距離が近すぎる“なまらめんこい”道産子ギャルに、ドキドキが止まらない!
公開日:2020/1/11
高校生活でこんな“なまらめんこい”ギャルと出会いたかった。甘酸っぱい青春を送りたかった。『道産子ギャルはなまらめんこい 1』(伊科田海/集英社)を読んでため息がもれる。悲しい青春を送ってしまった自分の情けなさから、そんな嘆きが止まらない。
主人公の四季翼は、家庭の事情で東京から北海道北見市に引っ越してきた高校生1年生だ。冬の時期の転校なので、ちょっとワケありっぽい。さらに、北見市が北海道の中でも比較的寒い場所で、かつ広大な面積を誇る地域だと知らず、初登場からブルブル震えて真っ白な街並みに絶望しているあたり、なかなか頼りなく親近感を覚える。冴えない男子代表みたいなキャラだ。うん、なかなか親近感を覚える(2回目)。
そんな翼と同じ高校で同じクラスの冬木美波は、気温マイナス8度でも鼻を真っ赤にして生足をさらけだす道産子ギャル。この冬木がとても可愛らしいのだ。翼と出会った初登場シーンでは、くしゃみをして鼻水をズズーっと垂らす一幕がある。ヒロインとしてありえない醜態だが、トロ~ンとした冬木のありのままの笑顔に、なぜかキュンと心を射止められてしまう。翼がティッシュを手渡すと、「えっあんがと! 持ってんの偉っウケる」と言いながらズビーっと鼻をかむので、ギャルの可愛らしさを見せつけられた気がした。
初登場から奔放な冬木に惑わされる翼だったが、ともに学校生活を送るようになると、さらに悶々としてしまう。冬の北海道は寒いので、教室ではブランケットが必須である。北海道の常識を知らない翼は授業に集中できずガタガタ震えていた。それを心配した冬木は、天使のような笑顔で翼にブランケットを手渡す。ふむ、それだけで冴えない男子は勘違いしてしまうぞ。放課後、翼は冬木に感謝しながらブランケットを返した。すると冬木はブランケットをくんくん嗅ぎ始める。自分のせいで臭くなったのか心配する翼に対して、冬木はこう言った。
てかこれの匂い――…うちと翼のが混ざっちゃったね
思春期の男子なら爆発しそうな問題発言だ。もれなく翼も顔を真っ赤にして吹き出している。そのあとブランケットのお礼として、翼と冬木は駅前までぴったりくっついて、腕を組んで歩くことに。生足をさらけだして帰るのが寒いから、という理由なのだろうが、これではどっちのお礼なのか分からない。
本作を読んでいると、どうにも冬木の距離の近さにキュンキュンしてドキドキが止まらない。ギャルならではの親密さと、北海道の寒さが生む赤ら顔が相まって、甘酸っぱい青春を今になって体験している感覚になる。
このあとの話では、翼が冬木の家に上がってドキドキして、北見の冬のお祭りに出かけてデートを楽しむ。ここで冬木の意外にピュアな一面を知るので、ますます冬木が可愛らしく見えてくる。そして頼りないけど優しい翼のキャラに親近感を覚えて(3回目)、「それだけ一緒にいるなら、もう付き合えよ!」と応援したくなる。しかし翼はドキドキしているくせに、冬木に対して恋愛感情はない、と自分に言い聞かせている節があるので、どうにもくっつく気配がない。これまた甘酸っぱい青春である。あ~…もったいない。
高校生活でこんな“なまらめんこい”ギャルと出会いたかった。まるでギャルの魅力を再確認するような作品だ。
文=いのうえゆきひろ