女性は死ぬまでにいくら稼げる!? 大卒女性の平均生涯収入は…/『2億円と専業主婦』②

マネー

公開日:2020/2/5

はたらく妻の生涯賃金は2億円!

共働きでリッチに暮らすか? “下級国民”予備軍になるか?
100年生きてしまう時代、あなたはどちらを選びますか。

半日で34万ビュー、コメント1000件の炎上本『専業主婦は2億円損をする』がバージョンアップして登場!

『2億円と専業主婦』(橘玲/マガジンハウス)

専業主婦は(ほんとうは)3億円損をする

 これからの話の前提として、日本という国で働くことで一生のあいだにどれほどの収入が得られるかを確認しておきましょう。データは、厚生労働省所管の調査機関、独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)から刊行された『ユースフル労働統計2018』で、「賃金構造基本統計調査」にもとづいた、日本人の生涯賃金についてもっとも信頼性の高いデータです。これは、「女がそんなに稼げるわけがない」という「炎上」への回答にもなります。

◉学歴別の男女の生涯賃金はいくらになる?

 ここでの生涯賃金は、「学校を卒業してただちに就職し、その後、60歳で退職するまでフルタイムの正社員を続けた場合」の総額で、退職金は含まれていません。その金額を示したのが下の図です。

 生涯賃金は学歴別に算出されていて、「大学・大学院卒」の場合、男性は2億6980万円、女性は2億1590万円です。専業主婦になる(働かない)という選択はこの賃金を「捨てる」ことですから、「専業主婦は2億円損をする」のです。

 生涯賃金は学歴によって異なりますが、女性の場合、「高専・短大卒」で1億7630万円、「高校卒」で1億4830万円、「中学卒」で1億3970万円で、すべての専業主婦が「1億円以上損をする」ことになります。「学歴が低いから働いても仕方ない」などということはありません。

 生涯賃金は働いている会社の規模によっても異なります。それを示したのが左ページの図で、参考のために男性正社員も加えてあります。

 従業員数99人以下を「小企業」、999人以下を「中企業」、1000人以上を「大企業」とするならば、大企業で働く「大学・大学院卒」の女性の生涯賃金は2億4840万円で、全女性の平均より3250万円多くなります。同様に、大企業の「高専・短大卒」は2億840万円(プラス3210万円)、「高校卒」は1億7800万円(プラス2970万円)、「中学卒」は1億5520万円(プラス1550万円)が生涯賃金です。

 ここからわかるように、「世界第3位の経済大国」である日本で働くことは、「ゆたかさ」を実現するもっとも確実でシンプルな方法なのです。

◉1億円減らしたのにまだ怒られるのか

 大企業で働く大卒女性の生涯賃金は約2億5000万円ですが、ここには退職金が含まれていません。最近では定年後も再雇用で65歳まで働くことがふつうになりましたが、それも計算に入っていません。これも加えると、専業主婦を選択することで失う富は3億円ちかくになるでしょう。

『ユースフル労働統計2018』では、男性の正社員にかぎって、退職金と再雇用を含めた「生涯総賃金」を試算しています。それによると、大卒男性は65歳まで(定年後は再雇用で)働いた場合3億2920万円、大企業なら3億7950万円の賃金を生涯に得ることになります。こうしたデータから、これまで私は「サラリーマンの生涯賃金は3~4億円」として人生設計を論じてきました。

『専業主婦は2億円損をする』というタイトルを示されたとき、じつはすくなからぬ抵抗がありました。「男なら3億円稼げるけど、女はどんなに頑張ってもせいぜい2億円」といっているように思われるのではないかと危惧したのです。そこで、「これからは日本も男女平等の社会になるのだから、『専業主婦は3億円損をする』でいいじゃないですか」と提案したのですが、編集者の広瀬さんから「それはいくらなんでも多すぎる」と反対され、しぶしぶ「2億円」で妥協しました。

 それにもかかわらず、本が出たあとに「女がそんなに稼げるわけがない」との批判が殺到したことにはほんとうに驚きました。「1億円減らしたのにまだ怒られるのか」というのが、そのときの正直な気持ちでした。

 これは、日本のようなゆたかな国で働くことが生み出す富について、正しく理解しているひとがいかに少ないかを示しています。誤解のないようにいっておくと、専業主婦を選択した女性の無知を批判しているわけではありません。妻を専業主婦にしている夫も、「2億円の損」に無自覚であることは同じなのですから。

 仕事を辞めようと考えている女性や、子どもができたら妻に仕事を辞めてもらいたいと思っている男性は、その選択によってどれほどのゆたかさを放棄することになるのか、納得のいくまで二人で話し合うべきでしょう。

<第3回に続く>