『ONE PIECE』に迫る勢い! 女子小学生が夢中の漫画『ねこねこ日本史』は、卑弥呼も坂本龍馬もみんな猫! 2020年2月に映画も公開
更新日:2019/12/13
史実の人物を猫に見立てて歴史を語る、100万部突破の4コマ漫画シリーズ『ねこねこ日本史』(そにしけんじ/実業之日本社)。NHK Eテレでアニメ版も放送されるなか、2020年2月22日(猫の日)に映画化の決まった同作は、約600人の児童を対象にしたビデオリサーチの調査によると小学生の女子は約6割、男子は約5割が知っていて好感度も極めて高いという人気作。
約300人を対象に行った『月刊ポピー6年生版』の「好きなマンガ・アニメ」アンケートでも1位『名探偵コナン』、2位『ドラえもん』、3位『ONE PIECE』というビッグタイトルに次いで4位が『ねこねこ日本史』。
大人は知らない隠れた人気の本作はタイトルどおり日本史を「ねこ」に変換した4コマ漫画形式の作品で、登場する歴史上の人物は全員、猫。卑弥呼も織田信長も坂本龍馬もみんな猫。ひなたで太陽にあたっていると戦の最中でも寝ちゃうし、城を攻めるときは爪をたててバリバリかくし、と猫ならではのコミカルな描写に笑わされる一方、ゆるさがありつつも巧妙に史実とつじつまをあわせているからすごい。
小学生人気の理由としては、読売KODOMO新聞で番外編にあたる『ねこねこ日本史 ヒーロー&ヒロイン列伝』が連載中なのも大きいだろうが、子供というのは正直なもので、本当におもしろいと思わなければ支持しない。今年2月、同紙で発表されたキャラクターの人気投票企画「ねこねこグニャンプリ」には285名からキャラへの思いをつづった熱烈な投票はがきが集まり、1位新選組、2位卑弥呼、3位真田幸村という結果に。1位と3位はもともと歴史ファンから人気だが、2位の卑弥呼というのが女子小学生ファンが多いこの作品ならではという感じがする。なぜなら1巻の最初に登場するこの卑弥呼(猫)、とにかくかわいいのである。
ねこじゃらしの呪術で争いを止めようとする猫卑弥呼の動きもかわいいし、魏からもらった金印を「何コレ?」と軽く扱うしぐさもかわいい。価値がわからないまま、とりあえず大切なものだからと地面に埋めて(猫だから)、こうして金印は紛失したのです、という流れもいい。「あー、だったらしょうがないよね」と妙に納得してしまうし、もしかしたら実在の卑弥呼も同じように、なんだかよくわからないままとりあえずしまって忘れていたってこともありうるのでは? と思わされてしまう。そんな謎の説得力が本作にはあるのである。
個人的に唸ったのが徳川綱吉の生類憐れみの令(ちなみに綱吉は22位)。世継ぎがなかなかできない綱吉のため助言を求められ、へたなことを言っては殺される……と絶対実践できなそうなことを口にした僧侶・隆光。それが「犬を大事にすること」。そりゃ猫だもの、犬は大事にできないよね……という前提が、綱吉の無茶ぶりを際立たせる。でもこれも実際、本作に描かれるのと同じくらい一般市民には理不尽だったんだろうなあとなぜか現実と重ねて納得してしまうから不思議だ。しかも続く大石内蔵助編では、吉良上野介が実は犬だったとし、彼が優遇されたのは生類憐れみの令がしかれていたからという伏線回収。うまい……!
ときに猫以外の動物も登場しながら、2巻以降も歴史を解説していく(ちなみに井伊直虎は虎で、豊臣秀吉は猿。芹沢鴨はもちろん鴨だ)。ほのぼの和みながら読むせいか、そして政権の思惑や人々の感情をデフォルメしているせいか、話の流れは非常に理解しやすく、戦国時代の様相も外交の問題も教科書を読むよりするりと頭に入ってくる。歴史の流れではなく人物に焦点をあててエピソードごとに語っているのも大きいだろう。忘れていた日本史の流れが呼び覚まされ、解説とセットに読むと非常に勉強になる。特に7~9歳の女子からの人気が高いというから、やはり「楽しく学べる」というのは最強の娯楽なのだなあと思う。アニメが3年以上続いているのも映画化するのも納得だし、歴史=暗記と思っている大人たちにもぜひともおすすめしたくなる歴史マンガである。
文=立花もも