円より少なく済む場合もあるかもしれないし、3000万円以上の資金が必要な場合もあるかもしれない。

 著者の井澤さんは「公的年金がゼロになることはまずありえない」と指摘した上で、「自分の年金受給額を確認すること」がまず必要と説く。私たちがもらえる年金は大きく分けて3つある。「国民年金」「厚生年金」「企業年金」だ。前者2つは、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で「老齢年金の見込み額」を把握できる。これによって、老後資金の“不足金額”を概算で出せるのだ。

 井澤さんは「うまくいく家計」と「そうでない家計」の違いは、「家計の未来を意識したかどうか」にあると唱える。漠然と不安を覚えながら「なりゆきまかせ」で生活を続けてしまうと、働けなくなる可能性が高くなる70歳以降になって老後資金が不足し、途方に暮れることもある…。一方、家計を将来にわたって予測し、収入と支出のバランスを考えながら生活すると、まず心にゆとりを持って人生を過ごせるようになるだろう。

 井澤さんは読者に「家計の未来図」を描く必要性を説いた上で、3つのステップを促す。

(1)自分や家族がどんなふうに暮らし、どの程度の消費生活を送りたいのかをイメージする
(2)上記(1)の生活に必要な1年間のお金の目安(貯蓄を含む)を計算する
(3)上記(2)のお金をどう用意していくかを考える

 この3つのステップではじき出された金額は、個人や世帯によってバラバラなはずだ。「老後2000万円問題」は、ある人にとっては当てはまるが、別の人にとっては過不足のある不完全な報告書だ。私たちに必要なのは「将来を漠然と不安に思う」ことではなく、「将来どれだけお金が必要となるのか計算する行動力」だ。

 しかしこれらの計算をして概算をはじき出すのは、ちょっと大変だ。本書では年金受給額の簡易な計算式、将来的に必要になるお金を計算する「家計の未来年表」、住宅ローンや教育費の目安が分かる一覧表や計算式などを掲載。今こそこういったノウハウを活用して、老後に必要なお金の「見える化」に取り組んでほしい。

■お金の運用が上手な人と下手な人の違い

 それでも、「老後資金を計算してみたけれども、圧倒的に足りない!」という結論に直面する人もいるはずだ。老後資金を確保する方法は、記事の冒頭で触れたように2つある。「収入を増やす」か「支出を抑える」だ。後者は手っ取り早い方法だが、支出を削るだけだと気持ちも削られていってしまう。

 そこで視野に入れてほしいのが、収入を増やす方法の1つである「投資」だ。「うわー、自分は投資には向いてなさそう…」と苦手意識を持つ人もいるかもしれないが、ちょっとしたヒントを紹介したい。

 たとえば毎月5万円を30年間にわたってタンス預金した場合、形成される資産は1800万円だ。これを1%の利率で運用できれば2098万円となり、約300万円違う。さらに利率が3%なら2913万円と、お金の運用に成功すればゆとりある老後資金の確保ができるのだ。

 しかし、投資と一口にいっても、「不動産」「株式」「為替」などさまざまな種類がある。井澤さんは「お金の運用が上手な人」になるコツとして3つのポイントを挙げる。

 1つ目は、「それぞれの商品長所と短所を大まかに理解して、経済の様子や自分のライフプランに合ったものを選ぶこと」。2つ目は、「自分で判断できる投資とプロに任せた方がいい投資を使い分けること」。3つ目は、「普段からマーケットの基本的な数字を押さえて、バランスの取れた投資を行うこと」だ。

 これらの3つのポイントを押さえた上で、政府や企業にお金を貸す「債券」、時価総額に注目して低リスクで収益を獲得する「株式投資」、リスクは高いが高利率が魅力の「外国債券」など、さまざまな金融商品を検討していくのだ。

 しかし投資にはリスクがつきもの。元本割れの事態もあり、プロでも大損をだすことがある。そこで、本書が投資初心者にすすめるのが、投資信託の一種である「インデックスファンド」。詳細は各商品説明を確認していただくとしてざっくり説明すると、資産運用のプロが多数の個人投資家から資金を集め、日本を含めた世界経済の指数に合わせて運用するという仕組みだ。

 インデックスファンドの魅力は、大きな収益は期待できない反面、プロに委託する手数料などが低いので、世界経済の成長に合わせて手堅く資産形成できるという点。さらに100円から気軽に投資できる金融機関もあるので、これから投資を考えてみようという人にとって、負担の少ない金融商品だ。

 本書ではそれぞれの金融商品の選び方についても細かくアドバイスしてくれる。また、投資で得た利益には税金がかかるので、少額投資非課税制度「NISA」や運用したお金を年金として受け取る「確定拠出年金」などの、お得な税優遇制度についても解説がある。

 本書を読み進めると、老後の資産を貯金するには「先に動いた者の勝ち」だと痛感する。漠然と「不安だな…」と感じているだけでは、何も解決しない。今から先手を打って、あなたらしくてゆとりのある“大正解の未来図”を描いてほしい。

文=いのうえゆきひろ