こたつの温もりが沁みる! 冬にゾッと効く怪談。ビデオ通話越しに見てしまったヤバイもの

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公開日:2019/11/30

『うわさの怪談』(吉田悠軌/三笠書房)

 背筋の凍るような怪談や怖い話。夏の風物詩と思われがちだが、肌寒くなってきたこの季節にこそ、こたつやストーブの温かみをより味わうために読んでみるのもまた一興かもしれない。

『うわさの怪談』(吉田悠軌/三笠書房)は、人から人へと伝えられてきたという50篇以上の怪談を紹介する1冊。ときに尻切れトンボだが余韻が尾を引くようなエピソードの数々は、ときに耳元で語りかけているような訥々とした口調で、私たちを怪しい世界へと引き込んでくれる――。

■ビデオ通話中に不機嫌になった同級生。なぜ?

 異界への扉は、ひょっとするとすぐ間近にあるのかもしれない。辺りが寝静まった深夜0時、受験勉強の息抜きにと友だちとのビデオ通話をしていたリコさん(仮名)も、不思議な体験をしたひとりだ。

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 ビデオ通話の相手は同級生のA子さん。他愛ない会話を続けていたふたりであったが、ある瞬間にふと、リコさんはA子さんの表情が何やらおかしいと気が付いた。自分は笑っているはずなのに、画面越しのA子さんはどうも怪訝な表情を浮かべている。

 その反応をみて、たがいに受験生でありながら深夜に電話してしまったと申し訳なさを感じたリコさんは「遅い時間なのに、つい夢中になっちゃって…」と謝った。しかし、A子さんからは「いや、なんか悪いし…」と意外な反応が返ってきた。思わぬ答えに「え?」と、ややたじろいだリコさん。その後、A子さんは「お邪魔でしょ」と話すと、おもむろに通話を切ってしまった。

■リコさんが後で知った、凍りつくような真相は!?

 当時は夏休み期間中だったが、その後しばらくリコさんはA子さんへ連絡を取れずにいた。A子さんが残した「お邪魔でしょ」という、不可解な言葉へのモヤモヤを残したままのリコさんであったが、その真相が分かったのは夏休みが明けてから、始業式の日だった。

 リコさんが教室に入ると、通話相手であったA子さんの机には何人かの女子が集まっていた。その光景に気まずさをおぼえたリコさんだったが、そっと近付いてきた同級生のひとりが「リコ、聞いたよ! あれはないよ!」とつっかかってきた。

 たじろぐリコさんに対して、なおも「あー聞いた! リコちゃんひどいよね」と囃し立ててくる同級生たち。状況が分からぬまま「え?」と聞き返したリコさんに対して、そのうちのひとりは「何とぼけてるのよ、Aちゃんに男、自慢したんでしょ!」とまくし立ててきた。

 まったく身に覚えのない一言に「男? 男って何?」とリコさんが返すと、A子さんはにらみながら「彼氏が、ずっとリコちゃんの後ろにいたでしょ!」と叫んだ。彼女の話によると、どうやらビデオ通話をしていた画面越しで、リコさんの後ろにずっと長い髪を下ろした男が立っていたというのだ。

 衝撃の真相を知ったリコさんがどう反応したのか、本書では語られていない。ただ少なくとも、A子さんが、ゆっくりとカメラの方へ近づき後ろから甘えるように手を添えながら、リコさんの肩に頭を乗せてユサユサと動き出した男を見たのは事実だったという…。

 さて、今回の記事で紹介したのはごく一部。本書に掲載されているエピソードはどれも、身近な“誰か”が経験した話ばかりだ。はたして本当にあった話なのかどうかと、いらぬ想像をかき立ててくれるのが怪談の魅力。そして、気になった話をまたほかの誰かにと、語り継いでいきたくなるのも独特のおもしろさだろう。

文=カネコシュウヘイ