【涙腺崩壊】『スラムダンク』花道が最後にダンクではなくジャンプシュート…そのワケは?

マンガ

更新日:2020/5/7

 まず、そもそも1週間で2万本のシュートを打って、ジャンプシュートをものにすることは可能なのか? 2万本、徹底的に練習すれば、きれいなフォームが身に付き、一定のクオリティーで身に付けることはできるようです。が、問題は“1週間に2万本”という恐るべき数字。

 1日平均で3000本近いシュートを打つことになるわけですが、バスケ経験者であればこれがどれほど激烈なものか、おわかりになるでしょう。1日500本でも相当キツイそうですから、本当に一日中、ずっとシュートを打ち続けるような状態を1週間続けたということでしょうね。常人ならば当然のように腕が上がらなくなりそうですが、そこは驚異的な身体能力を備えた花道ならでは…! さらに言うなら1週間、初心者の花道のシュート練習に根気よく付き合ってくれた安西監督、桜木軍団の面々、赤木晴子の献身的な協力がなければ、きっと成し遂げられなかったはず…!

 その2万本シュート特訓の成果が、山王戦の最後の最後で発揮されたわけです。

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 ……けれど、ぶっちゃけ最後はダンクで決めて欲しかった、というファンもいることでしょう。だって本作のタイトルは『スラムダンク』ですからね。確かに冷静に考えると、『スラムダンク』というタイトルのマンガで、主人公が最後に決めたのがダンクシュートではなくジャンプシュートだったということに、違和感を覚えても不思議ではありません。

 ここからはあくまで推察ですが、作者の井上雄彦先生のこだわりで、ダンクではなくジャンプシュートにしたのではないでしょうか。

 井上先生がバスケットボールというスポーツを、リアルに描写することに強いこだわりを持っていることは有名な話。それはゲーム中のプレイの描写に限ったことではなく、そのプレイに至るまでの過程なども大事にしているほどです。

 花道は作中で、今回の2万本のジャンプシュートだけでなく、リバウンドやレイアップシュートの練習風景が描かれたこともありますが、実はダンクを本格的に練習しているシーンが描かれたことはありません。というか、高い運動神経を誇る花道は、ダンクに関してはあまり練習せずとも、いきなりできていましたよね。

 そのため井上先生は、派手で絵的に映えるダンクシュートよりも、過酷な特訓で会得したジャンプシュートを花道のラストシュートにすることで、バスケットボールの真髄を伝えようとしていたのかも…と考えられなくもないんです。

 タイトルは『スラムダンク』でも、主人公が最後に見せたのは才能がものをいうダンクシュートではなく、地道な練習で身に付けられるジャンプシュートだった――ここに井上先生のバスケ愛が凝縮されているように感じませんか?

文=citrus 昌谷大介