バチカンと日本のさらなる文化交流がスタート! 気になるその内容は――

文芸・カルチャー

公開日:2019/11/27

 記念すべきローマ教皇来日(11月23日~26日)の前日にあたる11月22日に、東京《神楽座》にて、【バチカンと日本のヴェールに包まれた歴史の交流、その解明の扉がいま開かれる―100年プロジェクト】記者会見が、ジャン=クロード・オロリッシュ枢機卿(ルクセンブルク大司教)、川村信三氏(上智大学教授)、シルヴィオ・ヴィータ氏(京都外国語大学教授・イタリア国立東方学研究所研究企画代表)を招いて開催された。

 記者会見に先立ち、駐日ローマ法王庁大使のジョゼフ・チェノットゥ大司教から、本プロジェクトに向けてのメッセージが伝えられた。またローマ教皇の来日に合わせて訪日された、在バチカン日本大使館・特命全権大使の中村芳夫氏も本会見に来場した。

■駐日ローマ法王庁大使 ジョゼフ・チェノットゥ大司教からのメッセージ

“新しい時代令和に、このすばらしい国をフランシスコ教皇が訪れるという記念すべき日の前夜に、日本と教皇庁の文化交流のはじまりをお手伝いさせていただけることは、私にとってこの上ないよろこびです。教皇聖下は、日本政府と日本キリスト教会に招待されて、よろこびとあわれみの福音の使者として、そして平和と希望を広めるためにいらっしゃいます。

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 文化とは、人々の叡智の表現であり、そこに国境はありません。日本には豊かな文化的遺産があり、それを保持しながら他と共有しようという姿勢があります。日本と教皇庁の友好的な関係は、数百年もの歴史があるのです――天正遣欧少年使節と慶長遣欧使節が、西洋へ、バチカンへ送られたのは、1582年と1613年のことでした。

 角川文化振興財団の角川理事長は、100年プロジェクトについて「途切れない縁の歴史」だとおっしゃいました。実際、今年の11月は、日本と教皇庁との交流が始まってから100年目であり、外交上の関係が始まってからは77年目という、記念の月となっています。私はこのたびの教皇のご訪問が、アジアのすべての人々に平和をもたらし、そして日本と教皇庁との友好関係をさらに深く強いものにすることを心から願っております。”

■バチカンと日本の文化交流を深めるプロジェクトの内容は?

【バチカンと日本の交流】

©Apostolic Vatican Library

 バチカンと日本の交流の歴史は、大航海時代におけるキリスト教伝来とキリシタン文化の時代に始まり、今日までに400年を超える。その後、潜伏キリシタンと呼ばれる時期があり、明治初めの長崎における奇跡の「信徒発見」に至る。さらに100年前の1919年、日本にローマ教皇庁使節館が設置され、1942年には両国の正式な国交が結ばれ、現在まで深い交流が続いている。

 バチカン図書館やバチカン機密文書館には、長い歴史の中で蓄積された、日本に関するさまざまな資料が残されており、このプロジェクトは今回その包括的な調査と研究に挑戦する。また、研究成果を公開するシンポジウムをはじめ、両国の友好関係のさらなる発展に寄与したいと願い、その他にもいくつかの企画を展開する。それらをひとつのプロジェクトとして、東京2020オリンピック・パラリンピックの開催時期に合わせ、推進する。

【長崎と東京での公開シンポジウム】

©Apostolic Vatican Library

 バチカンに残る資料を現地において調査研究し、その成果を広く一般に発表するために長崎と東京でシンポジウムを開催。バチカン図書館やバチカン機密文書館には、日本に関する宣教師の報告、キリシタン関係や遣欧使節の資料、近代のローマ教皇庁と日本政府の外交関係資料などが存在し、その中には調査や研究の及んでいない文献も含まれている。シンポジウムの第1回目は2020年6月27日長崎県の長崎ブリックホール、第2回目は同年の11月14日に東京、上智大学で開催し、さまざまな研究成果を広く一般に公開する。

【カラヴァッジョ《キリストの埋葬》展(仮称)】

 2020年10月21日から11月30日まで、東京の国立新美術館で「カラヴァッジョ《キリストの埋葬》展(仮称)」が開催される。日本でも関心の高いカラヴァッジョの作品《キリストの埋葬》は、カラヴァッジョの傑作のひとつであり、バチカン美術館を代表する名品といえる。展覧会は本作を中心に、作品が描かれた歴史的な背景の説明とともに、カラヴァッジョの傑作を大きな視点から見直すことができる内容となる予定だ。

