【仮病】なんで仕事に戻れないの? もう元気になってるじゃん!/『マンガでわかるうつ病のリアル㉖』

マンガ

公開日:2020/1/13

重度のうつ病に5年以上苦しむも「メンヘラマッスル作家」として奇跡の復活を遂げた錦山まるが、あなたの知らないうつ病のリアルを教えます!

うつ病には“波”がある。

※うつ病患者の今の体調が、回復傾向なのか悪化傾向なのか“波”の途中なのかを判断するのは、あくまで医者です。あなたの周りのうつ病患者の体調の変化を見て“波”だとは決めつけないでください。


うつ病は日に日に回復するわけじゃない。もう治りかけていると思ったら、急にドン底まで悪化する!

 うつ病の体調には波があるようです。治療を始めたからといって、ちゃんと休んでいるからといって、毎日右肩上がりで回復していくかといったら、そう簡単にはいきません。

 うつ病が治った状態(“完全寛解”といいます)が100で、今の状態を30だとしたら、30 → 38 → 45 → 57…という感じに毎日回復していくなら患者さんも周りの人も安心かもしれません。

 ですが、「高熱が朝には下がっていたのに夕方にはまたぶり返してしまった」「ブツブツが出たので塗り薬を塗ったらかゆみがおさまったのに、何日かしたらまたかゆくなってしまった」なんて経験は誰にでもあるように、うつ病も病気ですから波があるのは実は当たり前です。


波があることを患者自身も知らなかったり、目をそらしてしまうケースもある。

 かつて筆者も日に日に回復し「この薬は合ってるのかな? このまま順調にいけるかな?」と期待していたら、次の日に全く身動きが取れないくらいに体調を崩し、期待がキレイに裏切られたぶん精神的大ダメージを受ける…ということが何度もありました。

 逆に、お昼ごろまでずっと体調が悪かったので、夜の予定をキャンセルしたのですが、夕方には「最近で一番調子がいいのでは!?」というくらい体調がよくなり、キャンセルしたことへの罪悪感でいっぱいになった経験も。

 筆者は体調のいい日が続くと、もうつらい治療の日々に戻りたくない思いから「僕はこのまま順調に回復していくんだ」と、思い込もうとする傾向がありました。『うつ病には波がある』と知識として知ってはいたものの、どこかでその現実を見ようとせず、波による体調の悪さに気づいていながらも無視してムリをしてしまい、何度も悪化させました。

 周りは『うつ病には波がある』とは知らず、ムリヤリ元気そうにふるまう筆者に「そろそろ仕事に戻れるんじゃない?」と言葉をかけることもありました。そしてそれがまた、筆者がムリをすることに拍車をかける…という負のループが何度も起きました。


病気やケガが完治していない人がムリをしていたら、止めるよな。うつ病も同じように考えてほしい。

「何でそんなことしちゃうの?」と思うかもしれませんが、ちょっと思い出してみてください。インフルエンザで何日も寝込んでいたら体調がよくなったので、うっすら不安を感じつつも「明日には治るだろ」と考え、ちょっとだけ動き回る。本当はケガが治りきっていないのに、部活の試合に出たいがために「もう大丈夫です」と言って痛みを隠して練習に参加する。このような経験はあなたにも一度はあるのではないでしょうか? また、そうしたくなる気持ちは痛いほど分かるのではないでしょうか?

『うつ病に波がある』と知っていれば、インフルエンザだけど動き回る人に「ぶり返すかもだからあんまり動くな」などと言えるように、ケガだけど練習に参加する人に「また傷めるといけないからいきなり飛ばすなよ」などと言えるように、うつ病の人に「波があるんだから気をつけて」と声をかけられるかもしれません。

 最近体調がよさそうなうつ病の人を見て「もう仕事に戻れるんじゃない?」「もう大丈夫そうだね」と声をかけたくなるお気持ちは分かります。あるいは、体調がよさそうだったのに急に寝込んだりされれば「仕事に戻りたくないだけなんじゃ?」「ただ甘えてるだけなんじゃ?」と疑ってしまうのもムリはありません。まして波があることを知らなければなおさらでしょう。

 ですから、どうか『うつ病には波がある』ことを覚えておいてください。うつ病になったあなたの大切な人の、悪化を防ぐことにつながるかもしれません。

錦山まる=2009年にプロ漫画家デビュー。月刊誌で連載を持ち単行本を出すも2013年に重度のうつ病と診断され、5年近く自宅療養の日々を送る。病気が回復するにつれ、同じようにうつ病に苦しむ方を1人でも楽にしたいと著書出版やSNSによる啓蒙活動に取り組む。著書に『「うつ」は甘え?ググれカス。』『きっと元気になれるから』他
Twitter:@nishikiyamamaru
錦山まる公認bot:@marurunzmemo