社内会議や報告会で失敗する理由はコレ! 話しベタでもプレゼン上手になる「3つの型」
公開日:2020/1/15
社内会議や報告会、商談などで必須のプレゼン能力。相手に伝えたいことを分かりやすく聞きやすく心を射止めるように、ペラペラと話しているつもりが、現実は相手に「何が言いたいの?」と言われてヘコむ始末。スティーブ・ジョブズを目指しているわけではないが、せめてプレゼンを無事に乗り切れる能力を身につけたい。話しベタの私でもプレゼンで上手に振る舞いたい。
『話しベタさんでも伝わるプレゼン』(清水久三子/翔泳社)は、そんな願いを叶えるための1冊だ。「緊張を和らげたい」「理解してもらいたい」「要領よくこなしたい」など、プレゼン能力向上を願う人にとって“あるある”な悩みを6つの項目に分けて、図解やイラストで分かりやすく解説する。
さらに本書では項目ごとに、具体的な解決策をチェックリストにまとめている。したがって「緊張で声が震えて仕方がないんです」と悩む人は、チェックリストを確認したのち、いきなり44ページをズドンと開いて読めるのでありがたい。プレゼン能力の向上を図る書籍だけあって、読者の悩みを細分化して解決策を提案する「読者ファースト」の印象を受ける。
本稿では本書の内容の一部を引用するので、プレゼンに自信がない人はぜひ参考にしてほしい。
■最も緊張する魔の3分間を乗り切る方法
プレゼンが苦手な理由の1つに、やはり緊張との闘いがあるのではないか。本書では「“私の緊張トリセツ”を作って対策を打とう」「ハミングと痛みで声の震えを抑えよう」などの提案をしている。
なかでも目を引くのが、「最も緊張する魔の3分間を乗り切る方法」だ。緊張はプレゼン開始後の3分間が最も高まると言われており、頭が真っ白になって、顔が赤くなって、汗が噴き出て手足が震えるといった「緊張症状」がピークに達するという。ところが「魔の3分間」さえ乗り切ってしまえば、自分の中に落ち着きが生まれて、最後までそれを持続できるという。つまりこの3分間を制すれば、プレゼンの成功にぐっと近づく。
魔の3分間を落ち着いて乗り切るための方法は、様々なシーンで反復練習を行うこと。朝起きてすぐにベッドで、鏡の前に立ってニッコリ笑って、通勤途中に小声で、同僚の前で、カラオケボックスで、というように様々な状況で自分の中に定着させよう。気をそらすものを見聞きしても、すらすらセリフが口から出るよう練習することで、プレゼン本番でも緊張せずに話せるようになる。特にカラオケボックスでの練習は、講師や営業マンといったプレゼンのプロも行っているのでオススメだ。
またプレゼンが上手な人ほど、リハーサルを繰り返していることも見逃せない。自分のプレゼンの様子を動画で撮影して、声の大きさ、話し方、気になるしぐさ、説明の分かりやすさなどをチェックするそうだ。
■これさえ覚えておけばOK! プレゼンで使える3つの型
プレゼンで緊張しない方法を身につけても、肝心の内容がサッパリでは意味がない。プレゼンは自分のために発表するのではなく、相手のために発表するものだからだ。しかし相手に分かりやすい説明をすることほど難しいものはない。
そこで本書では、相手に伝わる3つの型を紹介している。これさえ覚えておけば、プレゼン資料の大筋を簡単に作成でき、プレゼン相手から「何が言いたいの?」と言われてしまう心配もなくなる。
【説明するときに使える型「空・雨・傘」】
これは事象の説明や報告に向いている型だ。空は「事実」、雨は「解釈」、傘は「結論」を表している。「空を見ると雨雲が多いので、傘を持ったほうがよいでしょう」という流れで因果関係を説明する。ビジネスにおいてはこんな感じだ。
空「今年の市場成長率は15%です」
雨「成長はやや鈍くなってきたと言えます」
傘「よってそろそろ次の主力製品を打ち出すべきです」
【結論をすぐ言いたいときに使える型「SDS法」】
SDSとは、最初に要約(Summary)を伝え、次に詳細に説明(Details)をした後、最後にまとめ(Summary)を述べる構成だ。結論を早く伝えたいときに向いている。「で、結論はなに?」と言いがちな相手にプレゼンするときにぶつけてやろう。
S(要約)「当社の商品開発方針に大きな影響を与える事実が調査により判明しました」
D(説明)「具体的には、75%の消費者がこの商品の魅力として、想定したものとは異なり、○○機能の方がより重要だと回答しています」
S(まとめ)「つまり、今後の開発においては今より多機能にするよりも○○機能に限定した方がよいということです」
【ストーリーを語るときの型「PREP法」】
PREPとは、まず結論(Point)を述べて、次に理由(Reason)を説明し、具体的な例(Example)を出した後、最後にまとめ(Point)を述べる構成だ。詳細に例を語る「ストーリー重視」の説明に向いている。
P(結論)「この商品で社員の作業時間を増やすことができます」
R(理由)「それは3つの自動化機能があるからです」
E(例)「1つ目の機能は自動チェックです。2つ目は……」
P(まとめ)「この3つの機能で月20時間の作業時間が削減できます」
■忘れてはいけない「聞き手分析」と4つの人物タイプ
どれだけ反復練習をこなし、分かりやすい資料を作成しても、プレゼンが失敗に終わることがある。その理由は、「聞き手分析」を行えていないからかもしれない。本書によると、主に聞き手は4つのタイプに分かれるそうだ。
①売上、収益性、スピードに関心がある「結果重視タイプ」
②新しさ、面白さ、創造性に関心がある「革新性重視タイプ」
③計画性、実現可能性、権威に関心がある「確実性重視タイプ」
④人間関係。組織間の関係に関心がある「関係性重視タイプ」
例えば同じ営業活動の報告でも聞き手のタイプが異なると、成功するプレゼン内容が変わってくる。売上情報などを期待する結果重視タイプなのか、新しい取り組みを期待する革新性重視タイプなのか、計画通りに進んでいるのか気にする確実性重視タイプなのか、他部門と合意を取って問題なく進めているか気にする関係性重視タイプなのか…。ぶっちゃけ面倒だ。しかし相手のタイプを見極めた上でプレゼン準備をしないと失敗に終わってしまう。
だからこそプレゼンを準備するときは、聞き手のタイプが分かる人物情報を集めよう。「部門の仕事の効率化を進めたい」「上層部からの新しい集客方法が求められている」など、相手の状況や関心を探るのだ。さらに部門全体の仕事、同僚や上司、関連部門の状況まで把握してもいいかもしれない。
スティーブ・ジョブズのようなプレゼンの天才ではなくても、努力を重ねればプレゼン上手な人になれる。本書は苦手意識を持つ人のためにプレゼンテクニックを教えてくれるので、読んでいるとそんな自信が不思議とわいてくる。もし人前で話す機会が巡ってきて、どうしようと頭を抱えている人は、本書の提案する解決策を参考にしてみてはいかがだろう。
文=いのうえゆきひろ