田辺留依「私よりもキャラクターのイメージを強く残せる役者になりたい」 声優図鑑
公開日:2019/11/11
キャラクターの裏に隠された自分自身をありのままに語る、ダ・ヴィンチニュースの恒例企画『声優図鑑』。第229回目に登場するのは、『火ノ丸相撲』の堀千鶴子役や『アイドルマスター シンデレラガールズ』の荒木比奈役、『温泉むすめ』の塩江修子役などを演じる田辺留依さん。最近は舞台でも活躍している田辺さんが悩んだ時に、助けてくれたのはあのキャラクターだった……!?
――先ほど少し雨も降っていましたが、撮影はどうでしたか?
田辺:表情が豊かすぎると言われました(笑)。思いっきり笑っちゃったり、ハプニングが起こってしかめっ面しちゃったりして。頭に水滴が落ちてきた時に変な顔をしたら、通行人のおじさんがボソッと「面白い子だね」って(笑)。
――普段から顔芸大好きですもんね。
田辺:そうなんです。すぐに変な顔をしちゃうんですよ。でも、みんなが笑ってくれたらそれでいいかなって。その方が安心できるし、楽しい方がいいですから。
――そんな田辺さんは2013年に声優デビューして、最近は演じる役の幅も広がってきた気がします。
田辺:確かに、お仕事を始めた頃は明るい王道系ヒロインのような役が多かったですけど、だんだんとクール系の子やちょっと抜けているオタクっぽい子など、幅広い性格の役を演じさせていただく機会が増えました。すごくありがたいです。
――始めた頃というと、初主演の『ウィザード・バリスターズ~弁魔士セシル』は必死に演じていた感じですか?
田辺:それが違うんです。お芝居の組み立てとか考えずに、ただただ楽しくてキャラクターに声を当てていました。逆に今の方が「このキャラクターはどう演じたらいいかな」「どういう発声方法で喋ったらキャラクターが活きるだろう」とか、色々と考えるようになって。実は……それで今年パンクしちゃったんです(笑)。
――パンクしたとは?
田辺:お芝居がわからなくなったというか、どう演じていたんだろう?楽しいって何だったっけ?というところまで精神的に落ちてしまって。でも、その時に『セシル』を見直してみたら、すごく活き活きとお芝居していたんです。あの頃はただ楽しく掛け合いしていたのを少しずつ思い出して、今はまたお芝居が楽しくなってきました。
――素直に演じる楽しさも大切ですからね。2018年からは舞台にも挑戦されていますが、特に印象深い舞台を挙げるなら?
田辺:初めて舞台に立たせていただいた『勇者セイヤンの物語~ノストラダム男の予言~』ですね。今までとは違うことが多かったので、いろいろ考えました。例えば“隣にいる芝居”をする場合は、後ろの席まで届ける声でありつつ隣にいるニュアンスも出さないといけなかったり。自分では精一杯やっているつもりでも、映像を見返したら表情も身振り手振りももっとできることがあって……。次に繋がるきっかけをたくさんいただけた作品です。
――2019年も引き続き舞台に立たれています。
田辺:5月の『恋するアンチヒーロー』ではお客さんとの距離が近くて、より生に近い芝居だったので、これは吹き替えにも活かせるんじゃないかと思いました。本当に舞台はたくさんの発見があります。声の幅も表現の幅ももっと広げたいですね。
――舞台やドラマなど、もともと役者への憧れもあったのですか?
田辺:小さい頃はありました。でも、キラキラした人しか女優さんにはなれないと思っていて(笑)。そんな時にアニメで声優というお仕事を知って声優さんになりたいと思い、13歳の時に養成所に。
――13歳って中学1年ですよね。その年齢で行動するのはすごいです。
田辺:負けず嫌いだったんです(笑)。当時、高校生の声優はいたけど、中学生で声優をやっている子はあまりいないなと思って。だから「今なりたい!」「今頑張りたい!」と養成所に通い始めたんです。
――目指したきっかけの作品は『マクロスF』と話していましたが、全話見て感動したと?
田辺:実は、たまたま見た回で感動したんです。1話しか見ていなくて、内容も全然分からない状態なのに、感動したのが衝撃的で。声だけで表現して、見ている人がこんなに感動できる世界があるんだ!って。
――『マクロス』ですから、歌うことも当時から意識していた?
