中学入試にフレンチのマナー!? 実はおもしろすぎる超難関中学の入試問題
公開日:2020/2/4
今年度の中学受験シーズンがおおむね終わった。結果に満足した人も、リベンジを決意した人もいるだろう。いずれの結果にしても、受験する子どもたち、ならびに受験生を支えた保護者の方々、お疲れ様でした。
さて、中学受験というと、難問奇問ばかりが注目されがちだが、特に私学の問題には学校ごとのカラーが色濃く出ていて、そういった意味でもおもしろい。『超難関中学のおもしろすぎる入試問題(平凡社新書)』(松本亘正/平凡社)には、超難関校のユニークな問題が凝縮されている。
例えば、東京大学に38年連続全国1位の合格者を輩出している首都圏屈指の進学校である開成学園の開成中学校は、「東京問題」と呼ばれる、東京の都市や文化に関する問題を出題している。
入り口に大きなライオンの像が置かれているデパートがありました。
傍線部について、そのデパートとして正しいものを一つ選び、記号で答えなさい。
ア 高島屋
イ 三越
ウ 東急
エ 松屋
オ 松坂屋
答えはイの三越。三越のライオン像は1914年に誕生しており、この年に勃発した第一次世界大戦による大戦景気で、成金が登場した。ライオン像は三越の支配人がイギリスで注文したのだが、この背景にはイギリスが1902年に日英同盟を結んだ友好国であることが浮かんでくる。開成の東京問題からは、受験生が東京について深い知識を身につけていることへの期待が透けて見える。
東の開成に対して西の雄である灘中学校では、外来語の問題が頻出される。例えば、カッコに入れるのに最も適当な「ス」で終わる外来語を記号選択する、次のような問題が出題されている。
1 自然の豊かな公園は、都会の人々の心に安らぎをあたえる( )だといえるだろう。
2 いくら高い服でも、選ぶ人の( )が悪いと、あまりいいものには見えない。
3 平日昼間と比べると、( )街の休日は、ほとんど人通りがない。
答えは、1「オアシス」、2「センス」、3「オフィス」となる。本書は、灘の外来語問題から、「日常で目にしたり耳にしたりする外来語をスルーするのではなく、意味を確認し、使いこなせる生徒を求めている」ことを読み取っている。
物議を醸した問題もある。慶應義塾中等部は独自の教養的な問題が多く出題されるが、次の問題は、「普通の家庭ではなくて所得が高い家を選別している」などの声が上がった。
フランス料理が出されるときの決められた順序で正しいものを選びなさい。
1 前菜 → 肉料理 → スープ → 魚料理 → デザート
2 前菜 → スープ → 魚料理 → 肉料理 → デザート
3 スープ → 前菜 → 肉料理 → 魚料理 → デザート
答えは2。この問題からは、フレンチのコースの順番くらいは知っておいてほしいという学校からのメッセージだけでなく、消化しやすく味が薄い魚料理が先に出されるなど論理的な理由があることにも考えが及んでほしいという願いも見えてきそうだ。
このように、中学受験問題にはカラーがにじんでいておもしろいのだが、それだけではなく社会の動きや世相などが反映されやすいことも興味深い。例えば、これからの社会で無視できないであろう「IoT」「AI」などの問題が、中学入試で登場し始めている。
来年度以降、超難関校に挑戦しようと考えているご家庭、中学受験に興味があるご家庭におすすめの1冊だ。
文=ルートつつみ