「片づけ本」のマニアになってない!? 家がキレイになるために必要なたった一つのこと/『どんなずぼらさんでも「これなら絶対! 」片づく技術 』③

暮らし

公開日:2020/3/2

今までの「片づけ本」では片づかなかった人、 家事が苦手で「どこから手をつけていいのか」途方に暮れている人…必見! 世界中の「ずぼらさん」を感動させたベストセラーが、ついに邦訳。「お皿を洗う」――たったそれだけの小さな習慣が人生を変え、 家事・片づけが絶望的に苦手なわたしを救った――。ずぼらあるあるが、ちょっとしたコツでスッキリ解消!

『どんなずぼらさんでも「これなら絶対! 」片づく技術 「たった1つの習慣」で人生が変わる』(ダナ・K・ホワイト:著、大浦千鶴子:訳/マガジンハウス)

「絶対に起こりえないこと」って、たとえば?

 倹約生活についてのブログを書いている友人が、ある日、おもしろい情報を教えてくれました。使い終わったトイレットペーパーの紙芯を、ネットのフリマサイトで売っている人がいるというのです。

「え、嘘でしょ?」と思ってちゃんと自分でチェックしましたが、本当のことでした。

 わたしが見つけたオークションは、50個から100個のトイレットペーパーの「きれいな」芯に、買い手が5ドル(約500円)から15ドル(約1500円)の値をつけて落札。

 トイレットペーパーを生涯、1日も欠かさず使うわたしみたいな人間(ほかのみんなもそうであってほしい!)にとっては、丸儲(もう)けのチャンスかもしれない! 使った芯を全部取っておいたら、あとは箱詰めして高額で買ってくれた人に送るだけ。これはなにがなんでもやらなきゃ!(……要注意の言葉が3つとも、入っていることに注目!)

 さて、この後の展開を、ずぼらなわたしの「現実バージョン」で見てみましょう。

 まず、手ごろでオシャレな箱をバスルームの戸棚のなかに置きます。

「これを置いとけば、誰でもトイレットペーパーを使い切ったときに、芯をこの箱に放り込めるよね!」

 どこかのおバカさんがわたしのゴミに払ってくれるお金のことを思うと、ついニンマリです。

 3週間後、わたしは戸棚を開けます。

「こんなところに誰がこんな箱を置いたんだか」とうんざりしながら、箱に手を伸ばします。と、不意に自分が考えた「ボロ儲けリサイクル計画」を思い出します。ああ、そうだった、忘れてたわ。

 家族全員を呼び集め、こう宣言します。「みんな、いいわね。トイレットペーパーを使い終わったら、かならず芯をこの箱に入れるのよ。後で売るんだからね!」

 全員、ぽかんとした顔。

 心の広いわがオットは、とりあえず「ママの言ったこと聞こえただろ。トイレットペーパーの芯は捨てるなよ」。

 子どもたちが行ってしまうと、オットはわたしに説明を求めます。ひととおり説明を聞くと、オットはあきれたのか、無言で首を振りながら去って行きました。

 1カ月後、わたしはその箱にペーパーの芯がポツンと2個だけ入っているのを発見し、あえなく降参するのでした。

 もう1つ、別の展開もあるでしょう。

 次の夏には、トイレットペーパーの芯を売ったお金で家族旅行に出かけようと、家族じゅうが盛り上がりました。全員で一丸となって行動を起こしたので、どんどん芯は集まって、とうとういくつもの箱からあふれ出るまでになります。

 そのうち誰かが戸棚を開けたとたん、芯が転がり落ちてくるしまつ。

 それでもめげずに集めまくりました。そしてとうとう売るときがやってきたのです。

 でも、ここで予想外の展開が。

 そう、カメラと箱が必要だということに気づいていなかったのです。

 カメラは集めた芯を〝映えるように〟撮って、サイトにアップするために。

 箱は芯を発送するとき、つぶれないようにきれいに収まるように。

 そのうえ、わたしはフリマサイトのログイン・パスワードを思い出せない――。

 もちろん、こういうことは時間と労力をかければ解決できる問題です。

 だけど一方で、家族の芯集めは続き、わたしはますますその数に圧倒され、ついには、どこからどう手をつけたらいいのか途方にくれてしまうほどになり、戸棚じたいも使えなくなってしまいます。

 これは極端なシナリオのように見えますが、わが家ではまさにこのとおりのことが起きかねません。わかっている以上、わたしは現実的な道を選ぶことにします。

 それは、世の中にはこういうことで多少のお金を稼ぐ人もいるけれど、わたしにとっては得するよりも困るほうがずっと多くなるんだ、と自覚すること。

 ずぼらなわたしは、これ以上浮き足立って、家のなかが大変になることに手を出してはいけないのです。

そうじに「正しい方法」はない

 トイレットペーパーの芯を売ったり、食器を何カ月もかけて自然乾燥させたりするのは、わたしの「極端な考え方」のほんの1例。じつは、もっと根本的に変えなければならない考え方がありました。

 家事にまつわることで、あきらめなければならなかった夢。それは、「家をそうじするための正しい方法を見つけ出さなければならない」と信じ切っていたことでした。

 わたしのかかえる問題をすべて解決する答えが、きっとどこかにある! 完璧な方法を突き止めることができたら、わが家はいつも見違えるようにきれいになるのだ、と。

 ここで、みなさんに覚えておいてもらいたいこと。

 この本を最初から最後まで5回くり返して読んでも、家が本を開く前よりきれいになることはありません。自分の手でそうじしなければ始まらないのです。

 みなさんの中にも、「お片づけ本」のマニアがいらっしゃいませんか?

 とかく家事が苦手なわたしは、プロが書いた洗濯の段取りを本で学び、キッチンのお片づけの方法を調べまくり、ときには近所の人にどれくらいの頻度で床にモップをかけるか尋ねまわりました。

 しかし、うまくいきそうな方法を見つけても、しばらくすると、その方法ではうまくいかなくなってしまうか、やらなくなってしまいます。

 家をそうじする道具や方法にはこだわっていますから、「悪いのは自分ではなく、方法が悪いのだ」と考え、その結果、その方法を断念することになります。

 次から次に新しい方法を見つけては捨て、そのたびに、失敗を積み重ねてきました。やがて、希望は少しずつしぼんでいくのです。

「もう、どこをどう探してもいい方法なんか見つからない」と、激しい自己嫌悪に落ち込みます。これが、わたしの今までの「負のずぼらスパイラル」。

 でも、問題は「やり方」を見つけることではありません。

 あくまでも目的は「自分の家をそうじすること」なのです。

<第4回に続く>