30年後、世界から「コーヒー」がなくなったとしたら!? コーヒーを取り巻くリアルを綴る一冊が登場

食・料理

公開日:2019/12/17

『世界からコーヒーがなくなるまえに』(ペトリ・レッパネン、ラリ・サロマー:著、セルボ貴子:訳/青土社)

 コーヒーの実は赤い。コーヒーの生豆は最初、表面を赤い果肉に覆われて実るのだ。これを「コーヒーチェリー」と呼ぶ。コーヒー農場では、緑の木々が一面に広がり、控えめな白い花が咲き、そして赤いコーヒーチェリーが実る。

『世界からコーヒーがなくなるまえに』(ペトリ・レッパネン、ラリ・サロマー:著、セルボ貴子:訳/青土社)の表紙を見れば、コーヒーがどのような木として生え、実っているかが一目瞭然だ。著者のラリ・サロマーさんはコーヒー業界、ペトリ・レッパネンさんは出版業界で仕事をしている。だからこそ、コーヒーの栽培から、気候変動や労働問題、経済まで射程の長い世界を見せることを、本書で実現させた。

 そもそもコーヒーが植物であることを、忘れてしまっていることはないだろうか。僕たちの生活に、コーヒーは当たり前なほどに溶け込んでいる。僕は毎朝、豆を挽いて、ブラックコーヒーを飲む。コーヒーを飲まないと、1日が始まった感じがしない。次第に、豆に興味が湧いた。豆はどこから来ているのだろう。作られた国はわかる。しかし具体的にどんな地域で、どんな農家が作っているのか。彼らはどのような生活をしているのだろうか。そしてどのように輸送され、誰が焙煎し、今ここに豆があるのだろう。一杯のコーヒーから、世界へと想像が膨らんでいく興味を、本書は満たしてくれる。

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 朝の一杯について知るには、まず流行の「サード・ウェーブ」(第3の波)について理解するのが良い。それは「原料としてのコーヒーに注目し、栽培された地域、コーヒー豆の収穫方法、そして焙煎のもたらす味への影響といった様々な点に注意を払う」という動きだ。

 まず第1の波は“コーヒーの消費量を増やそう”という動きだった。そして、第2の波は“カフェラテなどの「アレンジ・コーヒー」が定着し、より質の良い豆からコーヒーが楽しまれるようになった”ことを指す。

 本書によると、30年後にコーヒーは存在しなくなっているという未来予想図を描いている人もいるそうだ。「サード・ウェーブ」が流行する中、コーヒーの消費量が多い国・日本にいる僕たちは、コーヒーをどう考えればいいのだろうか。

 コーヒーで生計を立てている人は、世界で1億2500万人いる。ICO(世界コーヒー機関)によると、コーヒー世界5大生産国はブラジル、ベトナム、コロンビア、インドネシア、そしてエチオピアである。これらの国々をはじめとしたコーヒー生産国の中には、経済がコーヒー栽培に依存している国も複数ある。無関心ではいられなくなってくる。

 本書は、僕たちの一杯のコーヒーに深みをもたらしてくれる本だ。

文=えんどーこーた