「忙しい」を言いかえるなら? ダメ営業をトップ営業に変えた「言いかえ」テク
更新日:2019/11/29
仕事にしろプライベートにしろ、他人との会話は必要不可欠だ。しかし、気をつけなければならないのは、さりげない言葉の選び方。ふとした一言がきっかけとなり、相手からの信頼を失ったり、何らかのチャンスを逃してしまうこともありうる。
書籍『一瞬で「信頼される人」になる! できる大人のことばの選び方』(松本秀男/青春出版社)は、言葉の選び方ひとつで、人生を向上させる方法を教えてくれる1冊。この本を読めばきっと、毎日の生活が上手く回り始めるはずだ。
■「すみません」を「ありがとう」に換えて出世街道へ
本書の著者はかつて、歌手・さだまさしの制作担当マネージャーも務めていた。音楽活動を支えていたが、その後、家業であった足立区のガソリンスタンド経営を継いだのちに、45歳で外資系損害保険会社の契約社員として営業職へ転身した。
しかし、営業マンになりたての頃は、とにかく「ダメ営業」だったと自虐的に振り返る。
始めた当時は「1日70件まわっても契約はゼロ」の日が続き、歩合となる月の手数料収入が2000円のときも。運よく契約までこぎつけても、最初の半年間は「お客さまに怒られる、場合によっては怒鳴られる、クレームが起こる」と失敗の連続でだいぶ苦労していたという。
そんなある日、著者が活路を見出したのが、言葉の選び方を工夫することだった。
きっかけは、同僚の電話をたまたま耳にしたことだった。著者は、自分と同じくどこか「楽しくない状態」で仕事をしていた同僚が、電話越しに「すみません」を連呼していたことに気が付いた。そして、反面教師である彼をみて、自分の口癖をいま一度見つめ直した著者は「すみません」の響き自体により「きっと『すみません』なシチュエーション」が生まれると悟った。
そこから著者は「すみません」を「ありがとう」へ置き換えていった。すると不思議にも客からの笑顔が増えて、クレームが減っていった。さらに、相乗効果で自分の失敗も減り、仕事が心から楽しくなる「好循環」も生まれていったという。
その後、日頃のちょっとした習慣を見直した著者は、気が付けばトップ営業マンにまで登り詰めて本社へ栄転。さらに、社内で「社長賞」をもらうまでに出世していったそうだが、ささいなきっかけから物事は好転するというのが、何とも伝わるエピソードである。
■今日から試してみたい「言いかえ」の事例
日頃の「小さな言葉選び」が「大きな変化」を生み出すと述べる著者。本書で紹介している「言いかえ」の事例から、いくつかを取り上げてみたい。
1)「忙しい」→「ヒマでヒマで」
相手が「忙しい?」と聞いてくるときに、「ええ、ほんと忙しくて…もうたいへんで…」とアピールするのは、じつは逆効果にもなりうる。なぜならば、余裕がないと思われる可能性があるからだ。それならばと著者がすすめるのは「いやいや、ヒマでヒマで!」という返し方。そうすると場が和んで相手との距離が近くなるほか、自分自身にも余裕が生まれてくる。
2)「違うだろう!」→「そうくるか!」
もし自分に部下や後輩がいるのなら、何かをしでかしたときに頭ごなしに叱り付けるのではなく「そうくるか!」「そうきたか!」「そっちか!」と言うべきだと、著者は述べる。そして、接するときに心がけておいてほしいのは、上下関係ではなく、斜め上や横から相手と向き合うこと。「相手の行動や考えや気持ちを大切にすること」ができれば、自分も怒りのガス抜きをしながら、冷静に注意や指示をし直せるメリットもある。
3)「好きになれない」→「キライじゃない」
人間多かれ少なかれ、相手の行動や考え方が気にくわない場面もある。しかし、職場を共にする同僚や友人間では、ハッキリと「キライだ!」と主張できないときもあるはずだ。そんなときに著者がすすめるのは、あえて「キライじゃない」と言ってみる方法。相手の一切を否定したくない程度で「多少キライかな? でもそこまでキライじゃないな」と心が揺らぐようであれば、言いかえてみることでたがいのスタートラインをもう一度引き直してみるのも必要だ。
本書ではこのほかにも、著者の経験にもとづくたくさんの「言いかえ」の事例が紹介されている。コミュニケーションの方法をちょっとだけ工夫すれば、仕事やプライベートなどのあらゆる面で、周囲の人たちとよりよい関係を築けるはずである。
文=カネコシュウヘイ