もう年末の大掃除をしなくていい!「ついでの掃除」という快適な生き方

暮らし

更新日:2019/12/27

『クロワッサン特別編集 料理・片づけ・掃除の時短習慣。』(マガジンハウス)

 いよいよ2019年もカウントダウンに入った。仕事にプライベートに大忙しの今だからこそ、心に重くのしかかるのが、年末の大掃除だ。実に面倒くさい。なんとか一度でラクに効率よく済ます方法はないだろうか?

 そんな人はぜひ『料理 片づけ 掃除の時短習慣。』(マガジンハウス)を読んで、その間違った考え方を悔い改めてほしい。本書が提案する超合理的なお掃除術は、「汚れる前に掃除する」こと。どうだ、まったくもって当たり前であり、目からウロコの提案ではないか。呆気にとられた人はもう少しだけ付き合ってほしい。これが劇的効果を生むのだ。

 まず本書を紹介しておこう。この本は、マガジンハウスが月2回刊行するライフスタイル情報誌『クロワッサン』の特別編集版。いわゆるムック本だ。掃除や片づけのスペシャリストを取材し、毎日の家事が「ラクに、楽しく、効率よく」回る優れワザを紹介する。したがって年末の大掃除の特集を組んでいるわけじゃなく、1年を通して家事全般が快適になるテクニックを解説している、ということも付け加えたい。

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 それでは本題だ。料理家の坂井より子さんは、本書の取材でこのように答えている。

「年末の大掃除はしないんですよ。最後にしたのはいつだったかしら」

 この時期にうらめしい話だ。ぜひ我が家の大掃除を手伝ってほしい。そんな坂井さんが実践する掃除テクニックは、「ついでの掃除」。料理中は調理台に台拭き、床に雑巾を置き、水や油がはねたらその都度拭き取る。洗面台などの水回りは、使ったついでにタオルでていねいに磨く。掃除後はタオルをポイっと洗濯機に入れて終わり。

「え? それだけ?」「そんな簡単でいいの?」と思った人もいるだろう。そう、その通りなのだ。本書で紹介される掃除テクニックの極意は、「汚れ未満で落とす」こと。だから料理のついでに汚れをさっと拭き取る。台所やお風呂場を使った後に、さっと簡単に済ませる。これを毎日繰り返せば、ずっとキレイなまま。掃除用強力洗剤を用意して頑固な汚れと闘う必要もない。「この世の真理」のような、単純明快で本質を突いたテクニックなのだ。

 本書に登場するスペシャリストたちは、みんな「ついでの掃除」を実践しているようだ。料理研究家の牛尾理恵さんは、「トイレを使った後、トイレットペーパーにふき取り洗剤をつけて、便器やペーパーホルダーを磨きます」と回答。使ったついでに掃除するので、汚れをためこまず手間いらずだとか。

 イラストレーターの柿崎こうこさんは、「起床後すぐに、フロアモップで床掃除をします。気兼ねなく使えるので、薄手の安価な掃除シートを愛用しています。部屋の埃は気づいたらすぐ、はたき掃除をかけます」と回答。

 拍子抜けする掃除テクニックだが、実に合理的。たとえば掃除に苦労する台所コンロも、初めて使ったときはピカピカだった。油が飛んでも雑巾で拭き取って、それを毎日繰り返せば、今でもピカピカだったはず。たった一瞬で、長くても数分で終わる掃除を怠ったがために、私たちは定期的に大掃除で苦しまなければならない。

「ついでの掃除」の効果を裏付けるように、本書に掲載されるスペシャリストの部屋はどれもキレイだ。チリひとつない。

 つまるところ本書は、「掃除のテクニックの紹介」というより、「掃除を楽に続ける生き方の紹介」に近い。この生き方を身につければ、多少の汚れのうちにやっつけてしまうので、大掃除の機会にもそうそう出会わないだろう。いつも家中がピカピカだ。実に快適な人生である。

 年末の大掃除は、日本の風物詩だ。無事に過ごせた一年を神様に感謝し、新しい年を縁起よく迎えるために、家中の汚れを払っていく。

 ここであえて意地悪く考えてみると、「定期的に掃除せず汚れてしまったから、年末の大掃除が必要ではないのか」とも感じる。本書のスペシャリストたちは、おそらく大掃除をしなくとも新年を迎えられるはずだ。もし大掃除をしても、私たちと違って早々に終わるだろう。

 まだ大晦日まで時間が残されている。今から「ついでの掃除」を心がければ、部屋の汚れがちょっとずつ落ちていくだろう。そして年の瀬を迎える頃には、誰かが大掃除に駆られる姿を尻目に、朝から堂々と今年の自分に乾杯できるに違いない。素晴らしい年末であり、ずっと掃除に困らない最高の年明けになる。

文=いのうえゆきひろ