田辺:歌いたいとは全然思っていなかったんです。できれば顔出しをしない声優さんになりたい、自分のことはいいからキャラクターだけ見て欲しいと思っていて。純粋に声のお芝居だけをしたかったときもあったので、歌ったり踊ったりすることに、最初は少し戸惑いました。
――とはいえ、それも求められるわけですからね。
田辺:そうですね。本当に苦手だったので、どうしようとずっと思っていました(笑)。でも、『*ω*Quintet(オメガクインテット)』の時、キャラクター(キョウカ)の設定が「歌もしっかり歌えて、ストイックで真面目」とある中で、自分が苦手意識を持ったまま役と向き合うのはすごく失礼だと思って。「苦手だからやりたくない、できない」ではなくて「できるところまでやってみよう」と思い、必死に取り組みました。
――ダンスレッスンはやっぱり大変でした?
田辺:泣きながらやっていたときもありました(笑)。ただ、今はキャラクターとシンクロしてステージに立つようなコンテンツもやらせていただいているので、泣きながらでもやってよかったなと思います。
――ステージということでは、『アイドルマスター シンデレラガールズ』では大きなステージも経験しました。
田辺:自分でも不思議なんですが、ステージに立っている時は自分というより(荒木)比奈が立って歌っているイメージなので、緊張する感じはないんですよ。少しでも比奈になれているかな、比奈だったらこうするかな、という気持ちでパフォーマンスしています。
――演じる上ではいかがでしたか?プレッシャーもあったかと思いますが。
田辺:声が付いていないキャラクターだったので、ファンの方のイメージもそれぞれ違うものがあったと思います。そんな中で、自分が声をあてることにすごくドキドキしました。でも、アイドルになる前の性格から、アイドルになって変わっていく過程まで演じさせていただいたのがすごく新鮮で楽しいなと思いました。
――演技やステージもそうですが、人との出会いも多かったのでは。
田辺:そうですね。私自身人見知りが激しくて、普段あまり人と喋ることができなかったんですが、関わらせていただくようになってからいろんな方と話せるようになりました(笑)。
――ほかにも2018年にはTVアニメ『火ノ丸相撲』で堀千鶴子を演じました。この役はどうでしたか?
田辺:本格的な出番前にもアフレコを見学させていただき、火ノ丸たちがどういう風に稽古をしているのか見ていたので、堀ちゃんのワクワクする気持ちがよくわかりました。私も彼女と一緒に相撲を知りましたし、シンクロしていろんなドキドキを味わわせてもらったなと思います。
――題材が相撲ということでの苦労もあったのでは。
田辺:やっぱり相撲の用語は大変でした。キャストの皆さんと一緒に「これはどういう風に読むんですかね?」と話をしたりして。技の名前も用語のイントネーションも難しかったですが、奥が深くてもっと知りたいなと思いました。実際の相撲も見に行きたいです。
――『温泉むすめ』では塩江修子をやられています。
田辺:塩江ちゃんは香川県の温泉むすめで、修行僧なんです。でも、ボイスサンプルの3つ目に「BLが好き」というセリフがあるので、そういう要素ももう少し深く掘り下げたいなと(笑)。
――そして、先ほど話していたように舞台への出演も増えました。今後はどのような役者を目指していきたいですか?
田辺:声のお仕事も舞台も「田辺留依がやっています」ではなく、見ている方に純粋に楽しんで欲しいです。私のイメージよりも、キャラクターのイメージを強く残せる役者になれたらなと思っています。
――その言葉の後に聞くのもなんですが、少しプライベートのことも。普段から役者友達と遊びに行ったりは?
田辺:遊びに行くようになりました。20歳を超えてお酒が飲めるようになったので、飲みに行くようにもなりましたね。
――好きな食べ物が「かにみそ」ですし、なんとなくお酒は強そうですが。
田辺:実はそうでもないんですよ(笑)。あまり量が飲めないので、ちょびちょびと飲んでいる感じを出しながら和気あいあいとしています。お酒というか、お酒を飲んで楽しんでいる空間が好きなんです。
――それ以外で、オフの日があったら何をしていますか?
田辺:ゲームをしていますね。最近PS4を買って、FPSのゲームにハマっています。以前からスマホでPUBGとかやっていたんですけど、撃つ系のゲームは得意みたいで(笑)。
――ゲームは昔から?
田辺:昔はあまりしていなくて、絵を描いていました。でも、趣味が「家で出来る遊び」なのは、昔も今も変わらないです(笑)。ネットサーフィンしたり、YouTubeを見ていたり。
――では、ズバリ今欲しいものは?
田辺:……お金ですかね?(笑)
それは冗談ですが、これからも頑張ります!!
――田辺さん、ありがとうございました!
次回の「声優図鑑」をお楽しみに!
田辺留依
◆撮影協力
撮影=山本哲也、取材・文=千葉研一、制作・キャスティング=吉村尚紀「オブジェクト」