初詣前に知っておきたい「神様」の履歴書。七福神は海外からやって来たって本当?
公開日:2019/12/20
まもなく正月を迎える。年始に初詣に向かうという人も多いだろう。それぞれの神社にさまざまな神様がまつられているのはなんとなく知っているが、いったいどこでどんな願いを込めればよいのか分からない…という人もいるはず。そこで紹介したいのが『宇宙一やさしい! 日本の神様図鑑』(島田裕巳:監修/洋泉社)。本書を読めば、これまで以上に年始の初詣も有意義なものとなるはずだ!
■大勢いる神様にそれぞれの濃いエピソードが!
日本の神様についてよく目にするのが「八百万(やおよろず)の神」というキーワード。八百万とは「無数」を示す言葉だが、じつは、たくさんいる神様にもいくつかの種類があるそう。
ひとつ目は神話に登場する神様で、日本最古の歴史書『古事記』や奈良時代からある歴史書『日本書紀』にも多くの神々が描かれている。皇室の祖神で日本の総氏神とされる天照大御神(アマテラスオオミカミ)はそのひとりで、神々の頂点にいる最高神として知られている。
8つの頭部を持つ怪物・ヤマタノオロチを倒したとされる須佐之男命(スサノオノミコト)もそのひとりだが、すべての神々にはそれぞれの物語が存在する。
また、自然に由来する神々もその種類のひとつだ。日本人は古来より、山や川、樹木や巨石のほか、風や雷、雨などの自然現象にもそれぞれ神様がかかわっていると考えてきた。代表的なところでいえば、航海の守護神として各地で崇められている3人組の住吉三神(スミヨシサンジン)や、樹木の神・海の神・滝の神からなる熊野三神(クマノサンジン)もこちらにあてはまる。
■海外からやって来た神様もいれば、もともと「人」だった神様も
神話や自然など日本国内にルーツを持つ神々がいる一方で、海外から渡来して鎮座した神様たちもいる。代表的なのは七福神。商売繁盛や財運向上の神として知られる大黒天や、商運の神として知られる毘沙門天、金運をもたらすといわれる弁財天は、インドのヒンドゥー教の神様に由来する。長寿の神様である福禄寿や、福の神である布袋は中国から伝わったとされている。
さらに、人間ではあったが、人びとから神格化されたことで神様になった存在もいる。主に、歴史上で大きな功績を残した人物や、学問などで類まれなる才能を発揮した人物があてはまるが、東京・千代田区にある「将門の首塚」でも知られる平安時代の豪族・平将門はそのひとり。将門の場合は、非業の死を遂げて怨霊となったことが人びとのあいだで畏れられたことから、神として祀られるようになった。
■「天岩戸伝説」も有名な日本の総氏神・天照大御神
さて、ここまでさまざまな神々の分類を紹介してきたが、途中で取り上げた、日本の総氏神とされる「天照大御神」についてもう少し詳しく掘り下げてみよう。
伊勢神宮などに祀られた天照大御神は、太陽の女神として知られている。日本神話においては、黄泉の国から帰ったイザナギが穢(けがれ)を払うために海岸で禊をしたときに生まれたとされており、このとき誕生を喜んだイザナギは、自分の首にかけていた玉飾りを天照大御神に授け、天津神(アマツカミ)たちが暮らしていた地・高天原を治めるように命じたという逸話もある。
また、天照大御神を語るのに欠かせないのが、現在も宮崎県高千穂町の神社にその名を残す「天岩戸伝説」である。
高天原で乱暴な振る舞いの絶えなかった弟神・須佐之男命を恐れた天照大御神が、天岩戸に身を隠すと世界は暗闇に包まれ、さらには悪霊がのさばり災いが次々と地上に降りかかった。しかし、手をこまねいていた高天原の神々がどうにか策を練り、天照大御神を天岩戸から外へ連れ出すと、闇に閉ざされていたはずの世界に光が満ちて、災いも消えたという話だ。
やがて太陽神としても崇められるようになった天照大御神は、稲作などの農業にも欠かせない生命の源とされており、国家安寧や子孫繁栄を司る最高神となった。現在も、先ほど挙げた伊勢神宮をはじめ、東京都千代田区の東京大神宮や江東区の富岡八幡宮、愛知県名古屋市の熱田神宮など、日本各地に祀られている。
この『宇宙一やさしい! 日本の神様図鑑』で紹介されている神々のエピソードは、タイトルのとおり、とても分かりやすい一方で、どれも濃い内容に引き込まれる。まもなく迎える新年に備えて、自分の希望もいろいろ考えながら、「さて、どの神様へこの願いを託しにいこう」と思いを巡らせてみるのもまた一興だ。
文=カネコシュウヘイ