“元祖カラー撮り鉄”が超貴重なカラーフィルムで撮影した60年前の東京

文芸・カルチャー

更新日:2020/2/6

『続・秘蔵カラー写真で味わう 60年前の東京・日本』(J・ウォーリー・ヒギンズ:著/光文社)

 60年前の日本の風景。写真や映像は多く残っているものの、日本ではカラーフィルムが普及していなかったため、モノクロが一般的だ。当時を知らない世代には、60年前の日本をカラーで想像するのはなかなか難しいだろう。モノクロ時代の日本をカラーで見ることができたら、新しい発見があるかもしれない。

『続・秘蔵カラー写真で味わう 60年前の東京・日本』(J・ウォーリー・ヒギンズ:著/光文社)は、タイトルにある通り60年前の日本をカラー写真で振り返れる一冊だ。本書には、日本在住のアメリカ人・ヒギンズ氏が、60年前にカラーフィルムで日本を旅しながら撮影した544枚もの写真が収められている。

 ヒギンズ氏は、1956年に初来日して日本旅行を楽しんだ。それから2年後の58年に日本に移住。日本を愛する親日家の彼は、とくに日本の鉄道に魅了されたそう。そのため、秘蔵写真は鉄道を写したものが多く、彼には「元祖カラー撮り鉄」の異名もあるとか。2018年に発行された前作『秘蔵カラー写真で味わう 60年前の東京・日本』から増量&厳選を重ね、パワーアップした続編では、ほぼすべての都道府県を網羅している。本稿では本書に掲載されている、60年前の日本の風景を一部紹介しよう。

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港区の二之橋付近で撮影された1枚。現在は高層ビルが港区に林立しているが、かつては高い建物はなく、東京タワーがよく見える。(1959年5月13日)

日本屈指の繁華街・歌舞伎町にほど近い新宿区靖国通りを撮影。「都電12系統両国駅行き」が走る。(1960年12月31日)

かなりのどかな新宿区新宿南口。(1960年1月11日)

大阪・梅田の駅前。右手にあるのが阪急ビルだ。現在の活況と比べると少々物寂しい。(1956年10月)

 どれも状態がよく、鮮明な写真ばかり。ヒギンズ氏が全国各地を渡り歩いたのも驚きだが、現在まで写真を大切に保管してくれていた事実にも感謝しなければならないだろう。

「はじめに」には、ヒギンズ氏の独特な旅行術にも触れている。当時の彼は英語しか話せない状態で、たったひとり日本の辺境の地にも足を運んだ。

 まず、列車の終点駅で下車をしてすぐに構内に貼られた地図をじっくり見る。地図の中からその土地の観光スポットを読み解き、目星をつけてからそこへ向かったという。ちょっとしたミステリーツアー気分だ。また、日本の旅館に泊まると夕食がセットになっていることに驚いた、というエピソードも。

 私たちにとっては慣れ親しんだ文化にも、外国人ならではの視点で新しい“気づき”を与えてくれた。

 鉄道本として楽しむもよし、同書を手に60年前と現在の街の違いをたしかめるもよし。この一冊で、さまざまな角度から日本を堪能できるはずだ。

文=丸井カナコ
(c)J・ウォーリー・ヒギンズ