「あんなデブと結婚するなんて…」イタいマウンティング女!/『ざんねんな万葉集』④

文芸・カルチャー

公開日:2020/1/28

日本人は1,300年前からダメダメで美しかった…!
新元号「令和」の出典となったことであらためて注目を集めた万葉集。その収録歌数は、日本最大の4,516首!
中にはイマイチな歌もあって、カスな奴らが身勝手なイタい歌を詠んでいたりするのです。そんな万葉集から特にざんねんな51首を選抜。愛すべきダメ人間たちの歌に、思わずクスッと笑ってしまうはず!

『ざんねんな万葉集』(岡本梨奈:著、雪路凹子:イラスト/飛鳥新社)

娘はなぜデブと結婚したのか わからん

三八二一 児部女王(こべのおおきみ)

原文

美麗物
何所不飽矣
坂門等之
角乃布久礼尓
四具比相尓計六

和歌

うまし物
いづくも飽(あ)かじを
坂門(さかと)らが
角(つの)のふくれに
しぐひあひにけむ

現代訳

美味しいものは どなた様もいやではないのに (どうして)坂門さん家の娘子(おとめ)は 角氏のおデブさんと くっついてヤっちゃったんだろう

解説

 坂門氏の娘は、地位の高い家柄のイケメンの求婚に従わず、なんと卑しい身分のブサイク(原文訳です、お許しを……)と男女の関係になりました。この歌は、そのことを児部女王がからかった歌です。

 娘は家柄や見た目よりも内面を重視したのでしょうし、体格だって個人の好みの問題です。娘にとっては大きなお世話なのですが、当時の感覚としては、地位の高い人の求婚を断るなんて(しかも、イケメン!)ざんねんすぎることだったのです。

 現代でも、「なんであんな人と!?」と周りが言うことがありますが、それと同じですね。本人には大きなお世話です。児部女王にとっては、娘がざんねんなのでしょうけど、ある意味、こんな歌を詠んでいる児部女王のほうがざんねんに思われます。ただのマウンティング女か、彼氏がいない女のひがみ、ですね。

用語

いづく:不定称の人称代名詞。皮肉な気持ちが込められている。

ふくれ:肥満体型の人をからかっていう言葉。

しぐふ:未詳。「付き合う」「くっつく」などの野卑な表現と考えられている。

:完了の助動詞「ぬ」の連用形。

けむ:過去原因推量の助動詞。

<第5回に続く>