うつの怖さは「他人事ではない」こと。つらいうつから抜ける「1日3分」のコツって?
公開日:2019/12/2
“最近、やる気が出ない”“もしかしてうつかもしれない”というつらい日々から抜けるために、身近にできる対策を知りたい――そう考える人たちへおすすめしたい1冊が、みずからも長期にわたるうつ病を克服した“うつ専門メンタルコーチ”がまとめた『1日3分でうつをやめる。』(川本義巳/扶桑社)です。
著者が提案するのは、たった3分で行うことができる“うつから抜ける”ために役立つ独自のプログラム。紙とペンさえあれば誰でもできるので、今抱えているモヤモヤを晴らすのにきっと役立つはず。これまで1万人が実践してきたという“お墨付き”メソッドです。
■うつは他人事じゃない。なりやすい人の行動パターンは…
かつて多忙をきっかけにうつ病となり、やがて克服した著者の川本さん。みずからの体験をやさしく語る一方で、これまでに多くの人たちが立ち直ることをサポートしてきた経験から、うつになりやすい人たちの共通点を挙げています。
著者は今まで接してきた“うつの人たち”を分析して、「うつになりやすい人の共通点」を見つけたそうです。例えば、日常の習慣でいえば「外食のメニューがパターン化している」もそのひとつ。これは、うつのきっかけにもなりうる、変化への対応力の弱さの表れだそう。他にも、「仕事を頼まれると、まずできない言い訳を考えてしまう」「寝る前に反省をしている」など、本書にある一覧をみると、うつはけっして “他人事ではない”と思えてきます。
さらに著者は、うつになりやすい人の共通点として「絶対的安心感」の欠如を挙げます。本書によると、これは「赤ちゃんのころは誰もが持っていた“自分は絶対に守られているのだ”という感覚」です。うつにならないためには、何か大変なことがあったときにも、心のどこかで「自分はそんなに悪くない、大丈夫だ」と思えるような余裕を持つことが大切だそうです。
■克服プログラムに取り組む前に、「下準備とリハーサル」をしよう
本書の軸になっているのは、うつ克服のための「メンタル・リセット・プログラム」。ネガティブな状態の人をポジティブにするという、その概要を紹介していきましょう。
ネガティブになったときに実践すると気持ちがフッと楽になる。また日常的に行うと「滅多なことでは落ち込まない人になれる」効果があるそうです。このプログラムは前述の「絶対的安心感」を補填してくれるからうつ克服に効くのだといいます。
初めは簡単な「下準備」から。まず、紙とペンを用意して「自分のできること」を最低30個書き出します。内容は「歩ける」「挨拶ができる」といった子供でもできる単純なことでOK。とにかく思いつくまま書いてみましょう。そしてもうひとつ、今の自分が「好きな○○」を以下のように書き出します。
・好きなこと(趣味・行動など)
・好きなもの(食べ物・持ち物など)
・好きな人(実在・架空を問わない)
・好きな場所(日常的な場所・旅行先など)
ここまで済んだら、次にやるのは「リハーサル」。先ほどとは別の紙を用意し、左側に「自分の欠点」を書き出します。続いて、右側に「こういう見方をすれば、その欠点が長所になる」という言い換えを書いていくのです。たとえば、欠点「気が弱い」→長所「慎重だ」などと言い換えます。
欠点と長所をそれぞれ書き終えたら、今度は上から一つひとつ「私は××(欠点)だ。いや違う、○○(長所)なんだ」というルールで読み上げていきます。「私は気が弱い、いや違う、慎重なんだ」といった具合です。
このとき「いや違う!」と否定する場面では椅子から立ち上がるのがいいそう。ネガティブな思考や感情に対して“NO!”を突きつける感覚を養う役割があるからです。
■止める・増やす・変えるで克服プログラムを実践
下準備とリハーサルが済んだら、いよいよ本番の「メンタル・リセット・プログラム」へ。
おおまかな流れは「ネガティブを止める」「ポジティブを増やす」「思考のクセを変える」というもの。初めにまず、呼吸を整えてから、今いる場所にあるものをそれぞれのディテールまで観察していきます。同時に、耳で聞こえている音や声、体で味わっている感覚に意識を集中させれば、第1段階である「ネガティブを止める」は完了。1分もかかりません。
実際にやってみると、直前までとらわれていたモヤモヤした気持ちがすっきりしていることに気づくはずです。
続いては、第2段階の「ポジティブを増やす」。先ほどの「下準備」で用意した「自分のできること」リストを眺め、その後同じように「好きな○○」リストを見るだけ。いずれも自分にとってワクワクする内容なので、メンタルの安定や向上が見込めるといいます。
そして、最後の段階が、「思考のクセを変える」。
“今、自分の中にあるネガティブな思考や感情”をポジティブに言い換えるだけ。リハーサルで「いや、違う!」と言い換えたときの感覚を思い出せればOKです。
この3ステップを実践すれば、1カ月半程度で「あまり落ち込まなくなった」と効果を実感できるそう。ただし毎日義務的に続ける必要はなく、できた日は“私ってすごい”と自分を褒め、できなかった日は“人間だもの”と考えて流す、“ゆるさ”が大事だとか。
もし、あなたが最近落ち込んでいて、「でも頑張ればなんとかなるかも…」と無理をし続けていたら、立ち止まって考えてみるのがよさそう。少しでもおかしいと感じたら、まず本書を手にとって自分の状態をチェックしてみるのもひとつの対策です。
文=青山悠