「風邪、それとも…ガン?」心配で病院に行くとき必要なのは保険証と何? 正しい病院のかかり方
公開日:2019/12/21
寒くなってくると、ただでさえ体調を崩してしまいがち。忙しさもつのって病気になってしまったとき、普段どおりに過ごしながら治ってしまえばよいですが、症状が重かったり、あるいは日に日に悪化したりしてしまうときには病院へ行くことも考えなければなりません。
でも、私たちのふだんの「病院への通い方」は正しいのでしょうか? 自分や家族の身体に関わる重要なことなので日頃から考えておきたい問題について、必要な知識をわかりやすく教えてくれるのが『医者が教える 正しい病院のかかり方』(山本健人/幻冬舎)です。
■「お薬手帳」は患者の病歴を医師が知る手がかりに
病院に向かうときに保険証や診察券は必須ですが、「お薬手帳」も必需品のひとつと述べる本書。お薬手帳は病院が処方せんを出す際に「普段飲んでいる薬と重複しないか、あるいは飲み合わせに問題がないか」などを知る手がかりとして活用されていますが、じつは、もう一つ大事な意味があるといいます。
それは、医師が「患者さんが普段どういう病気で通院しているのか」を把握するため。例えば、「これまでに何か病気をしたことがありますか?」と尋ねて、患者からは「特に何も…」と返ってきたとしても、お薬手帳をみて、高血圧のための降圧薬や糖尿病のための血糖値を下げる薬を飲んでいることが分かったケースもあるそう。手帳に記された内容から患者の病歴を把握するのに役立てているそうです。
「お薬手帳」を今持っていない人は、かかりつけ医や調剤薬局の薬剤師などに相談の上で作ってみるのもよさそう。もしない場合は、飲んでいる薬があればそれをそのまま病院へ持参するのも、医師にとってのヒントになる場合があるそうです。
■初診ならばまずクリニックへ
街中でみかける病院の中には、「クリニック(診療所・医院)」と書かれたものがあります。本書によると、病院とは「入院患者のためのベッド数が20床以上」ある医療機関で、クリニックは「入院ができない、あるいは、できてもベッド数が19床以下」と解説されています。具合が悪いときにどちらにかかるべきかはひとつの悩みどころでしょう。
初めて受診するならば、「病院よりクリニックの方がよい」と本書はすすめています。その理由は、はじめから大規模な病院へ行ってしまうと、「待ち時間が長くなる」「初診料が高くつく」「複数の科をハシゴして受診しなければならなくなる」などの可能性があるからです。
最終的な医師の判断や症状にもよりますが、まずはクリニックへ足を運び、「精密検査が必要」「入院が必要かもしれない」といった診断をしてもらってから、大きな病院への紹介状を出してもらい、改めて足を運ぶのが患者にとっても有利な方法だといいます。
■病気についてネットで検索するときに注意したいのは
今の時代、病院へ通う前に自分の症状や病気についてネット検索するのは当たり前。ただ、気をつけておきたいのはその調べ方です。本書は、3つのポイントに気を付けて検索するべきだと解説します。
1)GoogleやYahoo!などで検索して上位に出てきた情報が信頼できるとは限らない
2)出典・参考文献の記載があるかどうかを確認する
3)学会や公的機関からの情報を優先的に参考にする
2019年7月に日本医大を中心としたチームがネット上の医療系サイトを調査したところ、世界中の複数の専門家により作られた「診療ガイドライン」を根拠にしたものは全体の1割程度で、医学的根拠のないページは4割にも上ったそうです。ネットで調べる場合には、上記のポイントを参考に信頼できる情報を検索するように注意したいもの。ただし、何よりも「ググる前に病院へ」と肝に銘じておくのが大切だと本書は提案します。
この『医者が教える 正しい病院のかかり方』では、このような基本的な内容に加えて、大病であるがん治療の受け方や、いざというときの救急車の呼び方、また、風邪をひいたときにお風呂へ入るべきかどうかなど、広範囲にわたった医学知識について専門的な見識にもとづきながらも、やさしくわかりやすい文章で詳細に書かれています。
自分自身はもちろんのこと、身近な家族や大切な人の健康を守るためにも、知っておいて損はない豊富な知識を現役医師が教えてくれる1冊です。
文=青山悠