ペイペイは今後も流行る? 便利なだけでは済まない「キャッシュレス」をどう活用するか
公開日:2019/11/21
消費税率が10パーセントに上がり、消費活動の形に何らかの変化があったという方は多いだろう。筆者はこれまでコンビニ・スーパーでの会計などは“現金派”だったが、この秋からのポイント還元キャンペーンをきっかけに、クレジットカードやICカードを用いた“キャッシュレス決済”を多用するようになった。
政府も本腰を入れ始め、私たちの日常の中に今後ますます浸透していくであろうキャッシュレス決済。利便性が向上するのは大歓迎だが、世間の風潮に流されるまま利用するだけで果たして大丈夫なのだろうか。「なんとなくお得」と思っていても、実はもっと得できる機会を逃していたり、あるいは情報漏洩などの危険な目に遭ったりする可能性ももしかしたらあるかもしれない…。
『キャッシュレス覇権戦争』(岩田昭男/NHK出版)は、昨今の国内のキャシュレス化の流れや、日本よりもキャッシュレス化が進んでいる諸外国の例を解説し、今後の私たちのお金との接し方について説く書籍。また本書では、私たちがまだあまり意識できていない“キャッシュレスに潜む危険性”の解説もなされている。
■スマホ決済を活用し、個人商店でもお得に
破格の還元キャンペーンで一躍有名になったペイペイをはじめとした“スマホ決済”。アプリを起動したり、QRコードのスキャンをしたりと、クレジットカードやICカードと比較すると操作が煩わしい印象も否めず、キャンペーンがなければ利用しないかも…と感じる人も多いかもしれない。しかし本書では、スマホ決済の今後の予想図について、前向きな説明がなされている。
著者は、ラーメン店や立ち食いソバ屋、居酒屋、クリーニング店などといった規模の小さい個人商店こそが、“キャッシュレスの最後に残った秘境”だと説く。なぜか。その大きな理由は「導入コスト」だ。クレジットカードやICカードなどの従来型の決済ツールを導入するためには、機材など大きなコストを必要とし、これは個人商店にとっては痛手だ。しかしスマホ決済の場合は、QRコードを印刷して置いておくだけで済む。
このような理由で個人商店などでのキャッシュレス化が進めば、私たち消費者がポイント還元をはじめとしたキャッシュレスの恩恵を受ける機会も増えることにつながる。オリガミペイ、楽天ペイ、ペイペイ、LINEペイなど乱立する新しいサービスに今のうちから慣れ、上手く活用できるようにしておくことで、節約の幅は広がりそうだ。また、仕事帰りに居酒屋に寄りたいと思ったとき、ATMの利用手数料を払って現金を用意しなければいけない機会も今後は減っていきそうだ。
■「信用格差社会」を生き延びるためには
キャッシュレス化と聞くと、ポイント還元で出費を節約できたり、支払いの手間が簡略されたりと、ポジティブなイメージが大きいかもしれない。しかし本書では、日本よりもキャッシュレス化が大きく進んでいる中国、アメリカ、韓国などでの事例を挙げながら、便利さの陰に潜むリスクについても解説されている。
中国やアメリカでは「信用格差」が広がりつつあるという。この流れでは、クレジットやローンの返済履歴のスコアが優秀な人は低金利の金融商品を手にすることができる一方で、スコアが低い人々は、住宅ローンが組めなかったり、お金を借りる際に高金利だったりする。
これからの日本でも、そのような信用格差社会が訪れる可能性は十分にある。本書では信用情報機関とクレジットスコアについても詳しい解説がなされているので気になる方は今のうちにチェックするとよさそうだ。
また、電子決済には「消費活動が丸裸にされる」という特性がある。現金は「誰が・どこで・どのように消費したのか」がわかりにくいが、電子決済ではそれらが全てデータとして残る。お金の流れをベースとして、私たちの消費生活や日常がビッグデータの一部として常に吸い上げられるのだ。
我々消費者にとってお得な決済方法やポイントサービスが増えているが、そのトレードとして、自分が情報を渡しているという点もしっかりと意識しておかねばならない。そういった全体の流れを理解したうえで、自分の消費スタイルに合ったキャッシュレス決済を活用していきたいものだ。
文=K(稲)