HSP=繊細さんが上手に人を「キライ」になるには。繊細さんがわがままに生きて人間関係を整えられる方法

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更新日:2020/12/12

『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる「繊細さん」の本』(武田友紀/飛鳥新社)

「相手の気持ちを考えすぎて自分の意見を言えない」「冗談交じりのささいな一言を受け流せずにグサッときてしまう」「定時で帰れる簡単な仕事でさえぐったり疲れてしまう」。こんなエピソードが当てはまる人は、「繊細さん」かも…。

「繊細さん」とは、日本で数少ないHSP専門カウンセラーである武田友紀さんが、自身もHSPであることから、HSPの人に親しみをこめた呼び方である。

 HSPとは、周囲の刺激に反応しやすく、小さなことが気になってしまう気質を生まれつき持っている人たちのことで、5人に1人はいると言われる。武田さんが、繊細すぎて傷ついている人や、自信をなくしている人を元気にしたいという想いから書き下ろしたのが、『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる「繊細さん」の本』(飛鳥新社)だ。SNSなどで話題になり、7万部を超えるベストセラーとなっている。

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 武田さんは、繊細なことは決して悪いことではなく、長所に変えられるのだと語る。そのことに気づき、叶えたのが武田さん自身で、そのエピソードが本書でも語られている。そんな武田さんに続くにはまず、繊細すぎるためにかき消されてしまいがちな自分の心の声に気づくことが大事だという。

■繊細さんの特徴って?

 感じる力が強い繊細さんは、自分にとって「いいもの」だけでなく、「痛い・つらいもの」もキャッチしてしまう。だからこそ、まわりの人たちに気を使うし、世の中のルールを守ろうとする。厄介なのは「いいもの」と「痛いもの」を同時に感じとった場合、生き物として危険を避けるために「痛いもの」に意識が向いてしまうことだ。

■SNSで苦手な人にも友達申請をしていませんか?

 たとえば、SNSで苦手な相手にも積極的に友達申請をしたり、メールでニコニコした顔文字を送ったりしていないだろうか。これは、自分にとって「つらそうなもの」を意識しすぎてしまったために出た行動である。「みんなと仲良くするのはいいこと」という世間の声をそのまま受けとり、「キライ」を封じ込めていることも理由のひとつだ。人のことを嫌ってはいけないのだと感じ、苦手な相手ほど「いい関係を築かなければ」と考えてしまうから、そのような行動に出てしまう。

■キライな人がいるのは悪いことではない

 そもそも「キライな人」とは、自分に不利益をもたらす可能性がある人のことで、「キライ」を感じとることは生きるためにも大切なセンサー。それを封じ込めてしまうと、イヤなことをされても相手から遠ざかれない状態に自分を追い込んでしまう。そして案の定、問題が起きて傷つくことに…。

 こうなる前に、「なんか合わない」と思った相手には不用意に近づかず、しばらく様子を見るのが得策だ。きっとその人の前には気の合う人が現れるはずで、気の合わない人とは接触しないことがお互いのため。繊細さんは感じる力が強いゆえに、「合わなそう」と感じる第一印象が的中することが多い。その直感を信じてもいいのだと著者は語る。

■年末の飲み会に気乗りしないなら「今日は行けない」の一言を

 繊細さんにとって、年末に増える飲み会は悩みのタネ。「誰が楽しんで、誰が無理をして笑っているか」「全員に料理が取り分けられているか」など多くのことを受け取ってしまうために、とても疲れやすいのだ。

 誰しも受けとる刺激の量には許容量がある。たとえ親しい相手でもずっと一緒にいては刺激が多すぎるし、ましてや気を使う場所や苦手な相手といると刺激過多になる。

 人づきあいに疲れた時、繊細さんに必要なのはひとりでゆっくりと心を休める時間だ。十分に休み、受け止めすぎた刺激を流すことで、自分らしい穏やかさや明るさを取り戻せる。そこで初めて、誰かと一緒にワイワイ話したいという気持ちが生まれてくるという。

■今の自分は、本当の自分だろうか?

 繊細さんには、「自分には意見がない」「軸がない」と考える人が多いそうだが、本当にそうだろうか。相手のニーズに応えなければと思うあまり、自分の意見を奥のほうに押し込んでいないだろうか。そのまま本音を出せずに殻をかぶっていると、その“殻”に合う人がまわりに集まってきてしまい、ますます息苦しい状態になってしまう。

 そんな時は、今している行動が自分の想いとは違うことに気づき、そうではなく、「こうしたい」という思いに沿って行動することだ。素の自分を出せば出すほど、本当は合わない人たちが去り、気の合う人がまわりに集まって、あたたかい人間関係が出来上がっていく。

 自分の本音がわからないという人は、「◯◯するべき」と感じることは他人に流されているし、「◯◯したい」と思えたら本音だということを基準にするといい。「転職したい」などの大きな悩みを解決するには時間がかかるため、まずは「あの人に会いたくない」「もう少し休みたい」という小さな望みから、少しずつ叶えていくことが大切だ。

 今まで自分の意見だと信じてきた考えや常識が、じつは周りに流されていたのだと気づかされる本書。もっと本音で生きられたら、自分に合う人や仕事にめぐりあい、人生はもっと生きやすくなるかもしれない。繊細さんには、繊細さんにしかわからない悩みがあり、長所がある。だからこそ、同じ繊細さんである武田さんの言葉に耳を傾けてみてほしい。繊細さんはもっとわがままに生きてもいい、という著者の言葉に勇気づけられる。

文=吉田有希