墓じまいが急増中…ところで「墓じまい」って何? お墓のことを漫画で考える
公開日:2019/11/21
この世に生を受けたということは、親が存在することはいうまでもない。それは私たちの親にもいえることであり、そうやって「家系」は代々受け継がれていく。
生まれた一方で当然人は寿命が来れば死ぬわけで、人が死ぬと「墓」に埋葬されるのが一般的だ。親族が亡くなるとその墓を子孫が守っていくことになるが、最近では少子高齢化などの影響により、墓を継ぐ人がいないといった理由で墓を撤去する「墓じまい」の話もよく聞く。ある程度の年齢になると、このような「墓問題」は他人事ではないのである。
『まんが 墓活 それでどうする、うちの墓?』(井上ミノル/140B)は、墓についての基本知識からその種類、法律関係などあらゆる面から墓を考察する。自分や親族の墓というものを考える上で、確かな一助となるだろう。
■お墓の種類、特性をまずは整理
本書は女系家族の作者が、いずれ直面する実家の墓問題を考えるところから始まる。女系ゆえに実家の代々墓をどうするのかという問題だ。「墓じまい」をするのか、そもそも自分たちは墓をどうするのか、考え始めれば次々と問題がわいてくる。とにかく、まずは墓について調べることから作者の「墓活」はスタートするのであった。
一般的に墓といって思い浮かぶのは、墓石を立てるタイプの「一般墓」だろう。このほかに最近では西洋タイプの「西洋墓」もよく見られるようになった。
また、代々で受け継いでいく墓を「継承墓」といい、お盆などで一族が集まって墓参りするのが一般的なスタイルだろうか。しかし近年では、核家族化など家族形態の変化によって、さまざまな墓が作られるようになったという。血縁を超えた他人同士が葬られる「合同墓」や夫婦だけで入る「夫婦墓」などが一例である。
さて、墓の種類については分かったが、では故人の遺骨は墓にしか納めてはいけないのだろうか。実は遺骨安置には、いろいろな方法がある。近年、注目されているのが「納骨堂」だ。これは例えばマンションのような建物に専用のスペースを作って、そこに複数の遺骨を安置するもの。霊園は郊外にあることが多い一方で、納骨堂はアクセスのよい場所に作れるメリットもある。また、墓石の代わりに樹木を墓標とする「樹木葬」や、火葬後の焼骨を粉砕して海などに撒く「散骨」という方法も存在する。ただし、これらは法律や条例に抵触する場合もあるので、事前にしっかりとした下調べが必須となるので注意したい。
■意外と費用がかかる? 「墓じまい」の手順
最近は墓を畳む「墓じまい」も増えていると先述したが、その方法も本書では解説している。ただやめた、と決めるだけでは済まないのが墓じまいの大変なところだ。
代々墓の場合、大体がどこかの寺の「檀家」であろう。墓じまいの場合、まず墓に宿った魂を抜く「閉眼供養」や「抜魂供養」などの法要を行う。費用はお布施として「3~10万」が相場。また菩提寺を抜けるための「離檀料」も必要で、こちらは「10~30万」が相場だという。ちなみに各費用は寺との関わりの深さなどで変動するので、あくまで目安。あとは石材店に頼んで、墓を撤去してもらえばよい。手順もそうだが、墓じまいには意外と費用もかかる。さらに、大切な遺骨をどうするか…先祖の供養を終えるのだから、やはり最後の「けじめ」のようなものは必要なのだと思う。
作者は本書で「取材していくうちに、お墓ってやっぱりあったほうがいいと思った」そうだ。「人は祈らずにはいられない生き物だから…」と感じたからで、私もそう思う。もちろん現在の環境的に墓の維持が難しいという場合もあろうが、墓にこだわらずとも「つちぼとけ」などを作って「手元供養」をすることだってできるのだ。
可能な範囲であっても故人の供養をきちんとしたいと考えている人には本書は非常に有用なので、ぜひ活用していただきたい。
文=木谷誠