「本はオワコン」ではない決定的理由。中田敦彦が「独学」が死ぬほど面白くなるコツを伝授!
公開日:2019/11/27
「武勇伝」や「PERFECT HUMAN」など、エンタメ界でさまざまなヒットを飛ばしてきたお笑いコンビ「オリエンタルラジオ」の中田敦彦さん。ちょっと視点を変え、歴史、文学、政治経済など、幅広い分野について分かりやすくする「YouTube大学」を手がけることで、またも勢いに乗っている。開設からわずか4カ月でチャンネル登録者数110万人を突破。爆発的ヒットに舌を巻く。
『勉強が死ぬほど面白くなる独学の教科書』(中田敦彦/SBクリエイティブ)は、そんな中田さんが、読者に新しい世界を見せてくれる“教養本”だ。その内容はズバリ、勉強を最高のエンターテインメントにする方法。この本を読めば、明日から勉強が楽しくて仕方なくなるという。
本書は「ビジネス書」に分類されるはずなのだが、確かにページをめくるたびに楽しい。しかも勉強になる。この記事では、そのごく一部をご紹介したい。
■YouTube大学で学んでほしいたった1つのこととは?
そもそもなぜ中田さんは本書を記したのか。それは「学校の授業にずっと違和感があった」からだという。
「ここはテストに出る大事なところだから、しっかり覚えておくように」――学校や塾で何度もこのセリフを聞き、あわててノートを取った覚えは多くの人があるだろう。しかし、中田さんに言わせると、この発言は矛盾だらけだという。
子どもたちが一生懸命机にかじりついて勉強する理由は、受験を突破するため。だから先生たちは、入試に出る重要な内容を学校のテストにも出すことで、子どもたちに覚えさせていく。言い換えれば、「入試のために教えている」のであって、「何か理由があるから」という主観がない。学校や塾の授業が面白くないのは、ある意味で仕方がないのだ。
そこで中田さんは声を大にして訴える。なぜ「YouTube大学」ではさまざまな分野を授業形式で解説するのか。理由はただ1つ。
「めちゃくちゃ面白いから」
つまらなかった学校の授業、テストの点数を上げるために通った塾…今までの苦い経験はすべて忘れてほしい。英語や数学は、自ら主体性をもって学べば最高のエンターテインメントになるという。あの堅苦しい授業の内容も、毎日の楽しみになる。中田さんは本書でそれを知ってほしいと訴えているのだ。今から学校の授業を学び直したい!という大人にとっても、本書はうってつけのきっかけになるだろう。
■読書の先には「楽しい何か」が待っている!
本書の目的が分かったところで、具体的な方法も紹介していきたい。中田さんによると、勉強において最適なツールは書籍。読書が最高の選択なのだそうだ。
「本で調べるよりもネット検索のほうが効率よくないですか?」
そんな声が聞こえてきそうだが、ネットにも良い面と悪い面がある。情報にアクセスする「速さ」では圧倒的だが、ネット情報はあくまで「単発の情報」にすぎないという。ブロックチェーンやAIなど、複雑で奥の深いテーマほど、情報をぎゅっと1冊に凝縮した書籍を読んで勉強するほうが効率がいい。
さらに本書では、中田敦彦流情報収集術(勉強術)を伝授している。そのエッセンスを簡単に説明しよう。まずは勉強したいテーマを決めて、書店に突撃。読みやすそうな本を2~3冊購入し、読み比べてみる。そして気に入った1冊を軸にして、残りは補完的に読むのだ。
また、本は必ず2回読んでみよう。1回目はざっと流し読み。2回目にじっくり読む。気になったキーワードは、その場でネット検索してみるのもいいだろう。
もしかしたら、「読書が苦手だから、この勉強法は無理かも…」と感じる人もいるかもしれないが安心してほしい。なんと、中田さんも読書が苦手だそうだ。では、なぜたくさんの本を読み続けられるのか? それは、「情報収集の手段として本が優れている」「教養を勉強するのは面白い」という考えがあるので、割り切って読書できるという。
また、「身につけた知識について人に話したい」という欲も大切だ。勉強で得た教養を相手に話すことで、感心させたり驚かせたりできるならば、本を読む苦痛も我慢できる。そこで得られる快楽は苦痛を凌駕する。
読書が苦手な人は、なぜ読書をするのか「目的」を明確化してみるとよさそうだ。デートで女の子を口説くため、会社で後輩に知識をひけらかすため…どんな目的でもいいのだ。読書の先に、必ず楽しい何かが待っている――ならば誰だって積極的に読書を重ねて、教養を積み上げていけるだろう。
■なぜ芥川龍之介は「人間は醜い」と訴え続けたのか
エンターテインメントになる勉強の方法が分かれば、次は実践。本書第3章では、教養として文学作品を楽しむ方法を解説している。これがまた本当に面白い。
その1つに、「作者の生涯から作品のテーマを読み解く」方法がある。たとえば芥川龍之介の作品はどれも「人間は醜い存在である」と訴える。なぜ芥川は、こんなにも重く苦しいテーマを描き続けたのか。その理由は作家の過去にあった。
芥川は、母親が精神的に病んだせいで、幼少期の人格形成で最も重要な「無償の愛」を受けられなかったそう。そればかりか母親の心の闇を間近で見てしまう。著名な作家になった後も、創作のプレッシャー、師と仰いだ夏目漱石の死、関東大震災、女性問題、生活苦など、さまざまな試練と闘い続けた果てに、大量に薬を飲んで自殺してしまった。
あらゆる苦しみの中で芥川龍之介は、きっと生涯にわたって人間の闇や醜さについて考え続けたに違いない。それが彼の作品に投影されている。背景を理解して芥川作品を開けば、「人間は醜い存在だ」という悲鳴に似た叫びが読者の頭の中でも響き渡る。あらためて『羅生門』や『鼻』を読みたくなった人もいるのではないだろうか?
■これからの時代は「独学」が必須スキルに
本稿の最後に、もう1つ中田さんの言葉を届けたい。これからの時代は、「独学が必須スキルになる」かもしれない。誰もが実生活で感じているように、ネットの劇的な進化によって、人類は産業革命やエネルギー革命にも似た激変期を経験することになる。
この激変期を生き残るには、自らの力で教養を身につけて、自分をアップグレードし続けることが大切だ。誰かに教えてもらう勉強ではなく「独学」によって時代の変化に耐えうる準備をした人だけが、荒波を越えていくのだろう。
本書を読むと、勉強は最高のエンターテインメントであり、読書には未来の可能性が秘められていると感じる。「本はオワコン」のような言われ方もしているが、文字媒体は石板の時代から生き残ってきた最強の情報伝達手段だ。姿を消さないものには理由がある。ぜひ本書を読んでほしい。明日を変えるきっかけが、ここにある。
文=いのうえゆきひろ