薬、枕営業、カノバレに逮捕…あのスキャンダルや噂の裏話が味わえる!? “経歴が黒すぎる”人たちのエグい業界話コミック
公開日:2020/2/18
久しぶりに芸能人の不倫報道が大きな話題になったけれど、私自身は他人の生き方に口を出せるほど清廉潔白ではないし、余人に代えがたい才能を持った人には、型破りな生き方をしていてもらいたいとも思うから、あまり喰いつく気にならない。しかし、そういう考え方は昭和脳のようで、今やテレビ番組の視聴者はスキャンダルに厳しくなり、芸能人の私生活にもコンプライアンスが求められるようになった。
それでいて、芸能人が芸で魅せるよりも裏話を語るトーク番組が増えているのは不思議な感じがする。ところが、『経歴が黒すぎてテレビには出られない人たちの話をマンガにしてみた』(カツピロ/竹書房)を読んでみたら、表に出せる話が不倫くらいなんだなと妙に納得してしまった。
暴露話は週刊誌などでも取り上げられているが、本書の強みはなんといっても漫画だということ。当事者の名前はイニシャルで伏せられているものの、似顔絵や口調などから想像ができてしまう。加えて作者は業界裏話の漫画を何作も手掛けているからか、ビミョーに似せないように加減しているため、そのギリギリのラインがギャグ漫画としても成立していて面白い。
元・俳優Oとその愛人に「いけないお薬」を売っていた夫婦の妻への取材では、超有名デュオのAが他の売人から買う現場に立ち会ったことがあるそうで、一切変装とかしていなかったため思わず夫婦で「せめてマスクぐらいして来いよ!!」とツッコんだそうな。どうも最初の頃は変装していたらしいのに、正体を隠すのに無頓着になり、最後には顔丸出しで買いに来るようになったのだとか。そうなってくると、第三者に見られたり脅されたりして警察が情報を掴むところとなる。ちなみに俳優Oと愛人が逮捕されたさいに、この夫婦が検挙されなかったのは、売ったのが「塩だったから」とのこと。売人が本物を売るとは限らない、というのが実に闇深い。
芸能界といえば、まことしやかに囁かれている女性芸能人の「枕営業」はあるのだろうか。実は私も一時期末端に身を置いていたので知っているが、あると云えばある。ただし、本書でも描かれているように、映画の主演に大抜擢とかゴールデンで司会になんてことは「ありません」というのが実情。せいぜいが、ドラマや映画のエキストラとか、バラエティー番組の観客席に座らせてもらえる程度だ。紹介する方にしたって自身の信用に関わるため、下手に便宜を図るなんてことはしないからで、「その先に進めるのは結局才能があるかないかなんですね」と、元・芸能マネージャーが取材に答えている。
一方、男性芸能人が愛人を囲うという話も読者には興味のあるところだろう。本書では紅白に出場したミュージシャンと愛人契約をした元・ホステス嬢の話があるのだが、それとは別に超有名歌手の「元・専属SM女王様」による話のほうが強烈過ぎて霞んでしまう。SM店にやってきたその歌手は女王様を見たとたん、なんとその場で「うれしょん」してしまったのだとか。最初は話のネタの冷やかしかと思っていたものの、「こいつは本物だ」と感心した女王様は、やがて専属で女王様をやるように。すると、歌手の家で奥さんが在宅しているにもかかわらず羞恥プレイをしたり、車に放り込んで山奥に全裸のまま置き去りにしたりといったエピソードが語られていて、取材した作者もそのスゴさに「カツピロ感激!!」の様子。
芸能界のみならず政界にも影響力を及ぼしている某宗教団体についても描かれていて、昔は信者が親族などの教団外の葬儀に参加しようものなら、式場まで他の信者が乗り込んで邪魔をしたらしい。それが最近では信者の数が年々減って縛りが緩くなり、結婚式を教団の教えにならった地味な形で挙げてから、教会で自分たち用の映える結婚式をするという。作者は、芸能人の結婚報告でよくあるカジュアルな服装での写真は、教団関係者だからなのではと推察していた。
所属タレントに恫喝的なことを平気で言ってしまう会社の話では、「お前らテープ回してないやろな!!」の裏話を期待しつつ読み進めたら、残念なことに「この先描けません」と真っ黒なコマだった。先の宗教の話といい、この辺の引き際の判断力は、長年の間に培われた作者の冴えか。
文=清水銀嶺