国際結婚したら「ざんねんな嫁」に? カルチャーショックの毎日をコミカルに描いたコミックエッセイ
公開日:2019/12/10
たとえその期間が1週間程度であっても、海外旅行はとてつもない刺激を与えてくれるものだ。文化や生活習慣が違えば、当然その国に住む人たちの価値観も違う。もしそれが、移住ともなれば、カルチャーショックは数えきれないほどの量になるだろう。
ホリー亜紀著『外国でざんねんな嫁扱いされる日本人』(竹書房)は、そんな海外でのおかしな日々をユーモラスに描いたコミックエッセイだ。
著者のホリーさんはスコットランド人の夫と結婚し、海外生活17年。2002年に渡英し、今はスコットランドの片田舎で、娘のチハナとモモカ、夫ダッダと4人で暮らしている。
ヨーロッパでは馴染みのない蒙古斑をもって生まれたモモカを見て、義母から「つねったの?」と虐待を疑われたり、音をたてて蕎麦をすすると「行儀が悪い」と夫に怒られたり、「ママの英語聞いてたらイライラするよ」と娘に怒られたり、とにかく「ざんねんな嫁(母)」扱いされる著者。
異国の地での生活はカルチャーショックの連続であり、小テストの点数の付け方(英国では○が不正解の意)や成績表の評価の付け方(4段階評価で1が一番いい評価)、眼科の視力検査表のアルファベット表記(日本ではランドルト環が主流)など、実際にその地で暮らしているからこその小さな驚きの連続がネタとして描かれている。
また、文化の違いのみならず、出てくる登場人物のキャラも濃い。夫のダッダはとにかく自分磨きに余念がなく、週7で朝夕2回は走り筋トレもかかさない自分大好き人間。おまけに少し子供っぽいところがあり、たとえばコーヒーをこぼしても「ワタシの責任デハアリマセン 勝手にテーブルクロスが動いたんデス」と無理やりすぎる言い訳でごまかそうとしてくる。これは国の違いに限らず、日本で暮らしている女性でも「ダメ夫」的なエピソードで共感できる部分は多くあると思う。
義母のグラニーは日本の文化に触れるたびに新鮮に驚く。折り紙やあやとり、紙の着せ替え人形など日本の伝統的な遊びに触れる著者の娘たちを見て、「でもこっちにはちゃんとした着せ替え人形が売ってるから今度買ってきてあげるわね」と不憫そうな眼差しを向けてきたりする。
文化の違いは日常の至るところにあり、著者はことあるごとに「ざんねんな嫁」扱いされてしまう。そんな彼女に同情しつつ、どれもコミカルな描写でついつい笑ってしまう。また、海外で暮らしているからこその日常的な豆知識も興味深い。
ネタとして描かれているエピソードはどれも理不尽なことだらけなのだが(美容師に誤って耳を切られたのに逆ギレされたり、お札を出したらお店の店員にキレられたり、家族以外にも驚くような出来事は山ほどある)。夫のダッダや義母のグラニーも含め、そこに出てくる人たちはどこか憎めない愛嬌のようなものがある。むしろ、彼らのおおらかな感性や、ちょっと能天気なところは羨ましいくらいだ。
17年暮らしていても完全には外国での生活に馴染んでいないという著者。しかし、多くの不条理な出来事もクールに面白ネタにできてしまうのはたくましい。なんだか読んでいるだけでこちらも気力が湧いてくるような、不思議なギャグ漫画だ。
文=園田もなか