『うる星やつら』『クリィミーマミ』『きまぐれオレンジ☆ロード』が生んだアニメの新潮流! ぴえろの40年を振り返る

マンガ

公開日:2019/12/19

『ぴえろ大解剖』(三栄書房)

 アニメが好きという人ならば、アニメ制作会社「スタジオぴえろ」(現・株式会社ぴえろ)を知らない人はいないだろう。『うる星やつら』『NARUTO-ナルト-』『おそ松さん』など、男女問わず多くのファンを熱狂させたヒット作品を次々と生み出してきたのだから。そんな「ぴえろ」は、2019年をもって誕生から40周年を迎えた。この記念すべきタイミングに、ぴえろの名を広く知らしめた1980年代の代表作を特集した『ぴえろ大解剖』(三栄書房)が発売された。

 本書でメインに取り上げられているのは『うる星やつら』(1981年)『魔法の天使 クリィミーマミ』(1983年)『きまぐれオレンジ☆ロード』(1987年)の3作品。もちろん、いずれも大きな話題を呼んだヒット作ではあるが、この顔ぶれが選ばれたのには他にもワケがある。それはこの3作品が、ぴえろに大きな飛躍をもたらした画期的な作品だったからだ。では、ぴえろにとってこの3作品はどのような意味を持っていたのか、作品ごとに見てみよう。

■『うる星やつら』(1981年)

『うる星やつら』は、現在も新作漫画を意欲的に描き続けるレジェンド漫画家・高橋留美子先生の初期代表作。それを原作として、ぴえろにアニメ化のオファーがあったのだ。

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 実はこの時期、アニメは現在よりももっと「子どものもの」というイメージが強かった。そのためアニメのほとんどは夕方の時間帯に放送されていたのだが、この『うる星やつら』はなんとフジテレビの19時30分(一部地域除く)というゴールデンタイム。ぴえろ創設者のひとりで、現・最高顧問の布川ゆうじ氏は、本書のインタビューで「これまでと違う視聴者、ターゲットがアニメの中心になる。そんな何かムーブメントのようなものを起こしたのは、あの作品だと思うんですよね」と語る。

 作品は大ヒットし、それを支えたのは中学生や高校生を含めた「ヤングアダルト」世代であった。アニメを「子どもが観るもの」から「大人も楽しめるもの」へと転換した、現代のアニメシーンの先駆けというべき作品になったのである。

■『魔法の天使 クリィミーマミ』(1983年)

 ぴえろ初の、原作のない「オリジナル作品」として制作されたのが『魔法の天使 クリィミーマミ』である。普通の女の子が魔法の力でアイドルに変身する「魔法少女もの」だが、この作品が大好評だったため、以降も『魔法の妖精 ペルシャ』などぴえろによる魔法少女作品が制作され、いわゆる「ぴえろ魔法少女シリーズ」と呼ばれることに。

 本作品のヒットにより、ぴえろは実力派制作会社としての地位を確立したが、それだけにとどまらず自社オリジナル作品としてキャラクターなどの版権も取得。「制作会社」から総合的なビジネスを行う「製作会社」へと発展していったのである。

■『きまぐれオレンジ☆ロード』(1987年)

 集英社『週刊少年ジャンプ』に連載された、まつもと泉氏の漫画『きまぐれオレンジ☆ロード』が原作。アニメ化された本作は非常にスタイリッシュでクオリティが高く、この好評価でぴえろは大きなものを得た。それは『少年ジャンプ』からの信頼である。以降、ぴえろによるジャンプ連載作品のアニメ化は続き、その結果『幽☆遊☆白書』や『NARUTO-ナルト-』などの大ヒット作品を次々と生み出すこととなった。

 現在も『ブラッククローバー』などを手がけて関係は継続しており、その信頼の深さをうかがわせる。すべては『きまぐれオレンジ☆ロード』の成功から始まった流れだったのである。

 創立40周年を迎えた現在も、ぴえろは第一線でヒット作を生み出し続けている。さらに最高顧問の布川氏は自らの経験を次世代に伝えるため「NUNOANI塾」を開設し、後進の育成に力を注いでいる。40年を経てなお、ぴえろのアニメに対する情熱は燃え盛っており、今後も変わることはないだろう。

文=木谷誠