イケメン上司との無人島生活はドキドキとピンチの連続! 堅物部長と新卒女子社員が繰り広げるサバイバルビジネスコメディ
公開日:2019/11/10
誰でも一度は「無人島に3つだけ持っていけるなら?」と問われた経験があるだろう。最近では就職活動中に企業側から質問されることも多く、その人の性格や重視するものを知るための命題としても捉えられている。では、少し視点を変えて「無人島にひとりだけ連れていけるなら?」と問われたとき、あなたが誰を指名するのか考えてみてほしい。そして、究極のサバイバル生活で絶対に“過ごしたくない”相手が誰なのかも――。
『孤島部長』(八海つむ/小学館)の主人公は、株式会社ナチュラルに入社した女子社員・小松(こまつ)。のんびり屋さんで無欲な彼女は、不運にも新人研修中に陸地から遠く離れた無人島に流されてしまう。しかも、恐怖の鬼上司・古藤(ことう)部長とともに……。こうして楽しい旅行感覚から一転、過酷なサバイバルが幕を開けたのだった。
彼女が「AI知能を搭載したビジネスマシン」と揶揄していたとおり、古藤部長の“お堅さ”は環境が変わっても健在。壊れた時計やツタで作ったメガネを身に付けながら、朝礼と終礼は欠かさず行う。また、無人島を「孤島事業部」と命名し、目標達成(無人島脱出)のために日々タスクを消化していくのだった。
【孤島事業部 各担当業務】
小松
・浜辺のパトロール
・漂流物集め、ストック管理
・火起こし(部長同伴)部長
・力仕事
・食料調達
・各種水の管理(飲用/衛生用)
・その他なんでも
本作は、「テキトーに慎ましく生きる」がモットーの“イマドキ新入社員”と仕事の鬼である営業部長が繰り広げるサバイバルビジネスコメディ。課せられた漂流物のストック管理すらもサボってしまう小松の成長日記や少しずつ縮まっていくふたりの絶妙な距離など、少女マンガのようなドキドキ感とクスっと笑えるコメディマンガの面白さを同時に味わえる贅沢な作品だ。
魅力的なシーンの多い1巻のなかでも、ぜひチェックしてほしいのが各話の後に収録されている番外編である。流された小松を背負って泳いだ後に「背中に全神経を集中させてしまった」とひっそり反省したり、寝ぼけて露出の多い姿になった小松を見て困惑したりと、“甘い誘惑”に負けてしまいそうになる部長がかわいくてたまらない。切れ長の目で遠くを見つめながら呟く「っぶねー…」は、すべての読者が胸キュン必至だろう。
次巻では部長の“自制”をコントロールしているネクタイが千切れてしまったことで、ふたりの無人島生活に新たなピンチとドキドキが加わる。はたして、小松と部長はもどかしい距離と無人島生活から抜け出せるのだろうか。「ビジネス×サバイバル×コメディ」の異色さを楽しみながら、ふたりの関係を追っていきたい。
文=山本杏奈