【文化庁「日本博」の事業】

 本プロジェクトは、文化庁が取り組んでいる「日本博」における助成事業のひとつとして採択されている。「日本博」は総合テーマ「日本人と自然」の下、日本全国で日本の文化芸術に流れる「日本の美」を国内外へ発信し、次世代に伝えることで更なる未来の創成を目指す文化芸術の祭典。そのプロジェクトのひとつとして、長崎県、長崎市とパートナーシップを結び、日本におけるキリスト教文化を世界中に発信する取り組みを実施する。長崎は、世界遺産に登録された潜伏キリシタン関連遺産をはじめ、バチカンとキリシタン文化に深い関係をもっている。

【関連書籍の出版】

 今回の教皇の来日を機に、KADOKAWAからフランシスコ教皇の御著書『「幸福」と「人生の意味」について』、中村玲子さんのエッセイ『ローマ教皇 食の旅』、竹下節子さんの『ローマ法王』が刊行される。また、今後はシンポジウムの成果なども書籍にまとめられる予定だ。

■ジャン=クロード・オロリッシュ枢機卿が語る!「日本や世界はもっと深い文化交流が必要」

ジャン=クロード・オロリッシュ枢機卿(ルクセンブルク大司教)

 オロリッシュ枢機卿は、次のように語った。「バチカンと日本 100年プロジェクトはとても素晴らしいプロジェクト。今の日本は、もっと他の世界との交流を深めなければならない。歴史と現在の時代を見て、深い文化交流を行うことが、本物のグローバル化の基本ではないか。それを日本が必要とすること、西洋も必要とすること。世界には自分たちが世界の中心と思っている人がまだ多い。もうそういう時代は終わった。大切なのは、アメリカやロシアや中国やヨーロッパなどが中心になることではなく、マイノリティが中心になることだ」。

 さらに、「その中で、自分のアイデンティティが大切。アイデンティティとはいつもオープンなものであり、対話するもの。文化交流をもつことによって、自分のアイデンティティを強くしていける。ヨーロッパやキリスト教も日本の文化から学べる点がたくさんある。交流とは、バチカンやヨーロッパが素晴らしいということではなく、交流するということが大切。宗教対話、世界の平和、環境の為に、私たちはもっと頑張らなければならない。ローマ教皇もそれを大切にしていらっしゃる。本物のグローバルな課題はひとつの宗教やひとつの国ではできない。それには本物のグローバル化が必要。ローマ教皇の訪日もそういう意味合いを持っている。」と続け、今回の教皇来日の意味と本プロジェクトへの期待を述べた。

■今後のスケジュール

◎シンポジウム

・公開シンポジウム 長崎会場
日時:2020年6月27日(土)10:00開場~17:00終了予定
会場:長崎ブリックホール 〒852-8104 長崎市茂里町2-38
主催:角川文化振興財団
共催:朝日新聞社
協賛:NTTデータ、凸版印刷、みずほ銀行、KADOKAWA
後援:長崎県、長崎市、学校法人上智学院 カトリック・イエズス会センター
助成:日本博イノベーション型プロジェクト

・公開シンポジウム 東京会場
日時:2020年11月14日(土)10:00開場~17:00終了予定
会場:上智大学 ソフィアタワー(6号館) 〒102-8554 東京都千代田区紀尾井町7-1(予定)
主催:角川文化振興財団
共催:朝日新聞社
協賛:NTTデータ、凸版印刷、みずほ銀行、KADOKAWA
後援:学校法人上智学院 カトリック・イエズス会センター、長崎県、長崎市
助成:日本博イノベーション型プロジェクト

◎展覧会

カラヴァッジョ《キリストの埋葬》FOTO © GOVERNATORATO SCV – DIREZIONE MUSEI VATICANI

・「カラヴァッジョ≪キリストの埋葬≫展(仮称)」
会期:2020年10月21日(水)~11月30日(月)
会場:国立新美術館 企画展示室2E
   〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2
主催:国立新美術館、バチカン美術館、
角川文化振興財団、朝日新聞社、TBSグロウディア
後援:教皇庁文化評議会、カトリック中央協議会、
イタリア大使館、イタリア文化会館
協賛:NTTデータ、凸版印刷、みずほ銀行、KADOKAWA
助成:日本博イノベーション型プロジェクト

◎書籍刊行

2021年 シンポジウムをまとめた書籍を刊行

■このプロジェクトについて【バチカンと日本のヴェールに包まれた歴史の交流、その解明の扉がいま開かれる―100年プロジェクト】

■プロジェクト代表
公益財団法人 角川文化振興財団

■プロジェクト・パートナー
朝日新聞社

■協賛
NTTデータ、凸版印刷、みずほ銀行、KADOKAWA

■後援
教皇庁文化評議会、カトリック中央協議会

■助成
日本博イノベーション型プロジェクト

■バチカンと日本 100年プロジェクト 公式サイト
https://vj100.jp