邪悪で残忍な殺意がまさか感染!? ドラマで話題「リカ」シリーズのおぞましい最新作が解禁
公開日:2019/12/29
「私と一緒にいるの幸せでしょ?」――2019年の秋ドラマ「リカ」は、この謳い文句と高岡早紀さんの怪演で作中の登場人物だけでなく、実際に多くの視聴者を震撼させた。原作は五十嵐貴久氏が手がけた人気ホラーサスペンス小説「リカ」シリーズ(幻冬舎)。同シリーズにはドラマ化された『リカ』と『リハーサル』以外にも『リターン』や『リバース』といった作品が刊行されており、どの巻にもリカという“美しい怪物”の恐ろしさが惜しみなく描かれている。
そして、シリーズ最新作となる『リメンバー』(幻冬舎)も期待を裏切らない。いや、むしろ予想を超える結末に読者は「あぁ、これがフィクションでよかった…」と安堵するだろう。
■“あの女”は身近にいる――純粋な殺意は伝染するのか?
すべての恐怖は、ある警察官が巡回中に川に向かって“何か”を捨てている女を発見したことから始まる。はじめはゴミの不法投棄かと思われたが、袋の中身はなんと人間のバラバラ死体。被害者となった滝本実は頭部、両腕、両足、胴体の6つのパーツに解体されていた。
その場で現行犯逮捕されたのはフリーライターの宮内静江。静江は実が勤務する出版社に時々顔を出していたが特に親しいわけでもなく、実には婚約者もいた。ところが、取り調べに応じた静江は、実とは数年前から交際していたと話し、譲らない。その姿は狂気じみており、まるで“人間ではない何か”のようだった。
その後、警察の調べにより、静江がフリーライターとして「雨宮リカ事件」を徹底的に調査していたことが発覚する。「雨宮リカ事件」とはリカシリーズ第1作目である『リカ』に記されている内容だ。
約20年前、雨宮リカはインターネット上の出会い系サイトで知り合った本間隆雄にストーキング行為を行った挙句、拉致。その際、本間の五感を異常かつ残忍な方法で奪った。リカはその後、刑事によって射殺されたが確実に死亡したかどうかは確認されていない…。
もしかしたら、静江は「雨宮リカ事件」を調べるうちにリカの心が乗り移り、“心理感染”して事件を起こしてしまったのではないか? そう考えた警察は帝光大学付属病院で精神科医を務める立原教授に協力を要請する。この5年間に、同様の手口による4件の未解決事件も起きていたため、心理感染と事件の因果関係を証明することで事件解決と新たな事件の発生を阻止しようと目論んだのだ。
帝光大学には大学やその関連施設で働いている者に対して修学の機会を与えるべく、希望する教授の研究に参加できるレクチャーシップ(通称LS)と呼ばれる制度がある。立原教授は自身のLSに入っている4人の研究生たちにも協力を仰ぎ、静江の精神鑑定を行うことにした。
だが、いざ精神鑑定を始めてみると、予期せぬ事態が発生する。周囲ではリカの影を感じさせる不気味な事件が続々と起きるようになるのだが――。
本作には禍々しいシーンが続くが、ラスト数十ページで物語の景色は一変する。恐怖はさらに加速し、シリーズ全体の世界観はこう繋がっていたのか…と驚愕するだろう。
「リカ」シリーズ最新作は、純粋な悪意のもつ怖さをまざまざと感じさせる1冊だ。“あの女”は、もしかしたらあなたの身近にもいるかもしれない。
なお、五十嵐氏は本作のあとがきで、今後もリカシリーズを執筆していくと宣言。背筋が凍るような予告に、「続刊が出るまでに、リカという怪物との対峙のしかたを考えなければ…」あなたもきっとそう決意するはずだ。
文=古川諭香