「東京で持ち家なんてムリ」という人も読む価値アリ! お得なエリア、失敗しない物件選びのヒントを公開
公開日:2020/1/24
30代半ばになると、同世代の友人から「家を買った」なんていう声がよく聞こえてくる。社会人になってから十数年。人生もそろそろ折り返し地点かと思いを巡らせる中で、賃貸住宅での生活とおサラバして、腰を据えられる持ち家に住みたいという欲求が生まれてくる人たちも少なくないはずだ。
現に筆者もそんな欲がわいてきたというひとりだが、せっかく住むならばやはり東京都内住まいを目指したいという気持ちがある。そこで手に取った書籍が『東京で家を買うなら』(後藤一仁/自由国民社)。実際に家が買えるか買えないかはさておき、本書を読んでみてその背中を押されたので、ぜひ一部ご紹介したい。
■東京の不動産価値は「西高東低」「南高北低」の傾向
住宅選びには検討すべき項目がいくつもあるが、その大きな要素は、“どこ”に家を買うかという問題だ。東京とひとくくりにいっても、エリアによって千差万別であると本書は教えてくれる。
エリアを選ぶ際にポイントとしておさえておきたいのは、「買ったほうが得なエリア」と「借りておいた方が得なエリア」の違いがあること。本書によれば、東京で住宅を購入する場合の不動産価格は「西高東低」「南高北低」だという。一方、賃料については「大手町・丸の内等のオフィス街や霞が関などの官公庁街などの中心部を中心に同心円状に設定されている」傾向にあるという。
こういった違いがあるので、著者が調べたケースでいえば、豊島区にある交通の便がよい山手線のA駅と世田谷区にある都心から離れながらも人気のある東急田園都市線のB駅で比較したところ、駅からの距離やグレードが似た分譲マンションならば賃料は約23万円でほぼ同じ。ところがいざ買うとなると、A駅では約5000万円なのに対して、B駅では約7000万円もするケースがあったそうだ。
■人気エリアは「港区」「渋谷区」「目黒区」「世田谷区」「文京区」の5つ
広域エリアに区分した際にそれぞれ特徴があると分かったところで、気になるのはもっと局所的にどこで買うべきかというポイントだろう。場合によっては、買った物件を人へ貸すという選択肢も考慮した上での資産価値や、地震や水害など災害対策を含めた安全性、さらに利便性や住環境をみたときに、本書がすすめるのは「港区」「渋谷区」「目黒区」「世田谷区」「文京区」の5つのエリアだ。
港区は、2030年に東京の人口がピークを迎えて減少に転じてもなお増え続けると予測されている地域で、麻布や青山といった人気エリアを抱えていることから、物件が売り出されることが少なく、資産価値が下がりづらい。また、その西側に隣接する渋谷区も、大名屋敷跡など高級住宅地が続くため、同様の理由で資産価値が下がりづらいとされている。
また、自由が丘のある目黒区は都心に近く交通の利便性がよいのが魅力で、成城などの高級住宅地が目立つ世田谷区は緑豊かな環境が特徴。ほぼ全域が山手線の内側でありつつ23区中で比較的治安がよいと評価される文京区も、大学の付属校が立ち並ぶ茗荷谷をはじめとして人気が高い。
■物件の購入には事前の資金計画が欠かせない
理想的な場所を選んだところで、いよいよ現実的な問題として目の前に立ちはだかるのは“お金”だ。例えば、住宅ローンでのマンション購入を検討するならば、購入前にしっかりと資金計画を立てておくことが求められる。
マンションの総取得費用は「物件価格+諸費用」。物件価格は当然ながら本体自体の金額だが、注意しておきたいのが諸費用の部分。これはおおむね住宅ローンを利用した場合、新築では物件価格の3~7%、中古では物件価格の6~9%かかる費用で「原則的に現金で用意する必要」があると本書は解説する。
諸費用についても住宅ローンで融資を受けられる場合があるが、本書がこれをおすすめしないのは、最初から物件価格(資産価値)を負債が上回るオーバーローンの状態でスタートする可能性があるからだ。そのため、物件価格の一部を頭金として用意するのに加えて、諸費用も自己資金で支払える状態を確認してから購入するのが理想形だと説く。
一昔前のように「家を買って一人前」といわれるような時代ではなくなった。だが、自分や家族が生活していくうえで、やはりどこかで憧れる「持ち家」という存在。本書はその選び方から買い方まで、東京という魅力的かつ奥深い都市をテーマに“自分の城”を築くためのステップを指南してくれる心強い1冊である。読んでみればきっと人生の新たな目標が生まれるはずだ。
文=カネコシュウヘイ